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 庁舎の地下から高速サブウェイに乗る。途中、落ち着いた公園や、大型の商業施設のあるステーションを通り過ぎ、その名もP5という名のステーションで降りた。ここまでの時間はおよそ十五分。ステーションからP5 へ直結する通路は人影が少なく、しんとしている。P5 の入り口で個人情報を入力した。

 扉が開く。

 独創性のない衛生部の巡視船が四、五隻見える。その傍で船のチェックをしていたメカニックが私に気が付き、警備員らしき男を呼んだ。

「認証は済ませていますね?」

 警備員が聞いた。

「はい。Y&Kネットの営業部員です」

「それで御用は?」

「ロリー・ラスキングさんにお会いしたいと思って。待たせていただけますか?」

「失礼ですが、ロリー・ラスキングとはどのようなご関係ですか?」

「仕事で来たわけじゃないのです。私はラスキングさんの潜水艇を見せてもらおうと思って来たのですわ」

「潜水艇を?」

「ええ」

「客が続くなあ」

 警備員は独り言を言った。

「あの、私以外にも誰かラスキングさんに会いたいと?」

「ええ」

「今日ですか?」

「いいえ、昨日ですよ。普段なら、仕事でもないのに誰かがここまでロリーさんに会いに来るのは珍しいのです。だって、ロリーさんに会いたいのなら、わざわざここに来るより、酒場かUドームでしょう」

「Uドーム?」

「知らないんですか? そう言えば、その人たちも知らなかったな」

「どんな人たちです?」

「がっしりした男二人ですよ」

「まあ……」

 あいつらだ。ここで爺さんのことを聞いたのだろう。

「お名前は?」

「セシル・フレミングですわ」

「営業部員とおっしゃいましたね? 何の営業です?」

 入力と認証を済ませてあるのだ。それを見れば一目瞭然だろうと思ったが、これも彼の仕事のうちだ。

「治安部の電脳のメンテナンスと新しいシステムの提案をすることになっているんです」

「それじゃ、Uドームを知らなくても不思議じゃない」

 警備員は頷いた。

「Uドームには単車のレース用の競技場があるんですよ。ロリーさんはここで働いていますが、かつては優秀な乗り手だったし、今は優秀な技術者なんです。若い単車好きの連中が彼を慕って集まるから、ロリーさんは彼らのために単車を修理したり、改造したり、レースの仕方まで相談に乗っているんです。実際、どっちが本業かわからない」

 警備員は笑った。


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