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「じゃ、飲みなおすとするか。と言っても一人じゃつまらん。一杯おごらせてくれ」

 ハルタン治安部が興味を示したタンベレの報告書……その情報元ロリー・ラスキングはにっこり笑った。

 もちろん断る理由はない。

「ありがとうございます」

 私は好奇心を隠して答えた。

「何がいいかな?」

 爺さんは電光掲示板に表示されているアルコールのメニューをざっと見た。

「ラスキングさんと同じものがいいです」

「いや、これは安いし、度が強くて女性が飲むようなものじゃないが。いいのか?」

 おもしろがる爺さんに私は頷いた。

「じゃあ、ちょっと買ってくる」

 爺さんは席を立つとカウンターに向かい、店員と二言三言かわした。ちらりと二人がこちらを見る。店内は、この手の店では当然だが、照明を落としている。ダウンライトの光が酒や会話を楽しむ客の姿をそっと照らしていた。ハルタンの庁舎に近いせいか、客の中には仕事が終わって息抜きにやってくる職員が目立つ。

 爺さんがグラスを持って戻ってきた。冷たいグラスには水滴がついており、かすかに黄色がかった酒が薄暗い店の明かりを受けて美しく輝いていた。

「さて、気を付けて飲んでくれよ。きつい酒だから」

「ラスキングさんは何杯目ですか?」

「三杯目だ。これで終わり。明日も仕事だからな」

「潜水艇で見回り?」

「そうだ。〈俺の〉潜水艇で」

「自家用の潜水艇とは、素敵ですね。それで、ラスキングさんはハルタン治安部所属ですか、それとも衛生部になるのでしょうか?」

「衛生部だ。俺の仕事は船で核の周りを巡回して異常や不法投棄されたものを見つけ、知らせることさ。ほぼ毎日外に出ているよ」

「そうでしたか」

「ついこの間、おもしろいものを見つけたんだぜ?」

 爺さんは得意そうに言った。これを聞きたかったのだが、焦りは禁物だ。

「何ですか?」

 酒を味わいながら、私はゆっくりと聞いた。癖のある後味、だが、しつこくはない。さっきの薄甘いカクテル、リノよりよほどいい。

「何だと思う?」

 爺さんはいたずらっぽく笑った。

「さあ、さっぱり」

「天使さ」

「まさか」

 思わず声を上げてしまった。


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