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 買った品々を仮住まいに届けてもらう手配をし、しばらくハルタンの中央通りを散策して時間をつぶした。それからリノに向かう。庁舎から2ブロック離れた公園のすぐそばに、祝賀会の会場リノはあった。私をつけていた男はとうにいなくなっている。怪しい人物ではないと判断されたのなら有難い。他にも私を警戒するような動きはなかった。私の潜入は、とりあえずうまく行ったのだろうか?

 リノの入り口のドアは厚いガラス製だが、縁は赤い木製でカジュアルな感じがした。ドアのところに人を待っている風な男が一人。隙がない。が、敵意はない。男の脇を通り過ぎる一瞬、男が囁いた。

「総領事の指示で。タンベレの話がお持ちのイヤホンで聞けます」

「2,30分?」

「はい。J35型です」

 私がボルドにつけた盗聴器と同じ使い捨ての汎用型だ。

「ありがとう」

 私は男の脇を通って化粧室に入り、ポケットの中のイヤホンを耳に入れた。

「キース、今度はニエドだそうだな?」

 アロ・タンベレの声だ。化粧室を出てフロアーを見渡すと、中央の大きなテーブルでは客たちが立ち上がり、タンベレは一人の青年と話をしているところだった。あのキースという青年が例の出世街道を順調に歩んでいる若者だろう。

「ああ、ニエドに来たら声をかけてくれ。お前の故郷だろう?」

 上機嫌なキースが答えた。

「そうだが……しばらく戻る気はないんだ」

「まあ、そう言うなよ」

「わかった。機会があったら声をかけるよ」

 タンベレは送別会の主役キースと別れ、別の小さなテーブルに向かった。キースはまだ客と話している。年齢は様々だ。かかわりのあった治安部の職員だろう。どうやら送別会はこれでお開きになったようだ。それぞれが小さなテーブルに移るか、店を出るかしようとしている。小さなテーブルは主に壁際にあったが、壁際は照明が落とされ、客の様子は注意しないとよく見えなかった。

「どなたかお探しですか?」

 店員の男が声をかけてきた。

「ええ……何か飲み物をいただきながら待ちますわ」

「では、こちらへ」

 店員は私をカウンターに案内した。タンベレが移動したテーブルがうまく視界に入った。

「ご注文は、何がよろしいですか?」

「カクテル、リノ」

 カウンターの上のメニューに目を止め、店の名を取ったカクテルを指差す。

「承知しました」

 店員が去った。


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