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「おい、どうだった……?」

「あっ……」

 振り返った二人に、またもや麻酔弾。動力室に向かった。動力室の前に立つ男たちが振り返る。

「誰だ?」

 一斉に構える。

 手に持った銃で麻酔弾を放つ。まずは二人。

「こいつ」

 私が一人と知って、凄んでみたらしいが取り合う気はない。

「どけ、友人を返してもらいに来ただけだ」

「何だと?」

 私に銃口を向けた三人に、私は短剣を抜いた。腑に落ちない顔をしながらも、三人はためらわずに引き金を引いた。彼らは確信している。私が倒れることを。まあ、確かに、銃に短剣とは勝ち目がなさそうだが、これは妹のアイサの持つ剣と双子の剣、ヴァンの作った特製の剣だ。刃こぼれすることのない剣であり、私の思念に反応し、相手の攻撃に対してシールドを張ることもできる。引き金を引いた三人は一瞬怪訝な表情を浮かべた。剣の作ったシールドが弾丸を弾いたのだ。だが、そこまで。目を見開いた三人は、私の麻酔弾を受けて、せっかく見開いた目を閉じることになった。邪魔がなくなり、私は短剣でロックを焼き切り、中に入った。

「ラビスミーナ」

 マリアが声を上げた。

「アロは?」

「あそこよ」

 アロ・タンベレはうずくまっていたが、ゆっくりとその顔を上げた。その顔に驚きの表情が浮かぶ。

「ラビスミーナ・ファマシュ……」

「そう。でも、セシル・フレミングだったと言った方がいいかな?」

「ナオミから聞いて、あなたの映像を調べましたが……信じられません。セシルと違いすぎる。セシルはゼフィロウの治安部員の一人かもしれないとは思いましたが、まさか治安部長自らだったとは……」

「ああ、メヌエットのことは、ゼフィロウの一大事だからな」

「ピート様もハイダー治安部長も間違っています」

 アロはふらつきながら立ち上がった。

「さっきまでタンベレさんは違う場所にいたの。きっと、ひどい目にあったのよ」

 心配そうに訴えたマリアにアロはきっぱりと言った。

「大丈夫です」

「そうか、後で体の方は見てもらうといい。さあ、さっさとここを出よう」

 向きを変えた私に、アロはあたりを見回して言った。

「でも、あの、おひとりのように見えますが?」

「そうだ」

「でも、三人でどうやってここから逃げるのです? 治安部の腕利きが揃っています」

「武器が少々、外ではゼフィロウの総領事が実力行使できるよう控えている」

 自信を持って答えた私に、マリアがこっそり聞いた。

「でも、ラビスミーナ、外には治安部の職員がいるだけじゃないわ。何かあったらすぐに応援が来るんじゃないの?」

「応援の方にはしばらく知らせが届かないはずだ。オメガのおかげで」

「まあ」

「オメガ?」

「リンの電脳だ」

「電脳……」

 アロが眉をしかめた時だった。

「待っていたぞ、ラビスミーナ・ファマシュ」

「パイアール議長……」

 パイアールは、ハルタン治安部員たちを引き連れていた。彼らの銃が一斉に私に向けられる。

「パイアール議長、こんなところであなたにお会いするとは」

「そうかな? あなたには、私がここにいることはわかっていたと思うが」

「アロ、マリアを頼む」

 アロが頷くのを見て、私は二人を背にパイアールに向き合った。私の剣のシールドは万全、私たちが撃ち抜かれることはない。ここで余裕を見せるパイアールに今のうちに聞いておくことにした。

「近づける者が限られたメヌエット。無残に殺された認証技術の専門家ルイーズ・ベネットと画像解析の専門家エドゥアルド・トゥビン。ルイーズ・ベネットが姿を消したと知った時、ジャンは慌てたという。恐らく、ジャンはあなたに頼まれて二人を紹介したのではないか?」

「ああ、それか。ふふ、その通りだ。クルヴィッツも、ルイーズも、優秀な人材だったが、惜しいことをしたな。そうそう、ジャンもだった」

 パイアールは落ち着いた顔に揶揄の表情を浮かべて答えた。これが、人々の信頼を集めた、あの温厚な男か。

「ラビスミーナ、あなたがセシルと偽って自らハルタン治安部に近づいたと知った時は驚いたよ。もう少し利口だと思ったのだがね」

「好奇心に勝てなかったもので。おかげでこんなところであなたに会うことになったわけだ」

「その好奇心が命取りだ。なかなかおもしろいな。治安部長と最高会議議長。ゼフィロウの住民はどちらの言い分を信じるか……そうだ、もっともあなたは語れなくなるのだった、残念だがね。タンベレ、マリアを連れて来い」

 マリアの傍らにいたアロがマリアの腕を掴んだ。


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