6曲目 〝歌姫〟と草原
「はぁ~、まぁこれ位で良いかな? とりあえず」
現在時刻、12:45。お昼頃である。
雨音は、ダンボールから生活に必須な──、様々な物を出して配置していたのだ。
双子は朝日が昇りきってから帰したし、他にする事と云えば──、
「あの女の子……、うどんでも届けに行こうかな!」
丁度、もう一度挨拶をしたいとも思っていたし、渡しに行くなら早い方が良いだろうし。
そう思い、雨音は家を出た。
とりあえず、野菜屋の店主に聞いて草原に来たものの、本当にここに居るのだろうか?「今の時間帯なら…、多分草原に居るんじゃないかな?」と言った彼の顔を思い出し、疑うのは辞めようと思ったのだ。
その矢先に、何かが聞こえてきた。
『冷たい風が 吹き荒む
聞こえない声に 惑わされて
「どうしよう」なんて 自問自答を 繰り返したまま
何処まで進んでいくの?
聞こえない 聞こえない 誰も居ない場所で
独りきり 独りきり ずっと辛いの
誰も来ない誰も居ない その中で唯待ち焦がれている
来るかも分からない人を待つのは 愚かな事だなんて
ずっとずっと 分かってた
哀しみの中 泣き叫びながら 唯 その時を──唯 その時を』
悲壮感溢れる声が、いや、歌が聞こえてくる。
そこには、清廉さ漂う白いワンピースを身に纏った一人の少女が居た──。