5.5曲目 〝歌姫〟と従兄妹ふたり
はぁ~、またやっちゃった。どうして、こうなるんだろう、本当に。
「名前位、さっさと教えれば良かった」
今は、野菜屋のお兄さんの所から家に帰っている途中である。
「いくらだって言うチャンス位ならあったのにな~。謝りに行きたい。でも、ちゃんと話し掛けられるかどうか怪しいし」
そうだ、あの二人に頼もう。
従兄妹の居そうな場所を考える。2秒も必要なかったが。
家路から外れ、方向転換すると急いで駆け出した。
「あぁ、良かった。やっぱりここに居たんだ」
草原に辿り着いた。
止まって、少し息を整える。
目線の先には茶プラキツネの茶色と金色の丁度中間位の髪色の可愛い、可愛い従兄妹が居る。
そして、こっそりと近付き………、
「うわぁっ!? だれだ! だれなんだ!?」
思い切り、背後から抱き上げた。
「可愛いなぁ、もう!ほら、ホルスもおいで」
そう言い、しゃがみこむと、ホルスも抱き寄せた。
「なんだ、おねーちゃんか。びっくりしたぞー!」
「うん。ごめんねー? ついつい驚かせたくなっちゃって」
少し、舌を出す。
「わーい、おねえさんだぁ! さびしかったんですからね! さいきんおみかけしないなー、とおもっていたんですよ。どうかしていたんですか?」
「そうなの、最近宿題が忙しくて、滅多に外出出来なくて………。ごめんねー、淋しくさせちゃってたみたいで。元気にしてた?」
「うん、おれもホルスもげんきだったぞ!」
「はいー! わたしもカルトもげんきでしたよ!」
少しの雑談を楽しんだ後。
「伝言を頼みたいんだけど、良いかな?」
「もちろんですー! おねえさんのたのみならりょうかいなのですぅ!」
「もちのろんだぞー! おねーちゃんのたのみならどんなことでも!」
鼻息を荒くしている可愛い双子を見て、微苦笑しながらもこう切り出したのだった。
「あまち あまねさんの所に言って伝えてきて欲しいんだ。
こう、一言。──ごめんなさい。──って」