5曲目 〝歌姫〟と伝言
僕は首を傾げた。
何故、なのだろうか。彼女に何かをされた覚えは無いのだけれど。とりあえず話を聞く事にした。
「そのお姉さんは僕に何を謝りたかったのか、知ってるかな?」
思いの外、話は簡単だった。成程、つまりは、
「つまりは、お姉さんはろくに名乗れず、そのままだった非礼を詫びたい、と思って君達に頼んだのかな?」
そう確認してみると、
「おねえさんのごいこうはそういうかんじ、だとおもうのです!」
「ごいこー、はわかんねーけど、ホルスがいうならそーだとおもうぞ!」
そう答えた。
「因みに、君達の名前はホルスちゃんとカルト君って言うのかな?」
そう、質問してみると、
「アマチ、ホルスにいろめ、つかうな!」
うー!と唸る様にして威嚇された。
「色目!?色目なんて使ってないよ。って言うか、どこでそんな言葉覚えたの?」
「わたしのあいしょう?がホルスで、おにいちゃんのあいしょうがカルトですよぅー」
「ホルス、こんなやつとは、はなしちゃダメだ! こーゆーやつをおーかみ、うるふ。ってゆーんだよ!」
「だめだよ、カルト! アマネさんのことわるくいったらおこるよ!」
「なんでだよー! おれはホルスのことしんぱいしてるんだぞ!」
言いながら、カルトはホルスを揺さぶり続けている。
「おれは、おーれーは! あい、あいゆえにいってるんだぞー!」
言い終わったと思ったらテンションが上がったのか、突然キスの雨、と言うのだろうか、それを降らせ始めた。
「んもー、ってゆーか、ほんっとにホルスはかわいーなーもー!」
「ちょっ、ちょっと、もうっ、はずかしいってばー! こんなひとまえで~、も、もうっ、だからっ、やめてってば~!」
本当に嫌がっているのか、そうではないのかよく分からないが、心なしか嬉しそうだ。イチャイチャしている。これは、絶対にイチャついている。
だが、とりあえずお茶でも出して、伝言の為にわざわざ朝早くに家に訪ねてきた彼等を労おうと思う。
そう、朝日が昇りきる前に。