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3曲目 〝歌姫〟と過去の記憶

 結局、雨音は青葱とキャベツを買って、うっどん~、うっどん~!と、“歌姫”でさえも知らない歌を歌いながら帰って行っていた。彼女が知らないと云う事は、きっと自作だったのだろう。此方では、話し合いになっている様だった。


「あの少年が何者なのかなんて気にする様な事じゃないよ」

「自分が何を言っているか、分かってるの?野菜屋のお兄さんだって、余所者と無警戒に話したりするのは軽率過ぎるって分かってるでしょ!」

 そう怒っているのは、あの黒髪の少女で、

「だからってあんな子供には何も力は無い筈だ。それに、彼が俺達に危害を加えるとは思えないぞ」

 そんな風に、どうにか彼女の気持ちを落ち着かせようとしているのは野菜屋の店主だった。


 だが、次の一言で自分の方が平静を失ってしまうとはこれっぽっちも思っていなかった。


「こんな平穏な暮らしが出来ている理由、覚えていないの?」



 脳裏に、あの忌まわしい惨劇が蘇った。

 血濡れた地獄の様な光景を思い出し、悚然とした。

 音が、聞こえない。救いの手が訪れない。

 再び、過去に戻った様な錯覚をして息が辛くなってくる。

 頭が、痺れる。感覚が、静かに狂っていく。

「大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫…」

 大丈夫と云うコトバが頭の中を回っている。



 ──単語は言葉となり、言葉は意味を成す。──

 ──意味を成した言葉に、音階が加わる。──


『貴方は大丈夫 もう大丈夫

  君にはもう 恐いものなんて無い

  哀しい時も 辛い時も いつも いつも

  君の傍に 私が 居るから』


 気が付くと、自分の頬をその白く小さめの両手で包み込もうと黒髪の優しい少女が座り込んでいた。隣に座っていた筈だ。

 話し合いの途中で、正面に回って居たのだろうか?いや、彼女が自分の為に歌っていた事を思い出す。きっと、その間に移動したのだろう。

「ごめんなさい。言い過ぎたわ、そんなに…傷付けるつもりは無かったの。許して…?」

 いつの間にか、自分が震えていた事を感じた。彼女が自分を心配している。

「あ、あぁ。大丈夫だ。俺は、俺はもう、あんな事は絶対に、絶対に………」

 それを、彼女は見守っていた。

予定よりかなり遅れてしまったので自省中です………。

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