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クリスマスプレゼント

 

「クリスマス、何か欲しいものある?」


 夜ご飯の後、一緒にテレビを見ていたはるくんに尋ねた。

 今日は12月15日。クリスマスまでは、あと約1週間だ。

 ちらりとこちらを見たはるくんが口を開く。


「別に何でもいいけど」

「何でもじゃわかんないよ」

「だって今特に欲しいものないし。こないだ時計もらったし」


 はるくんの誕生日は11月30日だ。

 そこで前から欲しいと言っていた時計をあげてしまったから、今は正直お金もあまりない。

 それでも、クリスマスといえばプレゼント。

 はるくんの誕生日が来る前からずっと、クリスマスのことは考えていたのだけど、これまで付き合った3年であらかたのものはあげてしまい、正直ネタが尽きていた。


「しいて言うなら?」

「じゃあ、ヒートテックインナー」

「安すぎるよ」

「安く済むのは喜ぶべきことだろ」

「でも」

「じゃあ車」

「それは高すぎ」


 どだい無理なことを言ってくる。そもそも本気でないのはわかっているけど。


「なら、ものはいらないから、すっげーうまい料理作ってよ。ザ・クリスマスみたいなの。ワイン添えて」

「あたしが料理苦手なの知ってるよね?」

「そこを頑張るから、プレゼントと同じ価値が出るんじゃないの?」

「う……」

「じゃあ、すっげー色っぽい下着着て、頭にリボン巻いて、『プレゼントはあ・た・し♡ 』とか言ってみたら?」

「それが嬉しいの?」

「たぶん、失笑」


 想像したのか、はるくんはすでに失笑している。


「まじめに考えてよ」

「何で俺が考えなきゃいけないわけ」


 確かに、その通りなんだけど。

 はるくんがテーブルに頬杖をつく。


「別に、無理に買ってくれる必要ないけど。今回は見送って、俺が欲しいものできた時とか、花から見ていいものが見つかった時に買ってくれればいいし」

「でも、はるくんはもう準備してくれてるんでしょ?」

「だってお前、欲しいものだらけじゃん」

「じゃあ、あたしもあげたい」

「じゃあ頑張って考えて。俺が喜ぶもの……まあ3年も付き合ってたら、自然とそういうのもわかってくるもんだろうし?」


 はるくんが意地悪な視線を寄越してくる。

 クリスマスもバレンタインみたいに、あげるものが決まってたらいいのに。

 果たして、あたしははるくんが喜ぶプレゼントをあげることができるのだろうか。


「……自信なくなってきた」

「あげたいって言ったのはそっちだろ」

「はるくんがハードル上げるから」

「そもそも俺はなくてもいいって言ってんだけど」

「何でそんなに物欲ないわけ」

「物欲がないわけじゃなくて、俺は自分に必要なものとそうじゃないものがわかってる男なの。今は新しく必要なものがない。余計なものは買わない」

「うわ、余計ハードル上がったー」


 頭を抱えるとまではいかないまでも悩むあたしに、はるくんが言う。


「まあでもほんと、何でもいいけどな」

「そんなこと言われても、もうヘタなもの買えないわー」

「大丈夫だろ。これまでもらったプレゼントだって、ちゃんと俺好みだったし」

「だって、それは事前に大体の情報仕入れてたから」

「まあなー。でも、万が一好みと違ったところで、花がくれたものなら、何でも嬉しいし」

「……」

「……とか、本気で言うと思った?」

「……ですよねー」


 はるくんは、どちらかというとSだ。

 この状況を完全におもしろがっている。

 頬杖をやめて、楽しそうな表情のはるくんがリモコンを持つ。


「クリスマス、楽しみにしとこ」

「やめてー」

「話題出したのそっちだからな」

「聞かなきゃよかった……」


 それもあとの祭りだ。

 はるくんがチャンネルを変える。

 テレビから、アイドルがカバーする往年のクリスマスソングが流れてきた。

 クリスマスまであと1週間。

 どうにか頭を捻って、はるくんが喜びそうなものを考えるしかない。




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