本拠地
守護大名を驚かせた証文事件から二ヵ月後、義教は都を出て河内に移っていた。
河内は畠山持永が守護大名の国である。
義教は、守護代 遊佐氏の若江城に本拠地を移していた。
「遊佐河内守、兵の集まり具合はどうかな?」
「これは、御所様、機内や播磨の兵は集まりましたが、遠国のものはもうしばし時が掛かるかと」
「今、いかほど集まった。」
「はい、ざっと5000ほど。」
「あい分かった。兵は飢えさせるなよ。」
「御所様のお借り頂いた土地からの米で足りております。兵はどうされまするので。」
「いずれ沙汰する。しばし待て。」
「はっ!」
義教は、若江城の自分の居室へと下がった。
「いるか?」
「はい。」
梶井義承が、面前に現れた。
「都の様子は?」
「政は、大名達が合議によって進めておりますので、差し支えありません。」
「吾が居なくても、何とかなるというのもどうかと思うがな。」
「但し、重要な事は、先送りのようで…」
義承がニヤリと笑った。
「義承、吾に気を使わんでも良いぞ。」
「いやいや。そんなつもりでは。
ところで兵は?」
「まだまだだな。都を抑えるだけは集まったが、そこまでだな。
ところで、少し早いが千也茶丸を元服させ、世の側に置こうと思う。」
「それは良きお考え。」
「重子は手放したくないだろうから、上手く連れ出してくれ。」
「かしこまりました。」
「義承、本来ならそなたにも還俗してもらい、なんらかの役についてもらいたいのだが…」
「いや、この立場が気楽でございますよ。
後、半年ほどですか?」
「あゝ、その程度だな、事を動かすには…」
義教は気が急くのを抑えていた。