片腕
義教は、新しき政を如何にするか熱中し始めた。
義教には焦りがあった。年齢である。
既に48歳。世継ぎの千也茶丸は、8歳である。
元々、将軍になる身ではなく、10歳で出家した為、世継ぎの誕生も遅かったのである。
義教はもっとも信のおける者として同母弟の梶井門跡義承を呼び寄せた。
「義承、今まで話した通りだ。そなたは俗世を離れた身かもしれないが、足利の血を引くもの。吾に力、いや知恵を貸してくれ。」
「御所様、かしこまりました。この吾でよければなんなりとお申し付けください。」
「ありがたし。早速だが、何から手をつけようかの。」
「御所様、何を行うにしても兵が必要でございます。御所様がすぐに動かせる兵はいかほどでございましょうや?」
「せいぜい、100か200だな。後は、他のものが握っている。」
「いけませんな。かの比叡山延暦寺の悪僧どもと戦える程度ですな。
まず、御所様がすぐに動かせる兵を増やしましょう。それにはちと荒療治が必要ですが、お耳を拝借。」
義承は義教の耳元で策を囁いた。
「義承、それは中々面白いが、都にいるものは混乱するかもしれないの。」
「なんの、御所様が自分の意のままになるものに家督を継がせた今だから出来るのです。
これはまだ、始まりにしか過ぎません。」
「わかった、義承。吾も腹をくくったぞ。」