花の御所
一夜が明けた。
義教は、赤松家の始末をその場にいた赤松庶子の貞村に任せ、花の御所と呼ばれる室町邸へ引き上げていた。
「御所様、ようご無事で。」
出迎えた正室 日野重子の言葉にも応えず、常御殿にこもってしまった。
『赤松を抑えれば、父、鹿苑院(足利義満)の悲願である日の本の全てを足利の名の元に一つに出来ると思うていたが、余を死いようとするとするとはな。まだまだ、この先、余に逆らう者は出て来るであろうな。
さて如何にするか?』
義教は、寝ることを忘れ、考えに熱中していた。
しばし時が経ち、近習が蝋燭を変えに来た時であった。
義教は、近習に声をかけた。
「お主はどこの家の者であったかな?」
「御所様、細川持之が嫡男六郎と申します。」
「そうか、管領の息子か。お主も末は管領となるか?」
「御所様が是非にとおっしゃれば…」
「余が言わずとも、そなたの家と、畠山、斯波から管領は決まる…」
そこで義教は言葉が止まった。
「御所様、いかがなさいました。」
「いや、なんでもない。もうよい下がれ。」
近習は下がった。
『余は、守護大名や公家どもの家督を操り、意のままになるものを周りに集め、寺社も力でなんとか抑えたが、余が亡くなれば、また守護大名が力をつけるであろうな。
今、この力のある内に政のやり方を変えないとこの日の本はまた戦さに巻き込まれるな。
悪御所と呼ばれているのは知っているが、ますます悪御所とならねばならないようだ。』
気がつけば、赤松家の騒動から一日が過ぎ、すっかり次の日の明け方となっていた。