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3-2 リブネントの聖堂回境師

一人の女性の入室により部屋の中が静まり返った。

短いステッキにしわ一つない燕尾服。

相変わらず目は閉じられたままだ。

魔法使いとはおよそかけ離れた装いをしている。

交易都市ルーランで見た姿と変わらない姿のピューレアがそこにいた。

独特の存在感は相変わらずである。

「フィア殿」

ピューレアは迷うことなくフィアの前にやってくる。

そのしぐさはまるで見えているかのようだ。

「ピューレアさん」

「もうあれから四か月ぶりになりますか。お元気でしたか?」

「はい」

ピューレアとは交易都市ルーランで年初めに会っている。

「ところでフィア殿、ヴァロ殿は周辺の宿においでですか」

「はい」

「一言挨拶したかったのですが、それならば仕方がない」

どうも最後にルーランを立ち寄った時から、ピューレアはヴァロを一目置いている様子である。理由は定かではないが。

「私も選定権を持つ人間で呼ばれたのですよ。

ただ交易都市ルーランからここ湖都リブネントに来るのはさすがに骨が折れました。

大憲章の飛行禁止の条文を今回ばかりは恨みましたよ」

「…ははは」

ルーランからここリブネントまでは陸路でしか来ることができない。

どういう手段を使ってきたのかは知らないが、ピューレアは相当苦労しているようだ。

フィアはドーラの飛行術を使ってここまで来ている。

ちょっとだけ後ろめたい思いにフィアは駆られた。

「知り合いだとしても審査は公平にさせてもらいます。よいですね」

「はい」

そしてピューレアは自身の席に足を運ぶ。

「『漆黒』のユドゥンの片腕『盲目』のピューレア。フィアはあの方と知り合いなの?」

クーナは心底意外そうな声を上げる。

「以前にユドゥンさんいるルーランを訪ねたときにね」

「言われているよりも柔和な方で拍子抜けしたわ。差し向けられた暗殺者一ダースを魔法を使わずに倒したとか、一人で魔獣の巣に乗り込んでいって全滅させたとか。

かつてポルコール様と互角に渡り合ったとも聞いてるわ。そんな伝説もってるからもっとごつい人を想像していたのだけど…」

「私も第一印象クーナと同じだった」

二人は笑いを必死にこらえる。


リブネントの聖堂回境師が会場に姿を現す。ざわついた会場が水をうったように静かになった。容姿は十歳ぐらいだろうか。

サファイヤを思わせる青い瞳に銀色の髪がたなびく。

全体的に青色の服装を身につけており、大きな杖を手にし、背後には侍従の女性が二人いる。その聖堂回境師の名はリュミーサ。

ここの結界が作られてからその姿は全く変わらないのだという。

フィアは神秘的な雰囲気を漂わせる女性だと思った。

その女性はフィアの前まで来ると足を止める。

「私の名はリュミーサ。フィア、よろしく」

リュミーサはその右手を差し出してきた。

悪意も善意もその者からは何も感じられない。

「はい」

フィアは立ち上がり、フィアは差し出される手を握り返す。

リュミーサの持つの独特の雰囲気に戸惑う。


リュミーサが席に着くのを見計らって、ポルコールが壇上に上がる。

誰もが皆固唾を呑み込む中、それは厳かに始まった。

「遠路はるばる皆ご苦労。中にはここまで来るのに数か月を要したものも居よう。

ラフェミナに代わり、このポルコールがこの場を借りて礼を言う。

そして全員でこの場を迎えられることを喜ばしく思う」

拍手が会場中から湧き上がる。

「現在ラフェミナはトラードの件で、教会との調整中のためにここには来られない。

立会人はリブネントの聖堂回境師リュミーサ。司会進行役はこの私ポルコールをラフェミナ様は指名された。これに関して異存のある者はいるか?」

その提案は拍手で持って迎えられた。

「では、この場にいる全員の了解が取られたと判断する。これよりトラードの聖堂回境師選定会議を執り行う」

フィアはポルコールを包み込む覇気がその会議場を覆うような感覚を覚えた。

「結社から派遣された十五名、それを除いた序列上から十名がここへ来られている。

各人にはこれより三日の間に四人の聖堂回境師候補者の中のだれにその資格があるのかを見極めてもらう。聖堂回境師候補はいずれの者も信をもって任せることができる者を選んだつもりだ。これに異存のある方、もしくは違った意見のある者は意見を述べてほしい」

ポルコールがそう言うと数名の挙手が上がる。

ポルコールはそのうち一人を指名する。

「四人の選考手段をさしつかえなければ教えていただけませんか?」

「実績、能力、素行、将来性を考慮に入れ選定させてもらった。もう少し時間をかけて選びたかったのだが、教会側からの要望もありトラードの聖堂回境師の期間を長くするわけにはいかない。そのために私を含むラフェミナ様と各結社の長老卓数名によりその資格のある四人を選ばせてもらった」

「他には質問のあるものはいるか?」

「いないようなので次に入ろう。肝心の選定方法だが…」

質疑応答を交えながらポルコールの説明はゆっくりと進む。

質疑応答が終わると次は四人の聖堂回境師の紹介、各代表の紹介、この三日における日程説明等を順にこなしていった。

三日目の投票で過半数の票が確保されれば承認されたという運びになるのだという。


会議が終わるころには日もとっぷり暮れていた。

かなり駆け足なので、細かいところはご容赦ください。

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