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2-3 候補生

宿に着くなりクーナに一部屋に呼び出された。

ドーラは自分の部屋に荷物を置くなり、どこかに消えて行ってしまった。

おそらくは観光だろうなと。今までの行動からヴァロは推測している。

「そういえばあんたも話を聞くつもり?」

ヴァロを見てクーナは疑問を投げかける。

「邪魔なら…」

「ヴァロは当事者よ。聞く権利があります」

言葉とは裏腹にフィアはヴァロの左腕をがっちり掴んで離さない。

「お師様が聞くのであれば僕もこの場にいます」

ココルもヴァロの右腕を掴んでいる。

…本人の意向は反映されないんだな…。

逃げ場のないヴァロにはクーナから憐みのような視線を投げかけられた。

この状況にヴァロはため息を漏らす。

「…なんだかねぇ。まあ機密事項でもなんでもないから別にいいんだけどさ」

一息つくとクーナは語り始める。

「知っての通り、会議はここから見える城、カロン城で行われるわ。

明日の午後までに入城して橋があげられる。

そしてその橋はトラードの聖堂回境師が決まるまではその橋が下されることはない。

二百年前の選定会議の時はそうだったって記録に残されてる」

「二百年前」

驚いたようにココルはその言葉を反芻する。

「そのぐらい行われていなかった会議でもある。今回が異例すぎるのよ。会議っていうけれど実際のところ選挙だしさ」

「なるほどな」

聖堂回境師が失脚したなどというのは珍しいことなのだろう。

「それじゃあ、リブネント選定会議でのフィア以外の聖堂回境師立候補者と『北』の現状から話しましょう」

クーナは得意気に腕を組む。

「現在空席になっているのはトラードの聖堂回境師。

これを決めるにあたってこのリブネントで選定会議が行われることになった。

ここまではいいわね」

フィアは頷く。

「カランティが失脚した理由は当事者であるあんたたちが最も知ってると思う」

そうカランティははぐれ魔女集団『真夜中の道化』の黒幕であり、大陸東部の内乱、クーデターを裏から操り、その上で捕まえた人間たちをひどい人体実験に使っていたという。それを知ったヴァロたちはトラードの聖堂回境師であるカランティをルーランの聖堂回境師ユドゥンとともに失脚をさせた。

公にはされてはいないが、それがカランティ失脚の真相でもある。

表向きにはそれは教皇直属の聖カルヴィナ聖装隊が行ったこととされている。

「現在聖堂回境師を選定する権限を持っているのは六つ。

テーベ、ラフィート、ムンバ、レリオスン、ヌイトレーア、ファムの六つの結社。

これらの結社が主導し、今回のリブネント選定会議で空席になったトラードの聖堂回境師を選ぶことになる」

「六つって区切り悪くないですか?」

ココルの声に

「…以前はメルゴートって結社があってね」

メルゴートというのはクーナとフィアが所属していた結社である。そのメルゴートは第三魔王の復活を試み『狩人』の手により消滅したのだ。

「その上で、ヌイトレーアはカランティとの関わりが深いということで今回その選出からははじかれた。これで今回の選定結社は五つ。この五つの結社がそれぞれ三名づつを出して、十五名。さらに魔法使いの中で序列上位の十名を加えて二十五名により選出されることになる。この二十五名の話し合いによってトラードの聖堂回境師が決まることになる」

「聖堂回境師は直接は関われないとヴィヴィから聞いていたが…」

「その通りよ。聖堂回境師は後任を選ぶこと、そして選ばれることはあっても、他の結界を担当する聖堂回境師を選べないの。聖堂回境師の有しているもう一つの権限が強すぎるから…」

「もう一つの権限?」

「それは極秘事項」

ヴァロはフィアを見る。フィアの表情は動かない。

どうやらフィアもそれを知ってるようだ。

「一カ月前の話し合いで聖堂回境師の適格者…候補者はあんたを含めて四人に絞られた。

これからその三名を紹介させてもらうわね」

クーナは手にした三枚の白黒の絵をその場に出した。

「うまいな。クーナが描いたのか?」

ヴァロは感心したようにその写真を見る。

まるでその本人がそこにいるかのような印象を受ける。

「これは念写って言う相手の顔を思い浮かべ、魔力を使って専用の紙に焼きつけたモノ。

私たちの使う魔術の初歩でもある」

クーナは右端の女性の絵を指さす。

美しいが凛々しさを女性がそこには映っていた。

「一人目、ミョルフェン・イセイア。所属テーベ魔法結社。

現在かの有名なカーナ四大高弟の一人ポルコールの一番弟子であり、

若くしてハーティア聖滅隊の次長まで上り詰めた天才。

その実力も他の候補者たちより頭一つ抜けてる。現在最有力候補」


次にクーナは中央の女性の絵を指さす。

どこか艶やか笑みを口元に浮かべる女性がそこには映っている。

「二人目、ミーリュン・ファルタコア。所属ノーレ魔法結社。

以前の結社対抗の魔法競技会において三回連続優勝の実績を持つ。

その研究分野において結界のアテン性かい離面における二重式の提唱をした。

実力も実績も申し分ないとされている」

既に何言ってるのかわからん。

「…ああ、彼女の本読んだことある。結界における新理論の開拓したって」


最後に左端の女性の絵を指さす。

多くの女性に囲まれ、何かをしゃべっている姿の女性が映っている。

「三人目、ソフェンダ・ミギレ。所属ムンバ魔法結社。

結社ムンバ、長老レンド・ミギレの子。

連続魔法を得意とし、その魔法力は巨大結社ムンバでも常に上位に名を連ねる。

その実力もさることながら、結社の上の人間に顔が効き若いながらにして長老卓に推薦を受けるほどの実力者」

子の三名がトラードの聖堂回境師の候補者だという。

「フィアは知ってる人ほとんどいないでしょう。聖堂回境師候補は皆若手から選ばれてるから」

「…うん。私の知っているのはミーリュンさんぐらいかな。それも名前だけだけど」

フィアの言葉にクーナは頭を抱える。

「…やっぱり事前に説明しておいてよかったわ。知らないで出て行ったら赤っ恥もいいところよ」

「クーナは知ってたの?」

「…結社の密集している北にいれば噂が嫌でも耳に入ってくるわ。このうちミョルフェンとソフェンダとは一応面識があるし」

どうやら南にいることでフィアは魔女の社会から完全に取り残されてしまっているらしい。つまりは田舎者ってことだ。

「これから時間の許す限り、あんたが恥をかかないぐらいの知識は与えてあげるから覚悟しなさい」

クーナの言葉にフィアはこくりと頷く。

「…えっ、俺も?」

ヴァロの声は黙殺された。

フィアの腕はがっちりとヴァロに絡みつき、逃げることなどできそうにない。

もう片方にいるココルもまた自身の故郷の聖堂回境師選定に興味があるのか熱心に耳を傾けている。

ヴァロは夕暮れまでそのクーナの講義に付き合わされることになった。

いろいろこじつけて四人に。

あまり増やすと人物描写が薄くなるためひかえました。

これからこの四人には活躍の機会があります。

この部ではないけれど。

よろしければ覚えていてくれるとうれしいかな。

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