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1-3 別れの予感

「ちょっといいカナ?」

話が始まる前にドーラが手を上げる。

「ドーラ何かあるの?」

「まず僕から報告だけど、さっきヴァロの兄さんのところ辞めてきたヨ」

いきなりの告白にその場にいるココルを除いた者たちが固まる。

ヴィヴィですら目を丸くしている。

「ドーラ、これからどうするつもりだ?」

ヴァロは驚いた表情でドーラに問う。

「僕は北に向かうつもりだヨ」

「北に?どうして?」

その質問に

「ドーラ、ちょっと来なさい」

ヴィヴィは立ち上がり、ドーラを連れてその場を離れる。

「ほんとにいいのドーラ?あんたにしてみれば念願がかなってたんでしょ」

ヴィヴィは裏の事情も含めて全部知っている。

今ドーラが仕事での雇い主は、彼が仕えることを切望した王の転生者。

ドーラにしてみれば封印から解かれて、漸く希望がかなったともいえる。

「…それよりもやらなくちゃいけないことができたのサ」

「やらなくちゃならないこと?」

「…安心して、君たちに迷惑はかけないヨ」

その言葉からヴィヴィは何かを感じ取ったらしい。

「まー、あんたの人生好きにすればいいけどさ…」

ドーラは力なく笑った。

「そうだネ。僕の勝手だヨ。けど気にしてくれたことには感謝するヨ」

ドーラはそう言うと皆の方に戻っていく。


「今回はリブネント選定会議の件で今日はあんたたちを呼んだのよ」

戻ってくるとヴィヴィは椅子に座り直し、静かにそう告げる。

「選定会議だって?」

ヴァロの問いにヴィヴィは頷いた。

「トラードの聖堂回境師がいつまでも空席じゃいろいろとダメでしょう。今は聖カルヴィ


ナ聖装隊から連盟側に権限は譲渡されたって話だし」

現在トラードは空位の状況が続いている。

前担当者だったカランティがヴァロたちの手により失脚したため、

現在トラードの聖堂回境師は不在である。

「大体聖堂回境師は大概は後任を指名してから辞めるのだけれど、今回ばかりはちょっと


事情が違うからね。そこで今回リブネントで選定会議が開かれることになったのよ」

「なるほど」

「なるほどじゃないわよ。あんたも出席するの」

あきれたようにヴィヴィが告げる。

「俺たちも?」

ヴァロはヴィヴィを驚愕の表情で見つめる。

「当然でしょ。フィアはトラードの聖堂回境師候補に挙がってるし、まさかフィア一人で


リブネントまで行かせるつもりないわよね」

「…でそれはいつの話だ?」

蒼白な表情でヴァロはヴィヴィに尋ねる。

「一カ月後」

「ちょっと待ってください」

声を上げたのはココルだった。

「何?」

「リブネントって言ったら大陸中央部にある都市です。

三か月以上はかかりますよ。フゲンガルデンからではどうがんばっても、一カ月でなんか


絶対無理たどり着きませんよ」

リブネントはフゲンガルデンから北西の方角にある大都市の名前だ。

ここからはその場所まで陸路を使って向かうほかなく、そこにたどり着くまでに少なくと


も三か月以上は要する。ココルの言うとおりである。

「そこでそいつの出番」

ヴィヴィはびしっとドーラの方を指さす。

「あんたの力を使えば一日で着くでしょ」

「本当に気軽に言ってくれるよネ。僕は君らの使い魔じゃないんだケド」

ドーラはあからさまに嫌そうな顔を見せる。

「とっくにラフェミナから依頼は受けているんでしょう。それにあんたなら簡単にいける


んじゃないの」

「気分の問題サ」

ドーラはしれっと答える。

「…もう少し早く言ってくれると助かるんだが…。また仕事のことでモニカ女史にどやさ


れる」

ヴァロは仕事のことで頭を抱えた。

ちなみに前回ルーランに行った際のことを数か月経った今でも根に持たれている。

「各参加者の日程の調整がついたのは昨日だから、これでも早い方よ。

リブネントよりちょっと北に魔女の結社は密集してるし、遠いところの参加者は既に移動


してるって話よ。そもそもフゲンガルデンなんて南方にいる参加者なんかうちらだけなん


だけどねぇ」

「ひどい話だな」

こっちは完全にいないものとして扱われていることにヴァロはそう漏らす。

「トラードでの聖堂回境師不在の問題が大きいでしょうね。早く決めちゃいたいってのが


本音のところじゃない?既に候補者もフィアを含めて四人決まってるようだし…。

上がこの問題は早く決着をつけたいのがにじみ出てるわー」

ヴィヴィは椅子にもたれかかる。

「…ヴィヴィは参加者じゃないんだな」

「ここの結界地ほったらかしにもできないし、聖堂回境師は他の結界地の聖堂回境師選定


には深く関わらないってのがルールなの」

「いろいろとあるんだな」

「この仕事やってると、規則だらけで頭痛くなるわよ?

規則違反するとさらに面倒なことになるし」

あからさまにいやそうな顔を見せる。

「わかったヨ、元々ここに来る前まではそのつもりだったしサ。…ただし、君たちからの


魔法使いとしての頼みはこれっきりダ」

「わかってる。…人として生きたいと言ったあんたの意志は尊重するつもり」

ヴィヴィの言葉にどこか吹っ切れたような表情でドーラは笑った。

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