プロローグ
「この星は何番目の星になるのかな」
宙に見えるその星を指さし、その幼子は問いかける。
「七つ目」
幼い子の問いにその子供は答えを告げる。
右手には大きな杖を持ち、清廉なローブを身に着けている。
髪は銀色で肌はどこまでも白い。
その振る舞いは神秘的ですらあった。
彼女は歳をとらない。そう言う風に作られたから。
彼女は感情をもたない。それは必要なものではないから。
あれだけあったもはや船は三つしか残されていない。
技術の粋を凝らして作った大船団。
かつて彼女たちは自身の住む星を彼女たちの過ちで失ったため、他の星に移住するしかなかったのだ。彼女たちは貪欲に自身たちの住む場所を探し続けた。
幾度も幾度もその移住先を探すうちにその技術は進化していった。
そしてその技術が禁忌の領域にまで達したために、彼女たちは神の怒りに触れることになった。そうして星間戦争という戦争が引き起こされる。
それは戦争という名はつけているが戦争ではない。戦争の名をつけただけのただの一方的な殺戮だった。神の圧倒的な力の前にはどんな技術、どんな力も無意味だった。
千隻以上あった船はあっという間にその『御使い』により次々に薙ぎ払われ、三隻しか残らなかった。
「今度こそ終の住処になるといいね、リュミーサ」
彼女の脇で幼い従者がその星を見つめながら呟いた。
「そうね」
二人はその星を見つめる。
それは千年以上も昔の話だ。
彼女たちの星では女性だけが魔力を自在に操れた。
その星の先住民たちと交じりあい、今ではその面影すらも見いだせない。
魔力を使う者にその残滓を見る。それだけで彼女は十分に幸せだった。
彼女はそれを見守る選択を選んだのだ。
『空の残姫』『暁の三賢者』と呼び名を変えながら、そのモノはずっと見守る。
そして今は『リブネントの聖堂回境師』と呼ばれている。
その名はリュミーサ。『星を眺める者』の二つ名を持つ魔法使い。
いよいよ裏題オルドリクス編開幕です。
漸くここまで来れた。
ちなみに裏設定はプロローグに。
魔女っていうのはうつーじんの子孫だったということ。
さあ、悔いの残らないように書ききりましょう。