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犬公方
「犬に刀を向けるなど、無礼者!」
ちょんまげ姿の男は、信長に刀を突きつけている。
それにしても、まるで犬が偉いといっているような口ぶりである。
なんだか奇妙な世界だ。
「このような無礼ものには、一度将軍様のお咎めを貰った方がよいのでは?」
ちょんまげ男の部下らしき人が言う。
「そうだな。 この無礼な奴らを将軍様のところへ連れて行け!」
「はは!」
ちょんまげ男の命令によって多くの部下たちに囲まれて連れて行かれるおとめ達。
腕は掴まれていて、身動きが取れない。
掴まれている腕が赤い。
「おとめ、案ずるでない。 何かあれば、このわしが対処してやる。」
信長がニコッと笑う。
(そんな笑っている場合じゃないのに・・・)
ついクスッと笑ってしまう。
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「将軍様! 申し上げます!」
「なんだ?」
「城下町にて犬に刀を向けるなどといった、無礼者が現れました!」
「ほう、それで?」
「ただいま城へ向かわせております。」
静かに話を聴いていた将軍の手は震えている。
「この私が、罰を下そう・・・。」