25/47
憧れ
「市!」
「兄上・・・ ただいま戻りました。」
「すまん、市。」
「いえ、これは戦国の世では当たり前のことです。」
===
今日は、新月だろうか。
月が見えなくて物悲しい。
いつものようにおとめは縁側に座った。
「おとめ・・・。」
「ん?」
「全てのことを戦国の世では当たり前と、済ませてよいのだろうか・・・。」
「平和になるといいのにね。」
「ああ、そうだな。」
「でも、きっとこの先平和な世が必ず訪れる。」
「そうか。」
「うん。必ず。」
(平成になれば、間違いなく日本は平和になるよ。)
「なぜか、お主といると未来を見ている気がするのだ。」
「そ、そうなの!?」
「なんというか、考え方が新しい。」
(未来から来たし・・・)
「だから、わしの中での憧れなのかもしれん。」
「憧れか・・・。」
(これが相思相愛だったらいいのにねえ)
「本当に戦国の世というものは残酷だ・・・」