嫁入り -NOBUNAGA sideー
いつもはおとめちゃんにスポットを当てていますが、今回は信長にスポットを当てたお話です。
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「兄上、それは真ですか?」
「ああ。浅井長政との縁談だ。」
「市、織田家の素晴らしさを伝えるように努めて参ります。」
(本当に良いのだろうか・・・)
いつの間にか、信長は庭園まで来ていたようだ・・・。
(なんじゃ?)
そこには、お市がいた。
どうやら、泣いているらしい。
空がきれいなオレンジ色だ。
こちらまで、しんみりした気持ちになってしまう。
「恒興・・・」と、お市はボソッと呟いた。
妹がこんなにも辛そうな表情をしているのを見るのは初めてだった。
いつも、笑顔で何でも引き受けてくれる、そんなお市がこんな辛そうな表情をするとは・・・
何だか居た堪れない気持ちになった。
「兄上?」
(気付かれた・・・)
「どうなさったのですか?」
その笑顔はかなり引きつったものだった。
「市・・・。 縁談を解消_____」
「いけませぬ!! 兄上までそんな弱気になって良いのですか?」
「恒興のことを好いておるのだろう?」
「・・・。」
「もし・・」
「?」
「もしここで、市が行かなかったら織田家はどうなるのです?」
市はきっぱりと言った。
「これは、市が選んだ、市しか出来ぬ務めなのです。」
「市・・・」
「任せてください、兄上。」
とうとう、お市出発の日____
「兄上、向こうで織田家の素晴らしさを伝えて参ります。」
「幸せにな、市。」
「おとめさん、あなたは真の幸せを掴むのですよ。」
「はい。」
(!? 何を言っておる!?)
「兄上、耳をお貸し頂けますか?」
「何だ?」
「兄上は、おとめさんのことを好いておるのでしょう?」
「何を言っておる!!」
「顔が赤いですよ?」
「・・・。」
「妹として、兄上に助言をさせて下さい。」
「?」
「絶対に逃してはなりませぬ。兄上が幸せにするのです。市は応援しております。」
市は満面の笑みで行ったのであった。