嫁入り
空がきれいなオレンジ色だ。
いっそうお市が美しく見える。
「お市殿ー!」
「恒興!」
「じゃあ、私はここで。」
「どうしたのじゃ?」
「お市殿が欲しいとおっしゃってた、くしです。」
「覚えててくれたのか。」
「はい。 私たちは幼いころからこうしてよく遊んでいましたね。」
「懐かしいのう。」
「この恒興、前々からお市殿のことが好きでした。」
「私も恒興が好きだ。」
「ならば_______ 」
「なりませぬ。」
「え?」
「恒興なら分かるでしょう?」
「・・・。」
「織田家の繁栄のために行くのです。」
「お市殿・・・」
「さようなら、恒興・・・」
お市は背を向け、その場を去った。
その目には涙が浮かんでいる。
ついに、お市さんの嫁入りの日になってしまった。
「兄上、向こうで織田家の素晴らしさを伝えて参ります。」
「幸せにな、市。」
「おとめさん、あなたは真の幸せを掴むのですよ。」
「はい。」
(恒興さんは来てないな・・・)
「お市殿ーーーー!」
展望台(?)から恒興が!
「お達者で---------!!」
お市もそれにこたえて満面の笑みで手を振るのであった。
「これで良かった。」
恒興も手を振り返すのであった。