訓練
先週は投稿できず、すみませんでした。つたない小説ですが、絶対に完結させますのでもうしばらくお付き合いください
バレンツたちが陣地に到着した翌日。雲はどこかに連れ去られ、木の葉は自分の存在を主張せずにはいられないような日だった。澄み渡る空のなかに夏の日差しが何の支障もなく地上に降り注がれた。その光が照らす一角にたたずむひとつの島、その砂のない波打ち際に彼らはいた。
「いましたよ、班長」
盛り上がった岩肌に、体を同化させるように腹這いになって様子をうかがっていた神祇官のメンバーがカルートへ向けて念話を発した。弓を携え、いつでも構えられるよう片膝をついた吟遊詩人が近くの岩陰についている。どちらも獲物を見つけた野生動物のように視線を外さない。
岩礁には蜥蜴人の群れが居座っていた。彼らは切り立った岩に打ち付けられて砕け散った波を浴びながら、それはずいぶんくつろいだ様子で日光浴を楽しんでいる。まるで天日干し真っ最中の海苔のようだ。ただ、群れの何匹かは立ち上がったまま武器を持ち、徘徊して見張をしていた。よく見れば蛮刀や槍を自分たちの近くに置いて彼らは日を浴びている。奇襲しようとしても、白兵隊には見張り役を下すのが精一杯だったはずだ。
背後の木々からやってきたカルートたちは先の二人の後ろで腰をかがめた。満潮になるときっと魚のたまり場になるだろう場所に。
「昨日と同じ場所だな、あまり遠くに探さなくて良かったぜ」
カルートがほっと息を出して笑った。傍らで武士が声をかけた。
「やりますか」
「当然。まずは道路までだ。そこから一体ずつ連れて行く」
妖術師の少女が口を挟んだ。
「昨日のやり方でか、カル兄?」
こくりとうなずきを返す。後ろの召喚術師も魔導書を取り出し準備万端だ。カルートが背負った両手剣を外し、音をさせて岩肌に突き立てた。その金属音を合図にカルート班は厳しい視線を群れに注いだ。
「よし!じゃあまずはここまで引き寄せられるかだ!散らないように行くぜ!」
五人分のセリフがぴったり重なって帰ってきた。三人のメンバー――武士、神祇官、妖術師――が一直線に突進していく。猛然と迫ってくる冒険者を目に様子をうかがっていた蜥蜴人の一体が鋭い唸り声を上げ、立ち上がる仲間を背に他の数体とともに槍を振り回し向かってきた。
最初に仕掛けたのは武士だった。唐突に化学反応をおこしたマグネシウムのように強い光を放ち、並走していた神祇官を一挙に抜き去った。剣の衝撃に導かれ、中空に躍り出たそこはグレイブルーの鱗を身にまとう群衆のど真ん中。突進系の特技のように〈閃光斬り〉は移動と攻撃を一度に行う。大災害後の、プレイヤーのアクションに自由度が増したことで、今まで平面にしか移動できなかったのが角度をつけて撃てるようになったおかげだからこその機動だった。それぞれの得物を手に、四つの手足で今にも走りだしそうな体勢で蜥蜴人たちが疎ましげな視線を送るときには、武士は次の特技の体勢に入っていた。インパクトの瞬間、着地の勢いすべてを注ぎ込むように地面へ刀を突き刺す。岩肌に突き立てられた刀身を起点にエフェクト光がさざ波を起こした。〈武士の決戦〉は同心円状の効果範囲を持った挑発系特技。かなり大振りで派手なモーションを持ったこの特技は、当然のことながら隙が多い。剣気の波動を受けて迫ってくるモンスターが居ながら、自分はまだ悠々と地面から剣を抜いている最中なのだ。蜥蜴人たちは自らの敵愾心の赴くまま跳びかかり、岩石から彫り抜いたような槍の穂先をぶつけてくる。
二十に迫る数を持った蜥蜴の戦士たちは、レベル的には鎧袖一触で倒せる相手でもこの圧力。ノックバックとまでは言わないが、こうも周りで固まられては移動ができないし、特技も中断させられる。
「うぉぉぉ、どけェ!」
武士が吠え、肩口で斬りこみ、肘でついて無理やりに場所をつくった。こういう力技も大災害後ならでは、といった感じだ。
(うっかり刃が当たってはコトだからな!)
そう心の中でつぶやくや半ば機械的に刀を振り上げた。グリーンのエフェクト光が風切り音に彩りを添える。
「〈旋風切り〉!」
振り下ろした剣の描いた斬撃線から密度の高い風の奔流が飛び出した。囲い込もうとしていた蜥蜴人たちはことごとく跳ね飛ばされ、そばにいた仲間の個体まで足止めを食らっている。これは良いな。かてて加えて神祇官が我流の刀さばきでいなし、穴が埋まらないように支えている。
「うりゃああ!どんどん行けェ!」
その時、群れの背後が声が上がった。<ブリンク>、<ルークスライダー>といった転移魔法を使って背後に回った妖術師だ。至近距離で魔法を撃ちこむコンバット・メイジとしての普段であればここで攻撃補助特技のスイッチを入れるところだが、そうでなくともオーバーキルの威力。もちろん脅しや陽動いがいで使う気はさらさらない。
口の中でもごもごといくつかの呪言を唱える。すぐさま反応が現れた。あちこちで火の手があがった――というには勢いの強すぎる炎。使ったのは<ブレイジング・カラム>と<ファイヤーウォール>。位階が上がるごとにその数を増やす、間欠泉よろしく吹き上げる火柱と分厚い炎の壁が青みを帯びた鈍色の鱗どもを背後から追い立てる。あからさまに動揺したリザードマンたちはもみ合いへし合いしながら前進をし始めた。その間に発生した敵愾心を武士は見逃さなかった。
「よっし!ついてこい!」
駆け出しながら〈武士の挑戦〉。今度は直線的な剣気がモンスターをぶった。妖術師の敵愾心を吸収すればもう間違いないだろう。爬虫類的なスピードで這いよった蜥蜴人から繰り出される槍の足払いを跳んで躱し、こじ開けた通り道を走り出した。
「よし、来たぞ。いい調子だな」
カルートが思わずつぶやいた。それを合図に召喚術師が従者召喚を行う。呼び出されたのが二体の小型従者。爬虫類っぽい特徴を持つグレムリン、赤子のような頭身の低い姿を持つインプ。二体は同時に呼べることからもわかる通り、かなり能力値の低いミニオンランク・モンスターの悪魔だ。普段は妨害系の特技をあてにして召喚するのだが、今回は攻撃役だ。適度にちょっかいをかけながら、カイティングの列が乱れないようにする。神祇官はそんな二匹のお守りだ。間違ってもやられてしまわぬようHPを見つめながら二匹を補佐する。反対側では転移魔法で戻ってきた妖術師が炎系の特技で逃げをふさぎ、群れの後ろをカルートたち三人のメンバーが追いすがった。
「冒険者が戻ってきたぞっ!!」
木の上で監視をしていた兵が叫んだ。もちろんバレンツにも分かっている。カルートが刀身を下に柄を振りながら蛮刀の攻撃をはじきつつ後ろへ退き、どんどん陣地に近づいてくる。
「みんな気を引き締めろ!冒険者がたがついていてくれるからと安心していては地獄を見るぞ!」
セヴァスト大尉が声を張り上げた。彼らは元々は90人あまりの白兵隊と、軍用帆船に乗り込んだ艦載砲要員だ。それが今、合計して60人ほど。最初は三つ均等に分けていた小隊も、大部分の一般兵を固めた二つの小隊とセヴァスト率いる少数精兵の本陣小隊になっている。その中にペテロが、緊急時のために加わっていた。
「……一体?」
拍子抜けしたようにルーシィがつぶやいた。見間違いかと眉間にしわが寄っている。
「最初だからな。様子見だ」
向こう側で群れを抑えてるらしいし、とバレンツは付け加えた。ルーシィはまた下にいる水軍たちに視線を戻していた。カルートやペテロが怒声をあげながら指導をしている。
「あの人たちの状態異常はそのまんまだよね?」
「もちろん。でも多少は回復しているみたいだ。あれって、話が進まないためのロックなんじゃないか?」
「……?」
「あいつらを支援して自力で目的を達成させるのが目的のクエスト。間違ってもそれが出来ないように、ステータスを低いまま封印する」
そこでバレンツは口を止めた。今思いついたように先を続けた。
「……もしかしたら、そのステータス低下を解くだけでも、目的達成したことになるのかもしれない」
それにはルーシィも疑念を浮かべた。
「それは、違うんじゃない?ここに来たときには一応でも問題はなかったんだし。トレーニング的なことをせずにいたって変わらないよ」
それもそうか、とバレンツが返した。思いついたことを話しているだけらしく、特にこだわって主張を通そうとはしなかった。
「はじめは隊に世話係みたいな従者がいたらしい。でもそういうのもどんどん街の方へ逃げ出して、どうなったか分からない。住人は教えないってさ。今は当番兵が交代で雑務をして、食糧を集めてを繰り返しているから。そこから解放するだけでもずいぶん違う」
「訓練とはまた違うけど」
「訓練の効果をだすには余分な負担を解消しないとな」
ため息。
「あの人たちは……どれくらいステータスが落ちてるの?半分くらい?」
「万全状態の三分の二くらい、ってトコだな。数字にでないとこも合わせるとそれくらいかもしれないけど」
ルーシィの眉間にしわがいった。まだ気に入らないところがある。
「ところで、あの訓練って何か意味があるの?どうせ大砲で吹き飛ばすんでしょ?」
「弱らせるだけだよ。同じ土俵に立たせるのが限界らしい。砲弾の節約もしなきゃ出し、一発で襲ってきた奴を全部倒せるとも限らない」
それに、とバレンツは続けた。
「ここにいる全員は、自分たちが弱ってることを知ってる。勝てない相手だって。それを覆して、曲がりなりにも戦えるってイメージをつくるのは大切だ」
眼下の実戦訓練はその場の注目を独占していた。カルートとペテロは近づきすぎないように注意しながらも死角が出来ないように目まぐるしく位置を変えている。ルーシィにもやがて加減を必要にした理由が分かった。HPの減りが悪い。攻撃力まで下がってるんだ、といまさらながらに気付いた。それに盾役が二人もいて敵愾心を奪い合っている。おかげでダメージを稼ごうと気負っている槍使いの術兵士の二人にターゲットが向きがちになって、そのたびにセヴァストが割って入っている。
「指揮官の部隊だから、って強いメンバーを選りすぐったみたいなんだが……」
「あんまりかみ合ってないね」
「編成かえたほうが良いって言ったんだが聞いてくれなくてな」
そう言う間に、五人の大地人は蜥蜴人を囲うように広がっていた。今はただでさえ戦闘力が低下しているのだ。術兵士は何か一つ魔法を使えるエリート兵士のメイン職業だが、大地人は同レベルの冒険者と比べて若干ステータスが低い上に、肉体労働が求められるためか兵士はもとからMPが高くない。効果の低い大地人専用の魔法でも、片手で数えるくらいにしか使うことが出来ないほどだ。
「でも<ヒール>と<キーンエッジ>、の大地人版か、が使えるんでしょ?なら、別に勝てなくもない――ホラ」
重装歩兵の掛け声を合図に術兵士が下がった。同時に二人が蜥蜴人へ体当たりを仕掛け、抑え込みにかかった。両側から押しつぶすかのように。追い払おうともがく敵に対して一歩も引かず、むしろ前に出て距離を詰める。そしてHPバーが長さを減じていく。バレンツは首を振った。
「厳しいな。かなり使いづらそうだし、完全に戦力が遊んでる。戦闘中に使ってられるようなモノじゃないんだ、きっと」
意外と長い詠唱に、下で見守るペテロも戸惑っている。大地人の特技についてはほぼ何も知らないので口を出せないのだ。その内にセヴァストの剣に攻撃力向上の魔法が付与された。もう一人の術兵士から<ヒール>とよく似たエフェクト光が飛び出した。回復を受けた兵士が粘り、もう一人は離脱する。入れ替わりにセヴァストたちが肉薄した。
「決まったね」
ルーシィが兵士の歓声を耳に受けてそう言った。
「だが連戦には対応できない。戦い続けるごとにジリ貧になっていくんだ」
さすがに一体であれほど手こずっていたわけじゃないんだろうけど、とバレンツは思った。それでも消耗の多い戦い方をしていたハズだ。
「兵士たち一人ひとりの力量は低くない。伸びしろはまだまだたくさんある」
バレンツは励ますようにそう言い足した。ルーシィも同意するようにうなずいた。カルートは道を戻っているところだった。セヴァストたちに代わって次の小隊が外に出て、ペテロやセヴァストのアドバイスに耳を向けていた。訓練はまだ始まったばかりなのだ。
実戦訓練は午後の間ずっと続けられることになった。その結果、夕日の射した陣地の真ん中には鎧を着たままの兵士たちが死屍累々といった感じで転がることになった。今回は見張りをしていた当番兵が恐々とした目で仲間たちを見ながら、食器を手に間を通っていた。哨戒班は焚き火に松明を突っ込んで火をつけている。陣地のあちこちには街と同じく魔除けのかがり火が用意され、夜に備えていた。
「いやぁーものの見事にくたばってんなぁ」
ペテロがにやけた口元を隠そうともせずにそう言った。バレンツやルーシィは何も言わないが、似たようなことを思っていた。兵士たちは手持無沙汰な様子で丸太に腰を下ろしていた。炊事係の兵士の動きが慌ただしいのはおそらく食事の準備ができていないせいだろう。あまりにも真面目に監視しつづけたせいかもしれない。必死に料理コマンドを続行しているが、大地人への弱体化措置のためかひどく時間が長い。担当の兵士は腕を組み、足を肩幅に軽く開いて、険しい表情で仁王立ちをやめない。
だが、こっちは冒険者だ。レイドギルドともなればダンジョンに持ち込んだアイテムの中で自給自足する必要があるし、そのためのサブ職だって相応にレベルアップしている。背後から台車の音が大きくなってきたとき、風向きが変わって運ばれてくる物の正体が兵士たちに伝わった。
――おい、これってまさか……?
――すげえ香辛料の匂いだ!チンケな貴族さまじゃあ拝めもしねぇ一品だぜ!
――ちげぇねぇ!味のある高級品だ!
どよめく兵士たちを見て討伐組のメンバーに笑みが浮かぶ。カルートが前に出て声を上げた。
「おぉい!ぜんいん注目!今晩は俺達からささやかなプレゼントがある!」
底が深い鍋を乗せた台車が前へと進み出た。戸惑いをあらわにしている兵士たちを手招きする。彼らは互いの顔を見合わせつつも、台車が近づくにつれて一人が立ち上がり、またもう一人がそれにあわせ、それを見た兵士が立ち上がりという連鎖反応が起こった。鍋蓋が持ちあげられる時には周りに人の壁が厚くなっていた。
「今夜はカレーライスだ!野郎どもが好き勝手おかわりできるような量はねぇから、せいぜい味わって食べるんだぞ!」
うおおおおおっ、と地面が痺れるような歓声が陣地にとどろいた。配膳をしていた当番兵に矢の催促が飛ぶ。そのうちに怒声がした。当番兵が勝手に食器を取って食事を受け取ろうとしているらしかった。
「おい、そこのお前!最初は訓練うけたヤツからだ!当番の連中はその後!鍋に群がるな!一直線に並ぶんだ!」
がやがやと騒がしくなってきた兵士たちをカルート班に任せ、バレンツたち三人はカルート班のメンバーが台車を使って運んできた物よりかは幾分小さめの、両手持ちの鍋を手にマンション跡に置かれた白兵隊陣地の本部へ、セヴァストたちのもとへと向かった。
セヴァストと二人の小隊長は先に会食の準備を終わらせ、冒険者の登場を待っていた。
「表では隊員たちがずいぶん喜んでいるようだ」
そう言ってセヴァストは余裕を持った笑みを浮かべた。だが、となりに座る小隊長の方はそこまで自分を律することが出来ないようだった。なんといってもカレーの香辛料の香りはここまで届いているし、貧相なその場しのぎの食事を続け、今日は死に物狂いの訓練ときては気力も体力も尽き果てるのだ。どちらももぞもぞと椅子の上で座りなおしたり、ちらちらと鍋に視線を送っている。
「遅くなってしまいすみません。今準備します」
バレンツがそう言うと魔法の鞄から人数分のソースポットを取り出した。魔法のランプのようなその器に鍋からルーを注ぎ、各人へと配った。小隊長たちの口の中で舌がじれたように暴れている。
そのカレールーは陣地の広場でカルートたちが運んできた物よりずっと上等そうな代物だった。白兵隊には質より量を重視せざるを得なかったし、おかわりを禁止しても数十人ぶんの食事量を考えるとランクの低い食材アイテムでないとそろえきれなかった。それに士官と一般兵用では差をつけておかねば、という思いもあった。そうしたわけで、兵士たちにはイモ類や干し肉を大振りなまま投入して数をごまかし、辛い味付けで出していたが、セヴァストたちには野菜が溶けきった様なスープに近いルーを出していた。肉も多い。濃いブラウンのルーではなく照り輝く黄金色で、見た目にも良い。そういったものを前にやっとの思いで食事の前の儀式が終わると小隊長たちは少年のようにかき込み、口がゆるくなった。おかげで、セヴァストが言わなかった自分の任務歴を我が事のように自慢し始めたのだ。セヴァストは苦い表情を浮かべたが、冒険者の手前でもあるし、善意の言動をとがめるには少し疲れていた。
「私たちはセトの海で海賊やモンスターの討伐に頻繁に駆りだされていた」
そうセヴァストは切りだした。
「私は平民の出だが、その中では生まれのいい方でね。親が村の長で、そのおかげもあって士官になれた。最初はもっと上の位の貴族将校についた雑用係だったが。戦死が多発してついに自分が指揮を執らなければならないときがあって、その時に初めて戦火をあげた。それが侯爵の目に留まった」
それでしばらくは安泰だったんだがね、と続けた。
「次第に僻地の、盛り上がりに欠ける長期の任務ばかりが充てられるようになった。貴族連中がもっともやりそうにない任務だ」
せせら笑うように息を吐いた。
「今回もそのような任務の一環だと思っていた」
「……どいうことだ?」
バレンツが怪訝そうにたずねた。
「我々は侯爵から――といっても使いを通してだが――指示を受け、デボンという商人のことを探っていた。徴発にかこつけて建物を探索するというような方法で。それも蜥蜴人どもへの敗北で泡になってしまったが、奴が帳簿の形で証拠を残しているらしいことを侯爵に伝えることができた」
冒険者の顔に出た驚きを無視してセヴァストは続けた。
「いいか、今のこの街は人の檻だ。苦境から逃げ出そうとする人間を住民は許さない。街から逃げようとした者は住民にリンチされ、デボンはますます水夫をこき使えるようになる。まずはそれをどうにかしないと、帳簿は見つからない」
会食はそれでお開きとなった。久々の食事以上のモノにありつけたことで舞い上がった兵士たちの乱痴気騒ぎはセヴァストの一喝で制圧され、その後は役目を思い出した当番兵によって規則正しく進んだ。駆け寄ってくるカルートたちを見ながら、このことは氷雨たちに伝えないとな、と心の中でつぶやいた。




