〜彼らの決断〜
気がついたら、書き始めておりました。
最初は、こんなもんで良いかな〜なんて思って書き進めたわけですが、何と無く書いて行った結果約2万文字の小説が出来上がってしまいました。あー怖い怖い
初めて書く前書き、なにを書けば良いのか全く分からずひたすら打ち続けております
こんな、適当な人間が書いた小説を暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです
一生懸命考えて作りましたのでぜひ読んでみてください
【プロローグ】世界を滅ぼす最悪な人間
僕は世界というものが嫌いだった。この世界には人間という生物が日々横行する。
当然、人と人がぶつかれば争いが生まれ、憎しみと言った感情が生まれる。僕は、そういうのを見ることが嫌だった…だから、神という存在に、そんな世界を見たくないと願い力が欲しいと願い…僕は力を得た。
僕のその力は、僕が消えろと願ったものが目の前から消えるといった単純なものだった、僕はその力を使い、親を消し、クラスメイトを消し、憎しみ、恨み、妬み、嫉妬、愛情、優しさといった感情すらも消していき、そして、無の世界を作り上げた。
『僕は最強だ、僕に勝てるものは誰もいない!』
僕がそう、言葉にすると建物陰から、一人の少女が現れた。
『これ、全て貴方がやったんですか?』
『そうだ、僕の見たく無いものを生むこんな世界は僕が消した』
『でも、消えていない存在もいますね』
そう言って、少女はこちらに微笑みを返してきた
『それは、僕がまだ君という存在を知らなかったからだ』
『なるほど、知らない存在や認識出来ない人や物は消せないと…良いことを聞きました』
『だが、僕はもう既に君という存在を知った、消すことなんて容易いんだ』
『なら、消してみれば良いじゃないですか。貴方のその力を使って私の全てを消せば良い』
『怖く無いのか…僕の力を見て』
『怖いかですか…勿論怖いですよ。私という存在が貴方という存在に消されるのは凄く怖いです』
『なのに、消せというのか…』
『勿論、出来るならですよ。出来るというなら消せば良いのです』
『お前は、僕が怖く無いのか?』
『勿論、怖いですよ。なんせ、世界を変えてしまう力を持っている人なんですから、本当に怖いですよ』
『なのに、何でそんなに平喘としていられるんだ』
動揺を誘っていたはずの自分が知らない内に彼女の言葉によって動揺していることに気が付き歯を噛みしめる
『なら、望み通り消してやる』
消えろと心の中で望んだが、僕の目の前から彼女の姿は消えなかった
『何故だ…何故消えない‼︎』
そして、何度も心の中で消えろと願う。
消えろ、消えろ、消えろ消えろ‼︎
しかし、目の前に立っている少女は消えなかった
『何故、消えないんだ…』
『それは、貴方が私という存在を脅威だと思い、恐怖心を芽生えさせているからじゃないですか?』
『だから、その恐怖心を消さないことには、私を消せないのではないかと思います』
『なら、それを消せば良いだけの話じゃないか‼︎』
『良いんですか?そんな事をすれば、貴方の心そのものを消してしまうかもしれないのに
心を失った貴方に、貴方の持つその力が使い続けることが出来ますか?』
『そんなものやってみなければ、わからない』
『まぁー私は出来ないと思いますが…』
そう言い放った少女は、一歩、また一歩と近づいて来る。
『来るな、化け物‼︎』
『失礼しちゃいますね。こんな、か弱い乙女に向って 化け物なんて、というか貴方に言われたくないですよ。世界を変えてしまう程の力を持つ貴方にはね』
何度も何度も、少女を消すことを考えるが一向に消すことが出来ない、そんな俺を見る少女は、一歩また一歩と近づき、僕の目の前にまで、やってきて僕の背中に手を回すと、少女は己の胸へと僕を抱き寄せた
『怖かったんですよね、恐ろしかったんですよね。ですが、もう安心して下さい。もう、貴方を怖がらせる元凶はもうありません。ですから、もうこの力をむやみに使わないで下さいお願いします』
自分の頬に伝わった人間味のある温かさを感じた時に、自分が少女の胸の中に顔を疼くめている事に気が付いた
『僕にこんなことをしておいて、ただじゃ済まさないからな』
『別に私は気にしませんよ。貴方が私との約束を守ってくれるならね』
『わかった。約束だ』
そして、この世界を滅ぼそうとした少年は世界を滅ぼす事を止めたのだった
【第一章】ようこそ、美空学園へ!
平成 35年 12月日本は、ある事件をきっかけに可笑しな方向へと変貌していった。
日本を支える三大都市の一つである名古屋が崩壊したという、ニュースを受け、日本だけではなく、各国の多くの人々を戦慄させた。 しかし、それを引き鉄に各国にも、同じように力を持つ者達が現れ始め、世界を騒がせ始めた。
そして、政府はそんな異能を持ったもの達を見つけ次第殺すといった『異端者殺戮計画』を立ち上げたが、力を持った者達には太刀打ち出来ず大きな傷痕だけを残して、この計画を撤廃した。そして、政府は苦悩し模索した結果に彼等のために施設を建設することで、手を打ったのだった。
こうして、政府により作られた学園の名は美空学園である。
そして、一人その学園に足を踏み入れようとする者がいた。彼の名は、伊勢 翔太郎である。
『ここが、美空学園か…かなり、デカイな』
パンフレットを開いて写真と建物を見比べ、あまりの大きさに唾を呑んだ。
震える足を動かしつつ、まずは職員室に向かうことにした僕は玄関と思われる場所にまでやってきたのは良いが、周りの格好と違う所為か周りから物珍しそうな視線を貰う。
『っ…早く、職員室に行かなきゃ』
下駄箱で靴を脱ぎ、来客用スリッパに履き替え角を曲がろうとすると人とぶつかり、尻餅をついた。
『っ痛…。もう少し気を付けてくれないか?』
そして、同じように尻餅をついている人物を見た。目の前にいたのは女子生徒で、ぶったお尻を抑えて『いてて』と言っていた。
『あの大丈夫ですか?』
起き上がり、その女子生徒に手を差し伸べ、女子生徒も不安気にその手を取ろうとするが、ふと自分がどんな状態なのかを思い出したのか、下を見るとスカートはめくれてしまっており、布が見えていた。
僕はすぐに目を逸らし、女子生徒はすぐにスカートを抑えた。
『今、見たでしょ⁈』
『見てないです』
もちろん、嘘八百である、バッチリ見てしまった
『嘘よ、ならなんで目を逸らしたの?』
『いや、それは貴方が素敵な人なので見とれてしまいそうだからです』
その一言に、その女子生徒は頬を赤く染めて俯いてしまった。
嘘は無かったものの悪いことをしてしまった気がした。
『そ、そんにゃの関係ないの!見たかと聞いているのよ』
『ごめんなさい、見てしまいました』
『最初からそう言いなさいよ、お世辞なんて言っちゃって嫌な人ね』
『いえ、素敵な人と言ったのは別にお世辞じゃないですよ』
すると、赤かった頬はさらに赤くなり、顔を真っ赤にさせてた
『こ、この…バカ!』
そういうと、その女子生徒は走り去って行ってしまった
『変わった人もいたもんだな』
『変わっているのは君だよ、君』
『うわ!?』
驚いて、後ろを見るとそこにはスーツをバッチリ着こなした女の人が立っていた。
『まさか、登校初日からナンパとはやることが早いな』
『べ、べつにナンパじゃないですよ。綺麗な人に綺麗と言って何がいけないんですか?』
『それだよ、それ。それこそ、ナンパの醍醐味みたいなものじゃないか』
『そうですかね。というか何か用ですか?』
『あのね、用がなかったら話しかけたりはしないと思うがね。君の先ほどのナンパと同じように』
『いや、だからナンパじゃないし…もう、それで良いです』
『そうそう、そういう諦めも肝心だよ少年』
そう言い放つと僕の背中に手をやり、バシバシと叩くが、これが結構痛かった
『そういえば、貴方の名前を聞いていませんでした』
『なんだ、またナンパか君は、学園ハーレムでも作るつもりか⁉︎』
『なんでそうなる⁉︎もう、ナンパじゃないですし、僕年増に興味ないですし』
すると、僕は顔を手で思いっきり掴まれた
『痛い、痛いですってば⁉︎』
『誰が、年増だ誰が⁉︎こう見えてもな、私は君と歳はそんなに離れていないんだぞ』
『なんですか、それ。私若いよアピールですか?ごめんなさい、それでも僕的には無しです』
『なんで、私が告白したみたいになっているんだ…しかも振られたし。君、結構ムカつくな。まぁー良い、私について来い職員室に行くのだろ、君の所為で遅刻だよ』
『僕の所為ですか⁉︎しかも、名前教えてもらってないし』
『なんだ、知りたいのか。篠原 京香だ。ようこそ、美空学園へ。これからもよろしく頼むよ、ナンパ君』
『誰が、ナンパ君だ‼︎』
そして、職員室に行き。初日から遅刻した為絞られてから教室へと向かったのだった
【第二章】帷 結衣という少女
僕は、転校生として篠原 京香と共に教壇に上がる。そして、淡々と簡単な紹介をされたのち名前を名乗るように言われる
『伊勢 翔太郎です。よろしくお願いします』
名を名乗った後軽く頭を下げると、彼方此方から、歓迎の意味のこもっているであろう拍手が湧いた
『それでは、君はそこの席に座れ』
篠原 京香が、空いた席に指を指す。その指された席を見ると一つだけポツンと、空いている席があった。仕方なく、指示通りにその席へと足を運び、席につくと隣の女子生徒が声をかけてきた
『始めまして、伊勢君。これからよろしくね』
『あぁーこちらこそよろしく頼むよ』
軽く会釈をして、それに応える。そして、それを見ていたであろう篠原 涼子がこちらを見て、怪しげにニヤリと微笑むと口を開いた
『あぁー因みにだ、転校生の伊勢君はだな、尻軽男なので女子生徒諸君は気を付けたまえ』
それに対して、僕は机に手を叩きつけ抗議をする
『誰が、尻軽男だ誰が⁉︎』
その反応に周りの女子生徒はヒソヒソと話し始める『嫌ね』や、『あんなイケメンなのに』、『プレイボーイ』などと聞こえてくる
おい、誰がプレイボーイだ最後の言った奴出てこい。先程までの歓迎の雰囲気は一瞬で冷徹な雰囲気と成り果てた。そして、この原因を作った張本人は、とても迷惑そうな顔をして、ギャーギャー騒ぐなと言ったとんでもない女だった。そして、チャイムが鳴り初日の大波乱なホームルームは幕を閉じた。ホームルームが終わっても、女子生徒はこちらには誰も来なかったが、バカな思春期を迎えた男達だけが、ワラワラと湧いてきた
『なぁーなぁー、伊勢君ってさどんな人落としたことあるの?』
『はぁ⁈いや、落とした事なんてないし、落そうとも思ったことも ないし』
『まぁーまぁー、そういうの良いって、遠慮しないでブチまけちゃいなよ』
そう言うと、その男子生徒はDJのような仕草を態とらしくやってくるが、とても鬱陶しいと思った
『大体、君は誰なんだ?』
『ん?俺⁈俺の、名前は木嶋 勇太っていうんだよろしくな』
これが僕と木嶋の始めての出会いだった
最初はどうなるかと思ったが、ようやくクラスの人達とそれなりに接することができるようになり、しばらく平穏が保たれていたあの女と会うまでは…
今日も何時ものように木嶋と共に帰る支度をしていると、ピンポーンパンポーンといった音が流れた後『呼び出し。伊勢 翔太郎くん今すぐに生徒会室に来て下さい』という内容の放送が流れた、その放送を聞いていた木嶋は『行ってこいよ』というと手を振ってきた、それを確認して僕は頷き、教室を後にして生徒会室へと足を運んだ
生徒会室の前に来ると、少し緊張が走ったが、軽くノックをして中へと入る
『あの〜僕呼ばれたみたいなんですが、何か用でしょうか?』
しかし、生徒会室には人影どころか人気すら無かったのだ。仕方なく、部屋を出ようとすると、目の前にまさに美少女といっても過言では無い少女が立っていた
『っお‼︎すみません、まさか人がいるなんて思わなくて』
『良いの、良いのこっちこそいきなり呼びつけちゃって御免ね。私のはね、この学園の生徒会長をしてる帷 結衣って言うのよ、よろしくね伊勢 翔太郎くん』
『はぁ〜どうも。それで、僕を呼び出したのは何故でしょうか?』
『そんなに、かしこまる必要無いよ。もっと、リラックスリラックスしなきゃ』
そう言うと、こっちに来い来いと手をやると、ソファに案内され座らされた
『えっと、帷会長…そろそろ、要件を教えていただけると嬉しいんですが?』
『だから、堅いって。とばりんとでも呼んでくれても良いよ、翔ちゃん』
『しょ…翔ちゃん⁈』
『あれ、嫌だった?なら、違うのに変えた方が良いか…』
『いえいえ、驚いただけなので変えなくても大丈夫です、はい!』
『そっか、ならこのままね。翔ちゃん♪』
僕は、目の前にいる帷会長に聞こえないように、小さな溜息をついて話を聞く態勢に入る
『それで、要件は何ですか?』
『うん、まぁーちょっと話の前にね。入って来て京香ちゃん』
『こらこら、結衣私の事は篠原先生と呼べと言っているだろ?』
『えーでも、京香ちゃんは京香ちゃんだし〜』
僕の目の前には、担任である篠原 京香と生徒会長の帷 結衣が親しげに話をしている光景が見えた
『あの、先生何故ここに?』
『ん?あぁー伊勢お前も結衣に呼ばれていたのか。まぁーまぁー良い女だろ?私には劣るがな、だからと言って狙っていいと言ってるわけではないぞ』
『しませんよ!後サラッと自分を良い女アピールするのやめて下さいよ、今朝も言いましたけど叔母さんには興味が…っちょ!ちょっとたんま、拳を振り上げないで‼︎』
そして、見事ゲンコツを頭に落とされ必死に謝ることで許しを得る事に成功した。そんな様子を、にこにこと微笑みながら帷会長は見ていた
『人も揃ったし、話に入るね。翔ちゃん私達の仲間つまり、生徒会役員になって欲しいんだよね』
『な、何故ですか⁈』
『私が知らないとでも思ってるの君の正体を?』
そう、微笑みながら言う帷 結衣と言う少女の事を俺は知っている気がするが、思い出すことが出来なかった
『僕の正体ですか?僕は僕ですよ、転校して間もない新入生ですよ』
『ふーん、誤魔化す気なんだね。それは、それでいいと思うけどね…それで、答えは?イエス?ノー?』
『すみませんが、お断りさせていただきます』
そう言った僕の反応に対して、やはり彼女は楽しそうににこにこと微笑みを浮かべていた、お礼ということでお菓子などを食べて世間話をすると、『バイバイ翔ちゃんまたね』と言って手を振っていた、それに対して僕は頭だけを下げると生徒会室を後にした
『ねぇ〜京香ちゃん。あの子どう思う?』
『どうとはなんだ?お前まさか彼を巻き込む気なのか?』
『それは、まだ考え中だけど…その前に!あの態度、あの態度は問題があるよ!京香ちゃん!』
『どうしたんだ一体?』
『あの子全然私のこと覚えてないよ、あれ!』
『あの頃は君もあの子も小さかったしな仕方ないさ』
結衣は頬を膨らませると、机に頭を伏せ『うぅ〜』と唸った
【第三章】事の始まりは、何時も忘れた頃にやってくる
生徒会室に呼ばれた次の日に木嶋に何があったのかを根掘り葉掘り聞かれたが、全て適当に返事を返して難を逃れた。特に如何わしい何かがあったわけでは無いので、話をする分には構わないのだろうが、彼女が僕の正体を知っているという言葉が頭から離れなくなってしまったため喋るのを止めたのだ。しかし、あれから生徒会室に呼ばれることはなくなったのだが、会長である帷 結衣からの視線はより多くなっていた
『なぁーいせっち最近生徒会長の視線がよくこっちに飛んでくる気がするんだけどさ、まじでなにも知らないわけ?』
最近、木嶋は僕の事をあだ名で呼ぶようになっきて、更に鬱陶しさがました気がした
『あぁー本当に知らないんだ』
『ふぅーん、ならいっか。いせっちは俺たちと仲良くすれば良いもんな』
そういうと、木嶋は僕の肩に腕を回して『わははは』と笑った。やはり、鬱陶しいがこういうところがこいつの良いところなのだろうと思い、芽生えつつあった怒りをそっと心の奥底にしまった。その時、いきなりとつもなく大きな爆発音がグラウンドから鳴り響いた、その爆風と振動で校舎のガラスは粉々に割れその破片は窓の近くにいた生徒達に突き刺さり、一瞬のうちに教室は血の海へと成り果て、爆発があったであろうグラウンドからは沢山の人間の悲鳴が上がった
『な、なにがどうなっているんだ…』
『どうなっているかって?そんなの決まっているじゃないか、政府による増え過ぎた危険因子の削減作業さ』
『っは?何を言ってるんだよ木嶋!』
『何って、同じこと言わせないでよ。いせっち』
『何が、危険因子の削減作業だ‼︎こんなのただの人殺しじゃないか‼︎』
『豚が豚小屋に入れられるのは当たり前のことだよ。いせっち 』
『そんなの、納得行くわけないだろ!?教師は、教師は一体何をやってるんだよ』
『教師も政府と一緒になって作業の手伝いをしているんだよ』
『生徒だろ…自分達の生徒を殺してるって言うのか?』
『殺している?違うよ、いせっち 削減作業だ』
『お前達は狂っている!何が、作業だ!同じ人間だろ!』
『異能を持ってしまったものは人間じゃないよ、いせっち。他の人達と異なってしまった時点で僕達は、【化物】なんだ』
そう言う 木嶋の表情は何時もの嬉々とした表情ではなく、この現実を諦めて受け入れようとする表情をしている
『僕達は【化物】なのか?』
『そうだよ、いせっち。俺達はもう【化物】なんだよ。この事実は変わらないんだ』
木嶋がそう言い放つと、廊下の方から誰かがやってくるのに気がつきすぐさま姿勢を低くして机の影に逃げ込んだ。しかし、廊下の方から現れたのは生徒会長である帷 結衣であった
『どう翔ちゃん。これが、この学園いや、この社会のあり方だよ』
『どうって…これがルールなら受けいるしか…』
『本当にそう思ってる?よく聞いてみなよ翔ちゃん。こんなに沢山の悲鳴が上がっているんだよ。それにも関わらず君はこの現状を受け入れるというの?』
『そんなの、僕には決められないよ…』
『逃げるの、翔ちゃん?』
僕と帷 結衣とのやりとりの間何人が死んだのだろうか。教室にいたはずの生徒は、騒動が始まってすぐに扉に向ってかけだした。しかし、全員が全員出られたわけでは無かった
足をもつれさせた者は沢山の人間に踏まれてしまい絶命してしまった。その中に、僕の隣の席にいた女子生徒も含まれていた。手足は本来の向きとは真逆の方へ曲がってしまったりしていた
『本当に酷いよね、一緒に過ごしてきたであろうクラスメイトを無残にも踏みつけて生き残ろうとする者達の姿はとても醜いよね。翔ちゃんはどう思う?』
そう語る帷 結衣の言葉を聞いてふと思う。僕は…僕はなんで、こんな現場に立っているにも関わらず平気なのだろうか、教室に漂う匂いは生臭い血の匂いが漂っている。今すぐにでも逃げ出したい筈なのに逃げ様にも、身体が動かなかった
『逃げちゃダメだよ、翔ちゃん君は答えを出さなければならないの。この社会で、政府の言いなりになるのか。それとも、私達と共に【革命】を起こすのか?』
『【革命】?』
『そうだよ、翔ちゃん。私達は政府を倒して【革命】を起こすの』
その言葉を聞いて、先程まで大人しくしていた筈の木嶋が騒ぎ立てた
『な、なにが【革命】だ!そんなの出来るわけがないんだ!ダメだよ、いせっち君はこっち側に残って、また始まるであろう平和な生活を続けよう?』
『翔ちゃん、こんな社会で本当の平和な生活が送る事が出来ると思う?黙ってちゃダメだよ、君は答えを出さなければならないんだから。ほら、どっちにするの?』
『ぼ…僕は、こんな社会は間違っていると思う。だから、僕はこの社会に【革命】を起こしてみせる!』
『よく言った、その息だよ翔ちゃん!そうだね、私達と一緒にこの社会に【革命】を起こそう』
しかし、その答えを聞いた木嶋は、身体を強張らせており、機から見ても肩が震えているのがわかった
『なんで…なんで、なんで!なんで‼︎なんでなんだ‼︎ここにいれば、ちゃんとした生活は送れる様になるんだ。今回の処理されるべき【化物】を処理した後はちゃんと校舎だって綺麗になるし、減った分の【化物】は補充されるんだよ…』
『木嶋…お前自分が何を言っているのかわかっているのか?』
『だから…俺は…俺は、オレは俺達はなんで殺されているんだよ…何もしてないのに…あいつも、あいつもあそこの奴も何もしてないんだ…なんで殺されて…なぁ〜いせっち…俺は、いや俺達は一体なんなんだ?人間なんだよな?そうだ…ロ?』
しかし、木嶋が最後の言葉を発しようとした言葉は飛んで来た一発の銃弾によって遮られた。木嶋 勇太は、僕と帷 結衣の目の前で脳天を貫かれその場に倒れ死亡した
『木嶋…木嶋!なんで、なんで…何でなんだよ畜生!』
自分の服が死んでしまった木嶋の血で汚れるがそんなものは無視して、木嶋を抱き寄せる
そして、そんな僕の姿を帷 結衣は悲しそうな顔をして見つめていた
その後小一時間経った後、キンコーンカンコーンというチャイムが流れた後、『処理作業は無事終了しました』という放送が流れ今回処理された【化物】の数を400体と発表した。
一体、どれだけの血が流れたのかと思うと胸の内が熱くなるを感じて悔しさと後悔で一杯になった
【第四章】革命への一歩
あれから、数日が経過した。心の底にはまだ、クラスメイトが死んでしまった悲しみで一杯だった。木嶋が行っていた様に、処理作業が終わった次の日から、新たに多くの【化物】達がこの学園へと入ってきた
『また、同じ様なことが起こるのでしょうか?』
そんな僕の問いに、隣に並んでいる帷 結衣は『起こるよ』と小さな声で応えた
『これからどうしたら良いんでしょうか?』
『翔ちゃんは、どうするのか決めたでしょ。私達にはもう、【革命】を起こすしか道が無いんだよ』
『…【革命】ですか。本当にそんなことが出来るんでしょうか?』
『いい翔ちゃん?人っていうのはね、動く時は必ず理由があるんだよ。私達の場合はもう、【革命】を起こすと決めた時点で、そこに目標を置かなければならないの。だから、翔ちゃんも、ちゃんと決めたなら、もう前に進むしかないのよ』
そういうものなのだろうかと、頭を捻らせ考えていると、後で生徒会室に来る様にと伝えられ、帷会長は新たにここへ来てしまったモノ達に挨拶をしに行ってしまった。
挨拶の内容はごく普通のもので、この学園の魅力などを語りどの様な部活動があるのかなどといった事をスラスラと台本もなしに多くのモノ達の視線をもらいながら語るが、あの事については一切語らなかった。僕は、言われた通りに、生徒会室へと足を運びノックをして中へと入るとそこには、帷 結衣と篠原 京香がいた
『な、なんで、先生がいるんですか?』
『なんだ、私がいると何か困るのか?』
そう、不思議そうな顔をしている篠原に対して僕は、敵対心を抱いた
『なんで、あんなことをしたんですか⁈』
『あんな事とはなんだ?いきなりどうしたんだ君は?何処か可笑しいじゃないか?』
『可笑しいのあなた方教師だ!何故、自分達の生徒を殺した!』
『そのことか…奴らの間では、化物共の処理作業という風になっている』
『奴ら?奴らってのは政府のことを言っているんですか?』
『それもあるが、その政府に服従しているもの達のこともさしている』
『自分もその一人だと自覚しているのですか?』
『翔ちゃん違うの、それはね…』
しかし、帷 結衣の言葉を篠原 京香は制止した
『そうだと言ったら君はどうする?私にナイフでも突き刺すか?』
そう言うと、どこから出したのか一本のナイフを床に突き刺した
『さぁー選べ少年君はどうする、私をそのナイフで刺し殺すか、私を信じるかをだ』
『僕は…』
『なにをぼさっとしている‼︎私は【化物】を処理した者の一人かもしれないんだぞ!刺すなら刺せ、早く!』
僕は、床に突き刺さっているナイフを抜くと篠原に向って刃を向け駆け出し、そのナイフを篠原の後ろの壁に突き刺した
『僕は、今はあなたを信じます…でも、もし本当に殺していたのがわかったら、あなたを今度は本当に刺します。それでもいいですか?』
『良いだろう、好きにすると良い』
僕と篠原 京香のやりとりを見ていた帷 結衣の顔は何も無かったことに安堵している様に見えた
『翔ちゃんも、京香ちゃんもやり過ぎだから。ビックリしちゃったよ』
『結衣、これで取り敢えずこの子のテストは終了だ。これだけの強い思いがあるのならば力になるだろう』
『そうだね。翔ちゃん、ちょっと私について来てくれるかな?』
その問いに、軽く頷き帷 結衣の後をついて行くと、生徒会室の奥に地下へと向かう階段があった
『さぁーついておいで仲間を紹介するよ』
そう言われ、帷 結衣について行くと一つの大きな部屋には僕と帷 結衣の他に4人もの人達がいた。僕と帷 結衣が入ってきたことに気がついた5人はこちらへとやって来た
『紹介するよ、翔ちゃんこの人が私の側近つまり、副会長だね。名前は夏樹 昴くん頼りになる人だよ』
『どうも』と声を掛けると、それに気付いた夏樹 昴は手を差し伸べてきた為その手を掴むと力一杯に握られた
『ここは餓鬼が来るところじゃないんだよ、帰りな』
『何?!』
『聞こえた無かったのか?餓鬼は帰れって言ったんだよ』
『なんだと‼︎』
そんな二人の間に入ってきた一人の男子生徒は夏樹 昴を手で追いやった
『ダメですよ、こんなところで喧嘩をしては、それよりもいつ見てもお美しいですね結衣様』
『ありがとう、片桐くん。翔ちゃんこの人は片桐 聖夜くん』
『どうも…』
『昴さんにいきなり喧嘩を仕掛けるなんて凄い度胸ですが、力量を測れない子は早死にしてしまいますよ気を付けてくださいね』
『はぁ?…わかりました』
聖夜を除けて、女子生徒がこちらにやってきた
『もう、昴くんも聖夜くんも怖がらせちゃダメじゃない。私は、鈴峰 優香よろしくね』
『よろしくお願いします』
『ちょっと、気が難し子が多いとこだけど仲良くやろうね』
『よろしくするのはこっちじゃないか…無能だと困るんだがな…』
しかし、優香の言葉に昴は茶々を入れる
『昴!そんなこと言ったらダメだと言ってるでしょ』
『わかった、わかったよ。だから、そんなギャーギャー騒ぐなうるさいから』
そして、最後の1人を見ると知っている顔な気がしたが、それは向こうもそうなのかこちらに駆け寄って来た
『あぁー君!あの時の失礼な子!』
『えーと、あの時の人ですよね』
『『っえ?っえなに、なに二人とも知り合いなの?』』と帷 結衣と鈴峰 優香が聞いてきた
『まぁー知っていると言うか、なんと言うか…』
『私この子に、下着を見られて…』
そう言う彼女の顔は真っ赤になっていた
『ほーほー、やるじゃないの翔ちゃん。そんな女たらしなのかい君は?』
『違いますよ、その件だってぶつかった時にたまたまですし…』
しかし、帷 結衣はニヤニヤしたまま、僕の目の前にいる顔を赤くした女子生徒を見ていた
『この子の名前はね、双葉 凛子ちゃん漢字は違うけど林檎みたいに赤くなるのが可愛いの』
『はぁ〜どうも』
『……私、あなた嫌です』
『えー!なんでですか?』
『絶対名前聞いてバカにしましたよね!私わかるんですから』
『してませんてば!』
『本当ですか?』
『本当ですってば!』
そんなやり取りを何度も繰り返していると、昴が机に拳を叩きつけた
『良い加減にしろ!話が進まないじゃないか!』
皆が落ち着いたところで、帷 結衣は話を始めた
『えーとりあえず、皆に紹介しとくね。伊勢 翔太郎くんです。仲良くしてあげてね教育係は凛子ちゃんお願いね』
その発言に双葉 凛子は驚いた顔をしていた
『な、なんで私なんですか!優香さんや、昴くんでもいいじゃないですか⁈』
『私はそれでもいいけど、顔見知りと言うことで凛子ちゃんで良いと思うな』
『何故、俺がこんな餓鬼の子守なんてやらなければならないんだ。力の無い奴は野垂れ死にすれば良いんだ』
『あれ、何故私の名前が凛子さんの口から飛び出さなかったのか、いささか疑問ですが私も賛成です』
そんな3人の言葉を聞いて、双葉 凛子は肩を落とした。そして、会議をするということで、僕と双葉 凛子は追い出されてしまった
『あの、翔太郎くんでしたよね…とりあえず、施設の案内をしますついて来て下さい』
『わかりました。ここってそんなに色々な施設があるんですか?』
『ありますよ、あなたが気に入るかはわかりませんがね』
施設の案内はかなり簡潔に行われた、トイレがどこにあるのかや自販機がどこにあるのかなどだ一番驚いたのはトレーニングルームで、温水プールが完備されていることには度肝を抜かれた。 仕組みはよく分からないが、帷 結衣によって設置されたのだそうだ。彼女は一体何者なのかが気になった
『伊勢 翔太郎くんわからないことがあれば聞いて下さい』と、凛子が言うが、特に無いのでこの現状に関しての質問をすることにした
『あの、凛子さん?』
『なんですか、翔太郎くん?』
『凛子さんはこの社会をどう思っていますか?』
『どう思っているか…ですか。私はこの社会は何もかも壊れてしまっていると思いますね。私ね、この学園で親友って呼べるほど仲が良かった子がいてね…本当にずっと一緒だったの中には姉妹みたいって言われたほどでね。でもある時、奴らによって私の親友は殺された。本当一瞬だったよ、窓から飛んで来た手榴弾に当たってね。私もその時一緒にいたんだけどその子に突き飛ばされたおかげで助かったの。目を瞑っただけでも、あの時の光景が思い浮かぶの…熱によって溶けて爛れた皮膚。最後には人としての原型なんて残っていなかったわ。そして、自分の置かれている現実を知って私は復讐するためにここにいるのかもしれないそう思うとやってられなくなる。助けたい人はたくさんいるのに、毎回毎回多くの人が死んでしまう。自分が無力なんだなって思うとねすごく辛いの…御免ね話が長くなっちゃった』
その話を聞いて僕は沢山の涙を流していることに気がついた
『凛子さんはすごいですよ、全然無力なんかじゃない…今だってこうして、その親友のために戦おうとしているじゃないですか。僕が同じ立場なら凛子さんと同じ歩み方は出来ないと思います』
そして、再度凛子の顔を見ると凛子は目元を赤くして泣いていた
『ごめん、少しだけ肩を貸してね』
そう言って、双葉 凛子は嗚咽を溢して泣いた
双葉 凛子と共に帰ると、帷 結衣が立っていた
『翔ちゃん、会議終わったから少し良いかな?』
そう言われ、僕は軽く頷いて双葉 凛子と別れ帷 結衣の後を追いかけた
『翔ちゃん、君歴史は好き?』
『嫌いではないです』
『そっか、政府がどんな政策をしたかとかも分かるかな?』
『それは、はい。知ってます』
彼女について行くと『資料室』と書かれた部屋の前まで来ていた。鍵を開けて中へと入って行くと沢山の本棚と共に銃器の様なものが飾られていた
『ここは…?』
『資料室だよ。主に私達のことが書かれているものや、私達を確実に殺すための武器のね』
『そんなものまで…どうやって集めたんですか?』
『それはね、政府が秘密裏に行ってきた人体実験だよ。そのために多くの仲間達が捕まったりもしたんだよ。その中にはね私の姉も入っていたの』
『帷会長のお姉さんですか?』
『そう、帷 美智瑠。それが私の姉の名前だよ』
『その…お姉さんは?』
『翔ちゃん。痛いところグイグイくるな…』
そう言って、帷 結衣は苦笑した
『すいません…』
『まぁー良いけどね。死んだよ…人としての原型もまともに保っていなかった。唯一顔だけは特に維持られるところが少ない所為か綺麗なままだった』
『帷会長は政府を恨んでますか?』
『もちろん、憎んでるよ。殺したいほどに』
そう彼女は微笑みながら言う。僕はそんな彼女を見て恐怖した。僕は帷 結衣という人間持つ闇についてなにも知らなかったことに気付いた
【第五章】嘘だらけの日常
僕と帷 結衣の前で死んだ木嶋 勇太が言っていた平和な日常というのが帰ってきた。そして、あの酷い惨劇がまるで無かった様な日常を僕達は送っていた
『木嶋…お前が言ってた通り平和日常がやってきたよ』と誰も居なくなってしまった教室で一人吐息共に言葉を溢し手に持っていたスマートフォンをいじる。そして、電話帳という欄を見つけ何となくタッチして開き適当にスライドして行くと『木嶋 勇太』の名を見つけその名をタッチしコールボタンを押してスマートフォンを耳に当てるとprprprと呼び出し音が鳴った。その後に機械的なメッセージが流れツーツーと通話が切れる。ピタッとスマートフォンの画面に雫が落ちる一粒また一粒と雫が落ち真っ暗になってしまった画面に映る自分が涙を流していることに気が付く
『っは…ははは。なんで僕泣いているんだろ。なんで…』
すると、扉を叩くする音が聞こえた。多分帷 結衣だろうと思い少し投げやりに『どうぞ』と扉の向こうの人に向って言葉を投げかけると、ガラガラと扉を開けて入って来たのは双葉 凛子だった
『凛子さん…どうしたんですか?』
『う、うん…結衣ちゃんが君が来ないって騒いでたから探しに来たの』
『ピンポイントで此処だってわかったのは凄いですね』
『う、うん。まぁーね』
そう言うと、照れ隠しをするかの様に笑って何かを隠そうとした
『わかりました。すぐ行くので先に行って下さい』
『そういえば…此処って?』
『ここですか?ここは前の僕のクラスです』
『っえ…っあ、なんか御免ね』
『いえ…別に気にしていないので』
目線を凛子から手元のスマートフォンに目を落とすと5件の着信履歴と20件程のメールが届いていた。宛名はついて無かったが『早く来い』という文章の最後にしっかりと帷 結衣の名前があった
『凛子さん早く行きましょう。帷会長を怒らせると怖そうです』と乾いた笑いを零しながら席を立ち教室を出ると、凛子も『そうだね』とだけ言って教室を出る。誰も居なくなった教室には今度こそ本当に人は居なくなってしまったのだった。
凛子と2人で帷の元へと向かうと第一声はこんな小さな体のどこからそんな声が出るのかと思うような大きな声で『遅い‼︎』と言われた
『もう、なにやってたの翔ちゃん!』
『別になにやってようと関係ないでしょう』
『関係ありますよーだ。これから大事な作戦を考えようとしているんだからいてくれなきゃダメなの?後何やってたのかを教えてくれないと私が寂しい』
『はいはい』と適当に返事を返すと、腕組みをしている夏樹 昴はが『どうせ一人でエロ本でも読んでいたんだろ』というその言葉に三人の人間が反応した
『おーう。翔太郎くんは一体どんな娘が好きなんですか?』と片桐 聖夜が聞いて来るがとりあえず無視をする。そしてもう二人は女子のくせにその言葉に反応してしまう様なかわいそうな奴らだ『なになに、翔くんはどんな子が好きなの?可愛い系キレイ系?』『翔ちゃんはやっぱり身体かな胸大きい子とか好きそうだよね。私まぁまぁ大きいよ』鈴峰 優香と帷 結衣だ。鈴峰 優香には『翔くん』と呼ばれるようになった。それはさておき、最後の一人である双葉 凛子はやはり顔を真っ赤にしている。本当に熟れた林檎みたいだなぁ~と思った。
おふざけが終了すると、本題に入ろうと帷 結衣が言った
『えーでは…話をしよう。では京香ちゃんよろしく♪』
『結衣!いきなり人に役割をぶん投げるな‼︎では、諸君内容に入らせてもらう。今回の私達の計画は次また来るであろ政府の削減作業の阻止だ』
『そんな事が現実的にあり得るのか?』と夏樹 昴は篠原 京香に問うと、その返事を返したのは帷 結衣だった
『理論上でいうならば厳しいけど出来なくはないといったところかな』
『ほう、何故?』
『うん、その話を今からするのだから、大人しく席に着席しててね』
そう言われ、夏樹 昴は椅子座り直した。その光景を少し僕は驚いて見ていた
『やっぱり、私が話した方が早いね。政府に次の行動をさせない方法としては一つは敵陣に乗り込んで内部からの破壊そして、二つ目が私達だけの独立活動をして、政府が手を出し辛くさせる三つ目が政府そのものを乗っ取る。なんてね』と帷 結衣は何時もの様にニヤリと笑うが、『最後のは冗談ですか?』と僕が聞くと帷 結衣は『本気だよ』と先程の笑みを消して答えた。そのまま会議は終わり暇つぶしをしようと思い席を立つと帷 結衣に生徒会室に来る様に言われ、大人しく頷き生徒会室へと向かいドアをノックして中へと入る。帷 結衣ではなく、しかしそこに居たのは篠原 京香だった
『先生何やってるんですか?』
『まだ私のことは先生なんて呼んでくれるんだな…お前への要件は一つだ。力を使え』
『嫌ですよ、何故僕が力を使わないといけないんですか?僕の力なんて対したことのない力です』
『なら…無理矢理にでもその力を引き出させてやる』
そういうと、京香は拳をこちらに向って殴りかかる。それをギリギリで避けると京香のパンチは僕の後ろにあった壁へとあたり壁には蜘蛛の巣の状のヒビが入った
『っな!なんだこれ…』
『驚いたか?これが私の力だ。筋力強化による体の鋼鉄化を可能とするんだ。当たれば骨折では済まないぞ』
パンチ、パンチ、蹴り、パンチ、蹴りを篠原 京香は繰り出してくる。鋼鉄化されたそれらをガードする訳にはいかないため紙一重でそれらを避ける
『やるじゃないか。だが、それも時間の内ださっさと力を使え!』
『嫌だ…僕は力は使わない』
『頑固者めが!なら、ここで朽ち果てろこのままではお前は足手まといだ!』
そういい、蹴りを放つがそれは空を切る『当たらなければそんなもの怖くもない』しかし、それを聞いた京香はニヤリと笑うと身体を捻じり2撃目の蹴りを放った『回し蹴り?!』僕は驚き咄嗟にガードをしようとしたがそのまま壁と叩き込まれた。立ち上がろうにも全身に痛みが走り上手く立ち上がることが出来ない
『っ…ぐ。ゴホゴホ』
『これまでのようだな。力を使え伊勢 翔太郎!』
『い、嫌だ…』
『なら…終わりだ』
そういうと、篠原 京香は踵を振り下ろしたがそれは、伊勢 翔太郎に当たることは無かった
代わりに見えない壁の様なものに防がれたのだった
『それまでだ、篠原先生。この餓鬼にはなんの期待もしていないが人手不足なんでねいなくなっては困るんだよ』
『夏樹そこをどけ戦う意思の無い奴はいらないだろ』
『まぁー全くその通りなんだが双葉の奴がうるさくてな。そういうわけにもいかないんだよ』
『仕方ない…今回はお前と双葉に免じて許しやろう。伊勢 翔太郎を使えるようにしておけ夏樹 昴』
『わかりました』
そして僕は薄っすらした意識の中その会話聞きそのまま気を失った。深い深い眠りについていた
『約束守ってくれているんだ』とそんな声が聞こえる。何処かで聞いたことのある声に驚く
『君は…誰なんだ?』
『それを今聞くんだね。でも、いつかきっと私が何者でなんて名前なのかわかる日が来るよ』
『今じゃダメなのか?』
『うん。いろんな事を知って受け入れるには今の君にはまだ早いから』
『それってどういこと…』
そこで、意識が戻った。頭の下に柔らかいものがあることに気が付きその柔らかいものを手で触って確認する。肌触りはツルツルとしており押すとモチモチしておりとても気持ちいいと思った矢先に自分の上から『はぁ〜はぁ〜』吐息が漏れていることがわかり『ん?』と唸ってから上を見るとそこには顔を真っ赤にさせた双葉 凛子がおり、やっと自分がどんな状態で何をしていたのかに気付いた。
『えーと…おはようございます』と何を言えば良いのか分からなかったため、取り敢えず挨拶をしたが凛子は顔を真っ赤にしたまま俯いていた。正直怒っているのか恥ずかしがっているのかすらわからない
『しょ…翔太郎くん。お…おはようございます。か、体の方は大丈夫でしゅか⁉︎』
『は、はい。お陰様で元気になりました‼︎』
そして、勢い良く動かした手が凛子の太ももに再度触れ、それに驚いた凛子が『っひゃ⁉︎』と声を出し。それに驚いた僕は凛子の慌てて動こうとしてつい仰向けになってしまい唇が太ももに当たってしまい、部屋には今まで聞いたことも無い様な凛子の叫び声が上がった
『翔太郎くんは全くも…本当に変態さんなんですから』
『すいません…本当にすいません』
確かにさっきのは7割8割がたは僕の所為だろう。しかも、あの後一発だけ平手をもらってしまい今だに赤くなった頬を僕は抑えて歩く
『あ、あんなこと…他の子にしたらダメですよ。私は今回だけ許してあげますから』
許してくれると言うなら叩かないで欲しかったなと思いながら謝罪の言葉を凛子に投げかける。そして、呼び出しのかかった生徒会室に入ると生徒会メンバーが揃っていた
『っあ、おかえり翔ちゃん。それ…で話なんだけど…その前にその痕は何かな?』
そう言うと、顔を真っ赤にさせた凛子を見てニヤリと笑う。そして他のメンバーも面白いものを見たといった表情でニヤリと笑っていた。流石に夏樹 昴だけは態とらしく溜息を吐いて小馬鹿にしていた
『まぁーその話は後で教えてもらうとして…内容に入ろうか』
どの道聞くのかよと思い肩を落として落ち込む
『取り敢えず。敵陣に殴り込む方向で行くから』と元気いっぱいに拳掲げて帷 結衣は宣言した。何故そんなことを元気いっぱい言えるのか不思議で仕方が無い。この人のことはやっぱり全然わからない
『全員で行くんですか?』という僕の質問は夏樹 昴によって阻まれる
『全員な訳ないだろ、バカか。それにまずお前が戦えないだろ』
『そんなことは…』
『嘘を付くな。力を使って戦う意思の無い奴は正直足手まといなんだよ。そんな奴は居てもいなくても同じだ!』
そう言う昴の目は本気の目をしており、この作戦に対しそれなりの覚悟を決めたであろうことは容易であった。しかし、そんな昴の言葉に噛み付いた者がいた…双葉 凛子だ
『そ、そんな言い方はないと思います。彼だってそれなりには戦えます』
『それなりだと…そんなんじゃダメなんだよ俺達は命を賭けているんだ!そんな遠足気分の奴がいたら邪魔なんだよ』
『わ、私は翔太郎くんならやってくれると思っています』
そう言い放つ凛子の目は真っ直ぐ昴に向けられており昴は気圧され、更に声を張り上げる
『そう言うなら、やってみろよ!言ってるだけじゃ意味が無いんだよ‼︎』
しかし、そんな二人の間に帷 結衣が割って入る
『夏樹くんはそんなカリカリしないの。カリカリ焼くのはベーコンだけで良いよ。それにりんごちゃんまで熱くなっちゃってりんごちゃんは怒ってる時よりも笑っている時の方が魅力的なんだから。因みに後で話あるから翔ちゃんは後で私とお話しね』とだけ、告げると部屋から出て行ってしまい。夏樹 昴と双葉 凛子は鈴峰 優香にげんこつをもらっていた部屋に響いたゴチン!という音を聞き痛そうだなと思っていると優香の矢先はこちらにも向いた
『翔くん…何をぼさっとしているの早く結衣の機嫌直しに行って来なさい‼︎』
『は、はい‼︎』と、返事をして生徒会室を後にした。そんな翔太郎を双葉 凛子は頭を押さえながら見ていた『やっぱり…翔太郎くんは結衣ちゃんのことが好きなのかな…』消え入りそうな声で呟いた。勢い良く生徒会室から出た翔太郎はどこに行けば良いのかわからず困り果てていた
『行って来いって言われたけど…どこに行けば良いんだよ』そう呟いて肩を落としていると、あの惨劇以降に入ったであろう新顔の子が『どうしたの?』と声をかけてくる。素直に『生徒会長を探している』事を話すと『上に行ったよ』と天井を指差した。僕は『ありがとう』とお礼をしてから、急いで上に向かった。この校舎は5階建てなだけはあり屋上まで行くのにはかなり時間がかかってしまった。そして、外へと出る扉が開いておりそっと開けて外へ出る。そこには、夕日に佇む少女が一人立っていた
『会長迎えに来ましたよ』と、声をかけると彼女はこちらに振り向きいつも通りニッコリと笑う
『な〜んだ、もう見つかっちゃったんだ。あまりにも早いお迎えが来たのに驚いたよ』というがそんなのは微塵も思ってないであろう事は何と無くわかる
『そりゃ急いで探しますよ。会長が居ないと話進まないですし』
『ねぇ〜翔ちゃん。翔ちゃんは私達が政府の本拠地を狙って壊滅まで追い込めると思う?』
彼女は不安そうに僕へ問いかける。そんな彼女が珍しくてつい笑ってしまう
『ふふふ、会長でも不安になることがあるんですね』
『あーひっどーい。私は本気で聞いたのに〜‼︎』
『正直な話会長はどう思ってるんですか?』
『出来るって思ってなかったらこんなこと言い出さないよ』と、言うが僕にはその言葉が自分にその筈だ、と言い聞かせている様に聞こえた
『なら…頑張らなきゃ駄目ですね』
『そうだね。なら先ずは君の戦力入りを果たさなきゃね』と言うと、彼女は思いっきり僕の背中に手の平を叩きつけ、ッパン!という音が屋上に鳴り響いた
【エピローグ】
今日も僕達は乗り込むための作戦会議を始めようとしたが、急いで会議室に入ってきた鈴峰 優香が声を張り上げた
『み、みんな大変なの!早くニュースつけて‼︎』
そう言われ、夏樹 昴が急いでリモコンを掴みテレビの電源を入れてニュース番組へと局を合わせると、そこに映っていた男が大きな声で演説を繰り返している最中だった
『我々、日本政府はこの度危険因子である能力を覚えたもの達の捕獲もしくは討伐することをここに誓おう。我が安藤 重信の何かけて』と、高らかに宣言する男を周りのもの達は沢山の拍手を安藤 重信へと送っていた
『な…なにを考えてるんだこいつらは‼︎』
叫び上げそして、夏樹 昴が机に思いっきり手を叩きつけた。しかし、それに反して帷 結衣は静かな顔をしてニュースの続きを見ていた
中継の中で安藤 重信はさっきので行けると踏んだのか高らかに次々と異端者(僕達)を殺すための提案を述べていく。そしてそんな様子を見ていた帷 結衣は鼻で笑った
『っふふ、この人対したこと無いね。寧ろおバカかな。あれだけ秘密裏にしていたであろう政府の秘密を一つぶちまけた様なものだね。私達の存在は日本いや、世界でも認知されているだけど、政府はそんな私達を一つに集める事で昔あった大きな事件の再発を防ごうとしていたわけだね。でも、ここに映っているバカが今暴露して、それを周りは賛同してしまった。つまり、そういうことだよね。取り敢えずなにも知らないで入って来た子達が暴れ出すかもね。良し取り敢えず現状を見に行こう!』そう言って席を外そうした時にテレビに映っている安藤 重信が最後にと言って話を始める
『皆さん安心してください。もし異端者共が暴れたとしても私達はそれを防ぐ方法があります。そう!この【M T Pシステム】があれば怖いもの無しなのです‼︎』と、言った後多くの人間から今日一番の拍手が送られた。
そして、それを聞いた一人の少女が体を強張らせた
『M T Pシステムですって…。みんな、予定変更だよ…まずは…この男を殺す‼︎』
そう言い放つ、帷 結衣は怒気を含んだ顔をしていた
御愛読ありがとうございます
読んでくれた人の中には何と無くこの先の展開みたいなのがわかってしまっている人がいるかもしれませんが、安心してくださいあなたの思い通りにはならない展開を考えます。
取り敢えず私から言わせて頂く言葉は感謝の言葉しかありません
本当にありがとうございました
2話は頑張って12月後半には書き終えるつもりです。これからもお願いします( ̄^ ̄)ゞ