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荒城都市セリアンナ

更新不定期ですが、早めに更新したいと思っております。どうぞよろしくお願いします。

 

 赤髪の少年、レナスは今日も資金集めに奔走していた。

 荒廃しきったセリアンナの町並み。

 その中でもさらにひどい、悪臭が漂うゴミ置き場に彼はいた。

 彼の目線の先には、ちいさな影。

 レナスは、右手に握る小さなダガーで魔獣と化したネズミを相手に対峙していた。

 その魔獣、大きさもネズミのそれと同じくらいで強そうには見えない。

 

 目は赤く、暴走状態にあるかのように全身の毛を逆立てレナスへと真正面から襲い掛かる。

 見た目通りの強さだったのか、すれ違い様、レナスが持つ右手のダガーが煌くとネズミの魔獣は、いとも簡単に地面に倒れ伏してしまった。

 

 その直後、倒れたネズミの魔獣からは魔素が飛散し、そこにはただのネズミと数枚の金貨、銀貨、銅貨が残された。

 その様子に驚いた仕草も見せず、手馴れた手付きで硬貨を広いあげ、腰に備えられたポーチへといれてゆく。

 

 「よし!」


 満足げな表情を見せた彼はその場を後にし、セリアンナの町中へと進んでいった。



 

 ロストニア国、最南部に位置したセリアンナは、かつて“要塞都市セリアンナ”と呼ばれていた。

 周囲に住む強大な魔物に対抗するために築かれた堅牢な壁は、一切の魔物の侵入を許さず、その中央に聳え立つ白く美しい城を人々は、平和の象徴だと嬉々として語った。

 

 だが、二十年前、その堅牢な壁は人の手によって破壊された。


 ロストニアの南部に位置するルミア国との戦争だった。

 数万単位の両軍の激突。

 戦争は長期化すると誰もが予想した。


 しかし、戦争は一年の時を経たずして終戦した。

 その原因は戦争の決戦地となったセリアンナにあった。

 

 セリアンナには尋常ではない強さの魔物が存在していたからだ。

 敵軍との戦闘から戻り、体を休め、また敵軍と戦う。

 それが常の戦争での軍人の戦い方。

 だが、セリアンナではそれが通用しなかったのだ。

 

 敵軍との戦闘から戻ると、体を休める事なく今度は魔物と戦う。

 両軍ともに二者を相手に戦っていた。

 それゆえに疲弊の速度は尋常ではなかった。

 そして、疲弊しきった両軍はついに戦闘を停止した。

 

 人同士で争う余裕がなくなったからだ。

 両軍ともに魔物を駆逐しながら、セリアンナから軍を引いていった。

 ロストニア国はセリアンナを放棄し、またルミア国は放置した。


 かくして、堅牢な壁を失ったセリアンナの町は強力な魔物と遭遇する危険地帯の一部となったのである。

 

 そうして、現在。

 セリアンナの町は周辺諸国から逃げ延びてきたならず者達の巣窟と化している。

 町は荒廃し、白く美しかった城は見る影もない。

 セリアンナは現在、人々の間でこう呼ばれている。

 

 “荒城都市セリアンナ”と…


 

 

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