二人が始めて重なるその時
この話には筆者のこんな親だったら嫌だなというのが多少出ています。
それは話を重くしているので苦手な方はご注意ください。
…あと今回の話を追加するに当たってR-15タグを追加しました。
具体的なナニは書いていませんが、一応行為に至っているので。
アナログデザインという事であえてチョイスした黒電話型の固定電話。
チリリンという電子音を立てるそれを七が取って、しばらく何事か話し込む。
そして、チンという音を立てて受話器を置いてから千代に言った。
「千代ちゃん。来週の定休日前後を店をお休みにして、私の実家に来てほしいの」
七の言葉に、眼をパチパチと瞬かせてから、こっくりと首を傾げて。
忙しく耳をパタパタと動かして。
尻尾をゆさゆさ揺らしてから声を出した。
「じ、実家で挨拶はちょっと早くないですか!?」
じっくり溜めた声を放つ千代に、七はとつとつと語る。
「お見合いを蹴ったなら蹴ったなりに、その理由を見せなさいと言われたの。千代ちゃんが嫌なら私1人で行くわ」
こんな言い方をされると、千代は嫌とは言えない。
だって、責められるかも知れない状況に大好きな人を一人で放り込むなんて、彼女には出来ないからだ。
「解りました。ご一緒します。七さんがどんな酷い事を言われても、私が守りますから!」
「あ、うん……そんな酷い事にはならないと思うけど、よろしくね千代ちゃん」
「はい!」
こうして、七と千代は七の実家へと向かうことになった。
七の実家は美慰栖都の、いまだ自然が多く残る、所謂都内の旧家が集まると言われる善獣町にあるらしい。
同じ都内なので車で移動すれば2時間は掛からない場所だが、その周辺には多くの美慰栖都成立以前からの旧家が集まる住宅地だ。
そんな場所であるので、今日の千代は少し、いやかなり緊張していた。
シートと背中の間でぶわりと尻尾を膨らませて、口元は引き締めすぎようとして牙が覗いている。
千代の過度の緊張を取り除こうと、七は千代の太ももに手を置いて語りかける。
「大丈夫。うちは古い家って言ってもそんなに格式ばった家柄じゃないし。千代ちゃんなら大丈夫」
「そ、そうは言っても……」
気弱そうに言う千代の格好はグレーのスラックスに、紺色のシャツ、そして銀の布地に折鶴の模様の入ったネクタイを締めて、背広を着たフォーマルな姿だ。
男性的な正装だが、問題ない。
千代がお婿さん役なのだとでも言えば通る問題だ。
ただ、七がただの実家への帰省だからか、非常に気楽な、ホットパンツにハイビスカス柄のアロハという格好なのだ。
実は千代の緊張の半分くらいは、七さんこんな格好で帰って怒られないのかな、という気持ちが大きい。
「大丈夫。あの家の人達は私がどんな格好をしていても気にしないから」
「は、はぁ……」
なんとなく、重い空気を纏いながらも、車は善獣町の一軒一軒の門構えが大きい邸宅の並ぶ道を進んでいった。
そして目印の赤い旗を持つ、黒い作務衣を着込んだ虎族の男性が立っていたガレージに車を入れる。
そのガレージは広く、車が5台ほど止まっていて、更に7台分ほどの空きスペースがあった。
千代は虎族の男性の誘導に従って、余裕を持って作られた駐車スペースに車を止めた。
七と千代、二人揃って車を降りると、虎族の男性が七に頭を下げた。
「お帰りなさいませ七お嬢さん!旦那も奥様もお待ちしていますよ!」
「そう。大河出迎えご苦労様」
「ありがとうございます!ささ、行きましょう。……そちらのお嬢の恋人さんも」
「あ、あの、蓮紀伊 千代です。よろしくお願いします」
「蓮紀伊さんですね、どうかお嬢のことよろしくお願いします」
「いえ、こちらこそお世話になりっぱなしというか……」
「おっと!そういう話は旦那様と奥様に!さあさ、行っておくんなさい!」
七に大河と呼ばれた虎男に着いて、七と千代はリモコンで入り口が閉められたガレージの内側から、隣接する門の中の、日本家屋の庭の中に入っていく。
入った庭は、広い池に多数の蓮が浮かんでいて、その花びらはふわりと開いている。
それ以外には壁沿いに植え込みがあるだけで整備された芝生になっていて、小さな丘のようなおうとつも作られている。
これは犬族特有の庭の作りで、庭をそのままドッグランにしているのだ。
そのために多少眼を楽しませる物以外は庭に置かないのだ。
「わぁ、素敵なお庭ですね七さん。こんな庭ならいくらでも走れそう」
「そうだね。子供の頃は私もずっとこの庭で大河に見られながら駆け回ってたよ」
「え、大河さんってそんなお年なんですか?」
「へぇ、もうこの古儀居様の家に仕えて50年になりやす」
丸みを帯びた耳を押さえるように抑えて、千代に愛想の良い笑顔、と言っても鋭い牙をずらりと覗かせる、子供には恐れられるだろうものを見せる大河。
それを見て、千代も薄く顎を開いて微笑み、言った。
「大河さんは七さんが小さい頃からこのお屋敷に居るんですね」
千代の瓦作りの三階建ての大きな屋敷を見ながらの言葉に、大河は笑みを打ち消しながら言う。
「はい。あっしが22の頃に七お嬢さんがお生まれになって。一番若い使用人という事で色々面倒を見させていただきました」
「なるほど、生まれた時からのお付き合いなんですね。大河さん、後で七さんの小さい頃の話、色々聞かせてくださいね」
なんの気無しに、千代が言ったその一言。
その一言に大河は顔をしかめた。
何が不味かったのか解らないが、とりあえず千代は謝った。
「す、すいません!私みたいなのに聞かせたくないなら別に無理にはお聞きしません」
「いえ、あっしはいいんですが……七お嬢さんがどうかと」
「私は構わないよ大河。むしろ、私が自分で話すより第三者の視点から聞いてもらった方がいいかもしれないから」
「それなら……後でお話しやすよ。蓮紀伊お嬢さん」
「あ、えと、それじゃあお時間ある時にお願いします」
なんだか微妙な空気になりながらも、七と千代は大河の案内で表玄関に回り、千代が皮靴を、七がサンダルを脱いで家に上がりこんだ。
近くに居た着物の小間使いの山羊族の女性が履物を仕舞うのを尻目にしながら、更に大河に続いて屋敷の奥に入る。
幾度か角を周り、大河が障子越しに七達の来訪を伝えると、中から部屋に入るよう促す、高い声。
その声にしたがって二人が部屋に入ると、予想外の歓待の声が響いた。
「あらあらあら!おっきい子!しかも格好いいわよあなた!」
「本当だ本当だ!おっきい!ねぇ七!その子貰っていい!?」
ぱたぱたと駆け寄ってくる小さな二つの足音。
千代の足元には、柳模様の着物を着たコーギー種の女性と、白い単の着物を着たコーギー種の男性がしがみついている。
七と同じくらいの身長のその人達を、七は珍しく不機嫌そうに引き離した。
「あげない。お父さんもお母さんも離れて。千代ちゃん困ってるでしょ」
「千代ちゃんって言うんだ!いいなぁ、いいなぁ」
「ほんとね!私達もこういう子を恋人にしたいわねあなた!」
「ほんとだね!このおっきな体なら、真子と俺を一緒に抱いても歩けそうだ!」
何を言われているのか解らず固まる千代の前に七が、小さな体で仁王立ちになって言った。
「この千代ちゃんが私がお見合いを断った理由。私の恋人。解ったよね。じゃあ、私達もう行くから」
「いいなー。俺もおっきな胸に抱かれたーい」
「私もー。七ちゃんずるーい」
「ずるくない!食事は部屋で摂るから。変に千代ちゃんに近づかないでね」
「えー」
「どうしようかしらねー、あなた」
「千代ちゃんに触らないで」
千代の眼からは見えないが、唸り声を上げる七の背中から圧倒的な威圧感が放たれる。
常に無いその態度にやや千代も引いていたのだが、七の両親はまったくそれを意に介していなかった。
「やだなー七。そんな怒っても無駄だよ」
「そうそう。私とお父さんは好きにするわ。いつもどおりにね」
くすくすと笑う、見た目は幼いとすら言える二人の親から、もう我慢できないとばかりに千代の手を取って七は歩き出す。
体が軽いから足音はそれほど大きくならないが、それでも如実に七の機嫌はその足音に表れていた。
大河は旦那様と奥様に一礼すると、七の後を追った。
「あの、七さん……」
「私の部屋に行こう。話はそれから」
「……はい」
ずんずんと進む七だが、それはあくまでも彼女の感覚である。
手を引かれて歩くしかない千代はともかく、大河は七を一足で追い抜ける、だが確かに七の後ろという位置を保って小さく足を動かして付いて行く。
そして、ある部屋の前に着くと大河がすっと障子を開く。
小さな箪笥と文机に、コーギー種サイズの姿見鏡、それから小物入れ。
それらが並ぶ部屋から犬族の彼女達とって強い畳の香りが流れ出る。
い草の香りが漂う部屋の中、大河が障子を閉める前に七は千代に飛びついた。
「わっ!七さん」
咄嗟に、必死に跳んで千代の胸の下側に顔に鼻先を埋めるようにする七を千代は抱きしめた。
そして千代は七を抱えたまま畳敷きの上に膝をつき、七を抱きしめる。
「お嬢。あっしはこれで……」
そう言って立ち去ろうとする大河だが、七がそれを遮った。
「大河。時間が空いてるなら今、千代ちゃんに私の小さな頃の話をしてあげて。あの人達と私がどんな関係だったか」
「ですがお嬢……」
「私は千代ちゃんに耳を塞いでもらうから、お願い」
「わかりやした。それでは蓮紀伊さん。七お嬢さんの耳を」
「あ、はい」
千代は、そっと抱きしめる手を、そっと七の耳の上に多い被せて閉じる。
それを確認すると、大河は語り始めた。
七は七人目の子供。
だがそれは望まれてというより、両親の稚気によって生み出されたというべき立場だった。
6人子供を作って家は安泰。
ならば、今度こそ自分達の好き勝手に扱う子供を作ろうと。
そういう意思の元に作られた子供だった。
玩具で戯れるように、構う時は七が嫌がっても構うが、それ以外の時は無関心。
それを気まぐれに続けた結果、何時しか七は気まぐれに与えられる刺激に疲れ、家族と距離を置くようになった。
無論、両親以外の兄弟も居たわけだが、七が生まれる頃には彼らはそれぞれに自分のことに必死。
長兄、次兄は会社の経営を学ぶのに掛かりきり。
比較的余裕がある長姉は実家を離れ、家庭を持っていたためにそれほど顔を見せることは無かった。
当時学生だった三男、次女、三女は時折七の面倒を見てくれた、が。
それは散発的なもので、七自身が落ち着くまで彼、彼女達は両親と同じ、気まぐれな接触者にしか思えなかった。
大河も付き従っていたが、彼も両親が気まぐれを起こせば常に七の傍に居られる人間ではなかった。
そんな状況でも、両親が気まぐれに与える愛情に嘘は無かった。
それだけをよすがに、七は人は優しくもなるし、残酷にもなるという事を学び、少ないながらも友人を作りながら進学。
そして18の時に自らの特技と言っていい料理を学ぶ為の専門学校に進む。
その後の数年は七が家を出た為、大河にも断片的にしか解らないという事だった。
ただ、家を出た後勤めた喫茶店のマスターは良い人で、七へきちんとした接客など、喫茶店経営に必要なイロハを教えてくれたそうだ。
1つ1つ、それを覚えるたびに、両親ではなく、長く世話をしていた大河へ報告の手紙をだしていたそうだ。
話を聞き終わった千代は、耳から七の後頭部に手を滑らせ、撫で摩りながら、自らの胸に顔を埋めている七をより深く抱きしめる。
「七さん、七さん、七さん……」
千代の瞳からはじんわりと目じりの毛皮に涙が滲んで行く。
そして小さな七の身体を抱え込むように抱きしめる力を強める。
七は、その懐からくぐもった声で言った。
「大丈夫だよ千代ちゃん。そんなに泣かないで」
「でも、でも、七さん!」
「なあに?」
「私、子供みたいでダメかもしれないけど、ここに七さんを置いておけません!帰りましょう!」
「大丈夫。私はもうあの人達に負けないの。だって千代ちゃんがついてるから」
「七さん……」
「だから、ね千代ちゃん。明後日帰るまで、沢山仲良く、しよ?あの人達なんか居ないみたいに」
今までに無い、どこか薄暗い物を感じさせる七の声色。
それを聞いて千代は決断を下した。
「大河さん。車庫まで案内お願いします。やっぱり七さんをお父さんとお母さんにあまり会わせたくないです」
「……なんで?私大丈夫だよ千代ちゃん」
「私にはそうは見えません。大河さんはどうですか?」
「お嬢。人は不義理だとそしるかも知れません。でも、お嬢は逃げて良いんです。逃げて、逃げて、忘れて、その蓮紀伊さんとお幸せに成ってくだせえ」
「千代ちゃんは、千代ちゃんはそういうの、ありだと思う?」
「いいじゃないですか、一時的な逃避にしかならなくても。親不孝でも。七さんには自分を優先して欲しいです」
「そっか。じゃあ千代ちゃん、わがまま言っていいかな」
「はい。どうぞ七さん」
千代の許しと共に、ぎゅうっと、スーツ姿から毛が覗く首筋に七は顔を埋めながら言った。
「私をここから浚って、王子様みたいに」
「はい!」
「お嬢……さ、蓮紀伊さん。こちらへ」
大河が、猫科特有の音も立てないのに素早く動かす足で進むのを追って、千代は進んだ。
そして玄関も間近、という所で、七の両親がその行く手を遮った。
「あれあれ?どこに行くのかな?」
「ねぇ千代ちゃん。私達と遊びましょ」
「そうそう。その子は放って置いて俺達と遊ぼう」
「たっぷり可愛がってあげるわよ」
「ねぇ、遊ぼう千代ちゃん」
「七ちゃんと遊ぶより、私達と遊ぶ方がきっと楽しいわ。七ちゃん、つまらない子だから」
見た目は可愛らしい、コーギー種の満面の笑顔。
顎を開け、舌をだす二人の姿は可愛らしいが、しかし千代にとってはこの上なくおぞましいものに感じられた。
「遊びません。私は七さんと行きます」
「あれ?明後日まで居るんじゃなかったの?」
「そうそう。不義理よ。お母さんそんな事じゃ二人の交際を認められないわ」
二人のその言葉に、千代は牙を剥いて吼えた。
「誰に許してもらう必要もありません!必要があるとするなら七さんの許しだけです!私は!貴方達とは遊ばない!」
その声量に七の両親は尻尾を丸める、そしてとてとてと走り、廊下の角まで逃げ出した。
そしてそこからか細い声を上げる。
「ふ、ふんだ!それならもういいよ!俺には一杯遊ぶ相手が居るんだから!」
「そうよそうよ!勝手に行っちゃいなさいよ!もう知らないんだから!」
完全に年下の小娘と言って良い相手の雄叫びに怯んだ二人は、他にもまだ何か言っていたが、千代はそれを聞かなかった。
靴箱のどこかにしまわれた靴を出すまでも無く、肉球の名残のある裸足のまま玄関を出たからだ。
大河はその後を慌てて草履を履くと追いかけた。
「千代ちゃん……」
「さ、行きましょう七さん。私達の家へ」
「……うん、うん……」
先ほど涙を流していた千代と反対に、七は千代の首筋に鼻先を突っ込み、その涙で千代の毛皮をぬらしていた。
千代は、余計な事を言わずに乗ってきた車の助手席に七を乗せると、大河に声を掛けてから運転席に入った。
上がって行く車庫の入り口を待ちながら、千代は七に言った。
「七さん。帰るまで席倒して寝ていていいですよ」
「ううん。いい。それより千代ちゃん」
「はい」
「手、繋いでよう」
「そうですね。安全運転で行きますから、それくらい良いですね」
ゆっくりと車が出る。
その中で七と千代はしっかりと肉球と毛皮が擦れ合わせる。
お互いが、お互いを感じるその感触を幼児期にありがちなたからもののように感じながら、二人は岐路に着いた。
家に帰ってから、二人は努めていつもどおりの生活をしようとした。
仕入れは止めているから、予定の三日間分は完全に休み。
だから明日にはどこか、近所の公園でも良い。
どこか気分転換になるような場所に行く事を七に提案しよう。
そう思いながら布団に入っていた千代に、同じ布団の中に居た七が言った。
「ねぇ、千代ちゃん。強く抱いて」
「七さん?」
「千代ちゃんが強く抱いてくれる、それだけで私、あの人達の事忘れられそうだから」
そういわれるままに、千代は剥き出しの腕の毛皮を七のシャツの背中に擦り付ける様に抱きしめた。
だがそれはすぐに終わりを迎える。
「あ、千代ちゃん。やっぱり一度離して」
なんだろう、と思いながら七の身体を放した千代の視線の先で。
一度布団から出た七はするするとシャツを、ズボンを、果ては下着まで脱ぎだした。
「へっ、七さん!?」
「もっと、くっつこう。お互いの臭いがと毛並みが交じり合って、どっちがどっちだか解らなくなる様に」
「な、七さん……発情期?」
「ううん。そういうわけじゃないけど……もっと千代ちゃんの臭いが欲しいの。直に触れ合いたい」
その言葉に、千代は自分ももぞりと布団から抜け出すと、ブラとショーツを外した。
そしてお互い、風呂に入る時のように毛皮だけの姿になって、しかしそういう時とはまったく違う気持ちで相対した。
「私、こんな事になったら七さんの色んな所舐めちゃいますよ」
「うん。いいよ千代ちゃん。私の全部、感じて」
後は、ゆっくりと布団に横たわった七を千代が味わう時間だった。
その時間の中で、千代は思った。
ああ、この人はずっと自分の抱える寂しさを、そうと自覚していたのにその本当の埋め方を知らなかったんだ。
ならそれを自分が埋めよう。
そう思った。
その夜、二人はある種の一線を越えた。
何かを成すわけでもないが、二人は交わった。
発情期という、種の保存の本能から外れた所でお互いを求め合い、受け入れあったのだ。
次の日、二人は珍しく昼近くまで眠っていたが、その毛並みは境など無いように交じり合い、千代の腕の中に七が隠れるようにして目覚めの時を迎えた。
七は先に目を覚ましていたが、千代が起きるまでその状況に甘え続けた。
そして、恋人でなければこうは甘えられなかった、と思うのだった。
この実感と共に、冷静になれば自分はまだまだ親に甘えていた、とも思う。
確かに一時は酷い親だったかもしれない。
しかし、進学の時も、店を出すのに当たって家を買う時も、両親はその心の内はどうあれ、援助してくれた。
きっと、上の兄弟の皆に対する物とは違う形にせよ、きっと愛情はあるのだ。
その事を正面から受け止めて、千代にちょっかいを出すのを平気で受け流せるくらい強くなったら。
またきちんと両親に会いに行こう、そう思う七だった。




