僕らの物語__外伝 カカオ(猫)の一生
僕らの物語の外伝です。
前世の記憶を持つ不思議な生き物、カカオの一番初めの人生です。
カカオはとても利口な猫だ。人語を理解出来るし、頑張れば人語を少し話せる。
カカオのいる村は貧しい村だ。この時代には、豊かな村はあまりない。せいぜい、都付近の村だけだろう。
カカオは日中いつも散歩に出ている。住まいとしている神社の人達は、カカオに全く関わろうとしない。カカオを畏怖の目でこの村の人間達は見る。猫がこの時代にいるのは珍しいからだ。出来れば関わりたくないと神社、村の人間達は思っているが、死なれても困る。それを分かっているのだろう。カカオは一日中出かけて、尚かつ人がいるところをえらんで過ごしている。
しかし、カカオを畏怖の目で見ない人が一人いた。村はずれの農家の娘だ。カカオは散歩に出ると必ず娘の所へ行く。
「こんにちは、猫さん」微笑みながら話しかけてくれる。カカオは娘の微笑みを見るのが楽しみで、どんなに体調が悪くても寒い日でも娘の所へ行った。
数十年そんな生活を送った。
ある年の冬、例年にないくらいの寒さであった。カカオは朝、いつものように散歩に向かおうとしたが、体調がかなり悪かった。動けない。巫女さんがカカオの体調に気づいたのか毛布を持ってきて、掛けてくれた。
巫女さんは神社でもとくに暖かい場所へカカオを連れて行った。
猫を連れてきた巫女を他の巫女や神主は驚いたが、カカオの体調の悪さを知ってからは、看病した。
カカオの体調は治るのに4~5日かかった。カカオはお礼の意味を込めて、「にゃあ」と声を出した。皆、驚いたが優しく微笑んでくれた。
治ってすぐカカオは村はずれに向かった。途中、村の人達から「もう、体調は良いのか?」と声を掛けてもらったので大丈夫の意を込め「にゃあ~」と云った。
「ここ4~5日姿を見なかったけど、どうしたの?心配したんだよ。」優しく撫でてくれた。《彼女は僕のことを心配してくれた。村の皆も…》嬉しくなった。そして、彼女はゆっくり抱き締めてくれた。
その日から彼女は、カカオが来る度に撫で、抱き締めてくれる。そのたびにカカオは嬉しさのあまり喉をゴロゴロとならした。
カカオは数年後の春、村の皆に見送られながら眠るように猫としての人生を終えた。
本編に出てきていないキャラなのに、外伝を書くのかとお思いでしょう。
自分も思っています。
…仕方がないんです。書きたかったのですから、カカオについての物語を……。
今後、本編の話が進んでけば、ちゃんとカカオと云うキャラクターが出てきますので大丈夫です。