表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

「六鬼」


「僕の故郷の村はかなりの田舎だったけど、山を越えた向こうには更に田舎の村があるという話だった。大人たちはその村には行ってはいけない、山にも入ってはいけない、と子供に言い聞かせていた。かなり険しい山道を登らないと辿りつけないし、山道は舗装されていなくて危険だったんだ。たぶん、子供を近づかせないための怪談だったんだと思うよ」


 オカさんはどこか懐かしそうに呟いてた。


「今思えば、何かの差別があったのかもしれない。いくら何でも山奥すぎて、暮らすのも相当不便なはずなんだ。あまり人に知られたくない人間が住む村だったのかもしれないね」


 それはありそうだなぁ、って思ったよ。

 昔からの風習や、同じ人種じゃなかったり、犯罪者や厄介者を隔離する話は、昔の日本じゃ当たり前だったろうしね。


「おまけにその村に近づく人間は『六鬼』に襲われるぞ、って子供を脅すんだよ。六匹の鬼、っていう意味じゃない。この鬼は一匹なんだ。なぜ六鬼かというと、この鬼が子供を殺す際の特徴から名付けられた」

 

 オカさんはそう言って手を振り上げた。


「鬼は子供を素手で捕まえて、まず右足を潰す。それを食べるんだ」


 本当に嫌な話を始めたよ。


「次に左足を潰す。それも鬼は食べるんだ。次に右腕、次に左腕、次に下半身、最後に上半身を潰して食べる。生きたまま人肉を骨と皮まで喰らう鬼だ。子供たちは恐怖に震えたよ。つまり頭だけを残して綺麗さっぱり食べてしまうんだ。だから六鬼って呼ばれていた」


 もう本当に気持ち悪かった。

 それで終わればいいのに、オカさんの話はまだ終わらないんだ。


「そして何より怖かったのは、六鬼が本当に出たことだ」


 誰かが生唾をゴクリって飲み込む音が聞こえたよ。


「山の入口で子供の頭だけが発見されたんだ。胴体も手足もどこを探しても見つからない。まるで首は食い千切られたように切り離されていて、六鬼の仕業じゃないか、って僕たちは震えた。大人たちまでそんな話をしていたな。そしてそれは一人だけじゃなかった。殺害された子供はどんどん増えていき、ついに五人になった。犯人はまるで捕まらない。きっと六人目もある。六鬼って名前だ。六人の子供を殺すのかもしれない。みんなはその恐怖に怯えていた」


 オカさんはそこで言葉を区切り、辛そうに口を開いた。


「そして僕は六鬼に会ったんだ」


 オカさんは六鬼に会った。

 それで終わりさ。

 何せオカさんも死んでしまったからね。

 そう、死んでしまったんだ。


 そんなに不思議に思うことはないだろう? 

 だってオカさんは死んだ。

 それで全て終わりだよ。


「それじゃ、次は僕が話そうかな」


 サークルの先輩が言い出した。

 ヤマダさんって先輩さ。

 黒いメガネをかけた地味な先輩だよ。


「僕は友達から聞いた話なんですけど、暴露毛ばくろけって話です」


 ばくろけ、そう言い出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ