外ヘ出てしまう事件
今までの話は私が母から聞いた話で、私自身は正直なところ、覚えてはいない。
これから、私自身が覚えている体験を話すところだが、その前に私が母から聞いた話の中で特に印象深い話を話す。
私が3歳ぐらいのころ、私は夕飯の後、外へ出たがった。兄のときも同じことがあったが、そんなとき母は兄をおぶって、外に出て月を見せたり、2、3曲童謡を歌ってやって家へ入った。私の場合もそうするつもりで、おぶって外へ出たが、兄と違って満足せず、家に入ろうとする母の背中で、泣きわめき、自分の行きたい方向へ体を乗り出すので、落とさないように結局私の行きたい方向へ一緒に歩かなければならなかった。私は風呂上りで、パジャマ姿ですぐ家に帰るつもりだったので靴もはかせていなかった、母も私と近い格好だった。それなのに私は駅の方に行きたがった。道を変えようとしても泣きわめかれ、木や電柱にしがみつくので、抱きかかえたり、おぶって歩くうちに大型ショッピングセンターの前に来てしまった。真夏なので、まだ閉店していなく、人も多い。自分とこの子の姿が人にはどう映るのだろうかと母は泣きそうになった。店の中には何とか入らないようにして、行きとは別の道を遠回りして帰った。家に着くと、母と私が出ていったことを両親(母の父母、私の祖父母)は知らないので鍵がかかっていた。玄関をたたき、やっと開けてもらった。家に入ると、私は風呂場で水遊びを始めた。母はこのとき、こんな生活がいつまで続くのだろう、私の頭がおかしくなると思ったらしい。