08-3/4--->unknown-新たなる舞台へ?
3/4 アバウトに行こう
ソウとユーメイと管理人は、管理人の甥の家に訪れていた。そこに何かしら手がかりがあると、ソウが踏んだからである。
ソウたちは管理人の甥の部屋に入る。ソウは部屋の片隅にあるコンピュータに近寄ると、右手で触れる。彼の右手は黒色に変化していた。
暫くしてソウはコンピュータから手を離す。その肌の色は元に戻っていた。
「ユーメイ。このコンピュータは、異世界への入り口になっている。管理人さんの甥御は、どうやら意識だけ『向こう』に持っていかれたようだな」
「どうするのですか?」
「向こうに行って甥御の意識に接触できれば、帰還も可能だ。
管理人さん」
「は、はい」
ソウたちの会話についていけず、呆然としていた管理人は微妙に裏返った返事をする。
「暫くの間、この部屋で寝泊りできますか?」
「許可は取れると思います」
「なら、その辺りのことはよろしくお願いします。
ユーメイ。暫く俺の意識は『向こう』に飛んでいる。俺の体は、できるだけこのコンピュータの近くに置いておいてくれ。それと、こっちの世界での雑事は頼んだ」
「はい」
ソウは再び黒く変色した右手でコンピュータに触れた。そして肌の色が元に戻るとほぼ同時に、ソウの体は脱力する。床に崩れ落ちそうになるその体を、背後からユーメイが抱きとめた。
諸々の雑事を済ました管理人とユーメイは、ソウの眠る布団の横に並んで座っていた。
管理人はユーメイに話しかけた。
「あの・・・・・・」
「何か?」
「神崎さんは、今、何をしているんですか?」
ユーメイは、少し考えるそぶりをした後、
「私もよく分かりません」
と言った。管理人は絶句した。
unknown 第一歩で躓く
ソウが異世界に進入してから最初に見た光景は、一切の光がない闇だった。どうやら地面も無いらしく、足元に感覚が無い。
不正アクセス。キャラクターのデータが不正です。
安い警告音と共に、ソウの目の前にそんな文字が現れた。
まるでコンピュータの画面にウィンドウが現れるが如く、目の前に瞬間的に横長の長方形が現れ、そこに前述の文字が書いてあった。そしてその文字の下には、YESと書かれたボタンらしきものすら存在している。
どうするべきか少々考えた後、ソウは「YES」と口に出して言う。YESのボタンは押されたかのようにくぼんだ。
そして、周囲の闇が一瞬にして白に変化する。ソウは半眼になりつつ、前方の人影を確認する。
「疾く去れ。招かれざる者」
しわがれた声で、その娘は言った。その娘の外見はモノクロ映画から抜け出したかのように、白と黒の二色で構成されていた。
ソウは娘に話しかける。
「お前の役割は何だ?」
「我は狭間に立つもの。異形を排し、理を守護するもの」
ソウはしばし考えた後、
「要するに、お前はゲームのキャラクターじゃないから入るな、ということか?」
と言った。