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07-3/3-趣味かよ

 その日の午前中、ユーメイは勉強をせずに何かを作っていた。

「折り紙か?」

「はい。紙雛です」

 折った男雛と女雛を、色紙に並べて貼り付けて完成する。書類立てに挿すとコタツの中央に置いた。

「ほう。なかなか出来がいいな。風情がある」

 ユーメイが作った紙雛は素朴な紙質を基本としつつも、さりげなく金や銀の色紙が織り交ぜられていた。慎ましく堅実でありながら、微かに覗く鮮やかな彩色が美しい。

 ふと、部屋の呼び鈴が鳴った。




「診てほしい人がいるんです」

 管理人はリビングに入ってくるとそう言った。

「俺にわざわざ頼みごとをするということは、『そっち系』のことですか?」

「それはまだ、よく分かりません。しかし、その可能性はあります」

「とりあえず話を聞かせてもらえますか?」

「はい」

 管理人は茶を飲んで一息吐く。

「私には甥がいます。その甥が、意識不明になりました。

 原因は不明です。しかし彼が発見された際にパソコンの載っている机に突っ伏していたことから、彼はパソコンで何かをしている途中で気絶したと思われます。

 甥は意識不明なのですがその症状は奇妙です。というのも、意識が無いことを除けば、肉体的にはなんら問題は無いのです。

 この奇妙な症状から考えて、何か通常では手を付けられないことが起きているのではないかと」

「なるほど」

 ソウは少しの間、何かを考える様子を見せる。

「解決の保証はできませんが、その甥御を少々診せてもらいましょうか」




 病室に眠る管理人の甥を診ていたソウは、開口一番こう言った。

「これは多分、『そっち系』ですね」

 それを聞いて管理人は安心したような表情になる。しかし次の発言を聞いて、変なものを口に入れたような、不意打ちを喰らったような顔をした。

「では、依頼を受ける前に報酬の話をしましょう」

「ほ、報酬?というか、依頼を受ける前って」

 素っ頓狂な声を上げた管理人に対し、面白いものを見たような顔でソウは言う。

「ここまでは、まあ、確認みたいなものですね。さすがに自分の専門から外れた依頼を受けるつもりは無いですから。

 ですが、ここから先は依頼を遂行するために本格的に動く必要があります。だから報酬を今のうちに決めておきたいのです。多分に趣味的意味合いが強いのですが、慈善事業をやっているとも言い難いのですから。

 前金だとかを求めるつもりはありませんし、ぼったくるつもりもありません。けれど、依頼達成後に支払っていただく報酬については定めておきたい」

「は、はあ・・・・・・」

 管理人は気の抜けた声を漏らした。




続く。

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