灯りが消える前に
灯りが消える前に、少女は電話ボックスへと走る。
煌々と無数の電話ボックスが灯す明かり。
小さな裸足の足が、タイルの上を歩く。
天井はガラス張りで、空の様子がよく分かる。
しかし常に闇に包まれたこの場所では、それは意味をなさない。
一人の少女が、この異空間を彷徨い歩いていた。
周囲にある植物は飴細工のように美しく、虹のかけらを散りばめたように輝いていた。
少女は何週間…いや、何年…ここに留まっているのか分からない。
気づけばここにいて、ずっと出口を探していた。
電話ボックスの中で電話をかけてもどこにも繋がらない。
ただ、この電話ボックスには電話をかける以外の役割がある。
ぐぅぅ…と少女の腹が空腹を訴えた。
近くにあった果物を数個手に取り、電話ボックスの中に駆け込む。
それが合図のように、光り輝く植物達は一斉に灯りを消した。
温室内は完全なる暗闇と化す。
その闇の中から、ペタ、ペタと足音がする。
スリッパや裸足で歩き回るような音。
少女はできる限り身を縮め、手に取った果実を頬張る。
どれが食べられる物なのかの見分けなんて、もう慣れっこだ。
そして、この音が鳴り止み灯りがまた灯されるまで電話ボックス内から出てはいけないというのも、少女は分かっている。
かつて、少女はもう一人同じ境遇にあっているのであろう少年と共にいた。
少年は自分が何者でどこから来たのかも分かっていなかった。
少女は家に帰りたいと伝えたが、少年にも出口は分からないと言われた。
だが、少年は心優しく少女にこの場所の事を詳しく教えてくれた。
「これが食べられるんだ…そして、これは光っているだけだから明かりとして使えるよ。」
説明を受けていた時、植物の灯りが少しずつ消えていくのを感じた。
突然、少年は少女の手を掴み電話ボックスの中へと入った。
「ここの明かりが消えたらね、化け物が出てくるから…電話ボックスの中にはアイツ入ってこられないんだ。また明かりが灯るまで、外に出てはいけないよ。」
ペタ、ペタ、ペタ、ペタ、ペタ…
足音がしばらく続き明かりもつかなかったが、少しずつ明るくなり少女は安堵のため息を漏らした。
「ありがとう…」
少女は少年と出口を探すため、行動を共にしていた。
だが、その生活は長くは続かなかった。
電話ボックスの中へ入り遅れた少年は、暗闇から伸びる白い手から逃れることができなかった。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
断末魔の後、バキバキと何か砕くような音が聞こえた。
ゴクリと喉が鳴るような音も続いて聞こえた。
少女は震えながら、闇が消え去るのを待った。
明かりが復活しても、しばらくその場を動くことができなかった。
そっと出て、少年がいた場所を見る。
タイルには赤いシミとビリビリに裂かれた少年の服のみが残されていた。
それからというもの、少女は一人で出口を探す。
少女は諦めなかった。
いつか、きっと絶望に打ち勝ち家族の元へ帰ることができると信じていた。
そして、ついにその日はやって来た。壁の草やツルをかき分けて進むと、奥に扉があったのだ。
「…!」
ドアノブはツルによって絡め取られていたが懸命に手でちぎった。
やっと、この恐怖から解放される。
全てのツルが無くなった時、少女は満面の笑みを浮かべた。
感動の涙を堪えながらドアを開けようとしたその時、
グイッと腕が引っ張られた。
少女はドアに夢中で気づかなかったのだ。
とっくに辺りは闇に包まれているということに。
少女を離さないその白い腕は、かつて少女を電話ボックスへと導いた少年の手に似ていた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
幻想的だけど怖い場所を書きたいなと思い、作成しましたφ(..)
気に入ってくださった皆様、是非他の作品も読んでくださると嬉しいです!(*´ω`*)




