7話:周辺環境調査(北部)
八重に乗って海岸沿いを北上し、そのまま北部の森に入る。
入った所で八重から降りて、周囲の様子を見ながら奥へと進む。
様々な木々が生い茂り、その中の獣道を進む。
前世の獣道とは違い、この世界の獣道は分かりやすく道となっている。
何故ならモンスターは大きく、ただ通るだけで狭い場所は切り開かれる。
この辺りにはそれ程大きなモンスターは出没しないと聞いているが、北部の天氷山から降りてきたモンスターや縄張りを追われた飛竜種が来ることはある。
周囲を見ると小型の甲虫種モンスターが薬草や落ちている果実を貪っては腹を膨らませている。
討伐してもいいが……錬金術で似たようなことが出来るので売り払う以外に価値を見出せない。
蜜袋は売ればそれなりの金額にはなると思うが、今回はやめておこう。
暫く森の中を進んでいると辺りの木に比べ大きな木を見つける。
程よい高さで、枝も太くしっかりしている。
「この木の上ならベースキャンプにちょうどいいかしら」
候補地として覚えておこう。
薬草やスパイスとなる野草を採取しながら奥に進んでいると草を掻き分ける音に気付き、双剣を抜く。
出てきたのは牙が剣のように真っ直ぐで鋭いイノシシだった。
「うげっ……よりにもよってブールファンね」
数メートルあった距離を一瞬で近づく素早い突進が目の前に迫り、ステップで横にずれながら牙を何とか弾き、一旦距離を置く。
「自己防衛のため、ブールファンの討伐をぉぉ!?」
口上をやめて牙を再度弾き、突進を躱す。すぐそばを通り過ぎる鋭利な牙に内心で冷や汗を流す。
ハンターの間でかなり嫌われているこのモンスターは見たとおりだ。目の前の動くものに爆速で突っ込み、狩猟中で意識外からハンターを吹き飛ばす。
しかもタフで、毛皮は生半可な攻撃では傷がつかず。頭は強靭でハンマーと言った大物の一撃でないと碌なダメージにならない。
このブールファンの主な対処法は、遠距離攻撃・大型武器によるカウンター・持久戦と言ったところか。
手数を武器とする私なら持久戦しかない……と言う訳でもない。
だが、この方法はかなりリスキーで、覚悟と豊富な戦闘経験か高い反射神経が必要となる。覚悟は今決める。経験は乏しいが反射神経は自信がある。
それに、万が一失敗しても装備の防御力で防ぐこともできるだろう。
「やるか……」
意識を集中し、双剣を上段に構えて再度の突進を待つ。
「フッ!」
突進に合わせて、ブールファンの特徴的な牙に双剣を振り下ろす。
牙が地面に刺さり、土や石が飛び上がりヘルムに当たって甲高い音が鳴る。
俺の体にはぶつからず行動不能になる。
「よし!」
頬を流れる汗をぬぐい、激しく鳴り響く心臓を落ち着かせる。
この隙をむざむざ捨てる訳にはいかない。回り込み、一気に双剣でブールファンの首筋を切りつける。息の続く間連撃を叩き込み、強靭な毛皮を切り裂いてダメージを与える。
「はぁ……はぁ……疲れた」
特に、精神的に……勿論、今日一日回った疲労もあるが……。
何とか討伐することが出来たが、このモンスターは別にボス格じゃない。
純粋にタフなだけだ。そもそも中型以上は先ほどの連撃でも致命傷にならないだろう。
殆どが数時間かけて狩猟する事になるのがほとんどだ。
息も整ったところで解体を始める。
ブールファンは食べられるモンスターだ。午前中のマンティクローも食べられるが、一般的ではない。そういう意味ではブールファンは一般的に食べられている。
前世でもジビエとしてイノシシは有名だったが、こちらではもっと一般的に食べられている。
何分ブールファンは邪魔される前に倒すという事で肉が出回りやすく。毛皮や牙も価値が高いのでたまに見る安い肉と言った立ち位置だ。
毛皮を剥ぎ、剣牙を抜いてバックパックに入れておく。ヒレ肉やモモの他ロース肉などを持って帰れる分だけ持って帰る。
バックパックも無限ではないし、持って帰れる量にも限度がある。ほとんどは置いていく事になるだろう。足くらいは切って八重や白蓮にあげようか。
双剣の血を軽く振って飛ばし、布で拭って簡易砥石で研いでおく。
「こういう時属性剣なら便利なのかしら」
モンスターの素材を使った武器と言うのは素材の元となったモンスターの性質を引きつぐ。
例えば火を噴く竜の素材で作った武器ならば火の力を宿し、火を飛ばす事もできるという。
この武器や防具に宿る力と言うのが俺が世界の小窓で装備を見た時に出る装備スキルと言う訳だ。
ドラウドラショートソード
分類:片手剣
物理攻撃力:50
属性攻撃力:0
装備スキル:剛刃:丈夫に作られており長持ちし、切れ味の低下も起きにくい。
シンプルな幅広のショートソード。
なお貸出品である為売ると怒られる上に罰金を科される。
これが今使っている双剣の性能となる。
装備によっては装備スキルが無い物もあったりする。
攻撃力に関しても何を基準に50なのかは俺にはわからないが、初期支給品であるこの剣で50ならそれを基準に考えておけばいいだろう。
「さてと、もう少し奥を見てから帰りましょうか」
双剣をしまい、森の奥へ進む。
森の中に生息するモンスターは大まかに分ければ甲虫種や先ほどのブールファンの様な地獣種が多い。
だが、奥に進んでいくとかなり様子が変わって来た。大きな岩が見え始め、奥に進むほど岩場が目立ち始める。
北部の山々から吹き降ろす冷たい風が身体を冷やす。
環境の変化に伴って生息するモンスターも変化してきた。
鉱物食の甲虫種や肉食の地竜種が多くなる。
肉食のモンスターは獰猛で縄張り意識が強い種が多い。恐らく直ぐに襲って来るだろう。
「奥部の調査は今度にしましょう」
今は採取物で荷物が多い。それに今回は調査目的でハンター用治療薬の数も心許ないので戦闘はなるべく避けたい。
踵を返し、村に戻る事にする。
北部森林地帯の奥部は後回しになるが、1日で無理に全て見て回る必要も無い。再度準備を整えてまた来ることにしよう。
急ぐ必要も無いので八重ものんびり走らせ帰路に着いた。道中モンスターに襲われるということも無く無事に村に戻ってくる事が出来た。
戦闘前の口上はアルテイシア以外のハンターは別に何も言いません
本人はかっこいいから言ってます
まぁ、この行いは正当な物なんだという自己暗示もあるかもですが




