6話:周辺環境調査(東部)
八重に跨り、水の流れに沿って北東へ進む事10分程。
道中水棲モンスターの飛び掛かりがあったりしたものの、さほど時間をかけずに洞窟を抜けることが出来た。
横断するように流れるこの川に沿って丘陵地帯を抜け、海に出よう。
「このまま川に沿って進んで」
「クル!」
この周辺は肥沃な土壌で、海に近い事を踏まえても恵まれた土地である。
丘の底は緑豊かな草原で、のんびりとした性格の草食のモンスターが多い。川岸には地底湖でも見たザリガニもどきと言った水棲モンスターも見られる。
所々に木々もあり、それに実っている果実を小さな鳥が突っついている。
この世界においてモンスターと動物は明確に区分されている。
大雑把に言えば、一般人が一人で対処できるかどうかが分水嶺となっている。無論攻撃性の低いモンスターや、一匹では脅威ではない群れるモンスターと言う例外はある。
あのマンティクローも一対一なら一般人でも倒せはするだろう。だが、あのハサミは脅威であり、相応の怪我を負ってしまうだろう。
俺だって不意打ちに近い状態で急所に当てたから倒せたものの、よーいドンなら装甲の硬さもあってもう少し手こずったかもしれない。事実、二体目は反撃をしてきたわけだ。
「八重、ちょっと止まって」
「クル!」
気になった木の前で止まってもらい、生っている木の実を改めて確認する。
名称:ライラの実
分類:果実・生薬
レア度:Ⅱ
調薬の際に薬効を強化する性質がある。
マイナーであまり流通しておらず市場にはあまり流れない。
フルーツとしても美味しいので薬師以外でもお高めのフルーツとしても人気。
赤い梨のような木の実で、目を引いた内容は”調薬の際に薬効を強化する性質”これはいくつか持って帰っておきたい。
「白蓮、いくつか取ってきて頂戴?」
『承知』
空を飛んでいた白蓮を呼んで数個採取してもらう。
試しに1つ齧ってみると取れたてで瑞々しい果汁と、さっぱりとした酸味と甘みが口いっぱいに広がる。
「これは美味しいわね……八重、白蓮、貴方達も一個食べてみなさいな」
八重に一個投げ渡すと綺麗に口でキャッチし、シャクシャクといい音を響かせながら食べ始めた。
白蓮は自分で木に生っているライラの実をもぎって食べている。
暫く甘い物なんて食べてなかったから唾液腺がはちきれそう。真ん中に大きな硬い種があるのでそこは食べずに持って帰る。
数個程白蓮にもぎって貰い、八重のバックパックに入れておく。調薬にも、フルーツにも良い果実を見つけられたのは僥倖だ。
こう言った薬草や果実の採取と言った寄り道をしながらも川沿いを進み、丘の間を縫うようにして海に出た。
海岸は砂地で、たまに村の誰かが使うのか桟橋も見える。
「今の所水棲モンスターも見えないし、ここで一休みにしましょう」
八重のバックパックを下ろしてやり、近くの岩場に置いておく。ついでに釣竿を取り出して桟橋に向かう。
桟橋の一番先に着いたら仕掛けを準備する。ウキや針と言った仕掛けはちゃんと持って来ているので後は餌だ。
「餌……あぁ、あれで良いか」
マンティクローの切り身を少し切って針につける。弾力が結構あるので餌持は良さそうだ。
桟橋の端で足をぷらぷらとさせ、アタリが来るのを待つこと数分。時折餌が外れてないか確認しつつ待っていると大きなアタリがあった。
「フィーッシュ!」
針が外れないように気を付けて引き上げると、全長40㎝ほどの魚が釣れた。
前世の感覚でいくとなかなかの大物だ。こちらの世界でも十分大物の分類だが……。
すぐに血抜きを行い、辺りの海面が赤く染まる。
少々肉食の水棲モンスターが心配になるが大丈夫だろう。
血抜きのついでに内臓や鰓を取り除いて海に捨てる。小魚の餌にはなるだろう。
「それで、この魚は何かしら?」
名称:グルーギス
レア度:Ⅱ
分類:魚類・食材
大陸の東側でよく見られる肉食魚。
淡白な白身で焼いたり、蒸す調理法が多い。
なるほど、スズキとかそう言った物に近いのかもしれないな。
桟橋から荷物を置いていた岩場に戻り昼食の準備を始める。
グルーギスは鱗を落として、三枚おろしにする。半身は俺達で食べる分にして、残りは持ち帰ろう。
「作るならそうねぇ……全部入れたサンドイッチかな」
食べる分のグルーギスの半身をおおよそ三等分にしておく。切り身に塩・胡椒・ミックススパイス・小麦粉をかけておく。
マンティクローの切り身は軽く塩もみした後、一口大に切って塩・胡椒を振って下味をつける。
朝に買って来たバケットは上下に切っておこう。
荷物から焚き火台を出して火を灯す。スキレットにバターを溶かし、グルーギスの切り身を皮目を下にして焼いていく。バターを回しかけながら火を通す。
両面に火が通ったらバケットにのせる。これを3切れ分調理する。
次はマンティクローの切り身だ。ハーブ系の香草を切り身にまぶして、まだバターの残っているスキレットでソテーする。
若干臭み等が気になるので少し長めに焼いておこう。少し焼き目が付くくらいで火から上げてムニエルののっているバゲットの上にのせる。
後はオムレツを軽くスキレットで温め直し、バゲットにのせて上半分のバゲットをかぶせ、バゲットを包んでいた包装紙で巻いて完成だ。
「ご機嫌な昼食ね。いただきましょう」
漂流してきたと思われる流木に腰かけ、白蓮や八重と固まってバゲットサンドを食べる。
今は誰もいないのでヘルムを外し、大きく口を開けてかぶりつく。
「……タルタルソースが欲しいわね」
スパイシーで十分美味いが、タルタルソースが欲しくなる味だ。野外のキャンプ飯で贅沢すぎる悩みだがどうしても口に出してしまった。
懸念していたマンティクローの切り身の匂いも特に気ならなかった。恐らくあの綺麗な水源で育ったおかげだろう。
グルーギスも淡白だが肉質はしっかりしており、フィッシュアンドチップスなんかの揚げ物に良いのではないかと思う。
「薬草と一緒にスパイスは採取してるけれど……油はねー……」
バターをちょっと使うのとではまるで違う。大きな街ならまだしも近代に近い文明度でも農村で揚げ物はハードルが高い。
海を眺めながら口いっぱいにバゲットサンドを頬張る。
自分にとっては今一つでも八重や白蓮には満足らしく、嬉しそうにかぶりついている。
お腹が満たされたらお湯を沸かし、コーヒーを入れる。お湯はスキレットで沸かし、コーヒーは粉末の物を使う。
コーヒーを飲みながら午前中で行った場所の情報をノートに書き記す。
おおまかな地図を描き、薬草の場所やどんなモンスターが居たか等を書き込んでいく。
大まかに書き終わったら出発しよう。
スキレットを水洗いし、焚き火台を畳んでバックパックにしまう。
狩場は汚さないようにするのはハンターにとって当たり前のことだ。
「さて、お腹も膨れたし。次に行きましょ」
レア度について
基本的には1~2は一般的に普及している珍しくない素材
多少手に入りずらい物が3
モンスター素材は3~
中型モンスター素材は4~
大型モンスター素材は6~
上位素材なら1ランク上昇
最上位なら更に1ランク上昇
ただ、希少性や品質によってランクは上下する




