39話:天晴を求めよ、滅地白天に女帝は眠る3
飛行可能時間と雷撃付与の効果時間が迫る……白蓮が再び雷撃を放ち、俺は再び空を飛翔する。
まるで効いていないかのように雷撃を無視して、数多の氷弾を俺に放つ。
放たれる氷弾を巨大な物はグラナークの炎で溶かし、隙間で飛んでくる氷刃をスラスターを短く噴射する事で躱し、針に糸を通す様な道のりを経て翼を切り裂く。
今までは高速接近に対しては碌な対応を出来ていなかったと言うのに、今では面制圧でもするかのようにまき散らしている。この反撃を見るに、先ほどの攻撃は相当効いたらしい。
「思ったより必死なのね」
星天の彗星の星が更に灯り、残すはあと1度。振りぬいたままの尻尾を、スラスターで強引にもう一度体ごと回転させて再度叩きつける。
最後の星が灯った。
翼を掴んで体の回転を止め、瞬時に刺さっているカーパイトに飛び移る。
カーパイトをしっかりつかんで体を固定し、グラナークを口に咥え、空いた手で星天の彗星を掴む。
星天の彗星のトリガーを引き、尻尾で持ち手を引き延ばし形状を変化させる。
星天の彗星全体が規則正しく罅割れ、引き延ばされる事で槍となる。引き延ばされた際の罅から高温の炎と極低温の氷が噴き出して刃となす。
刀身が1.5倍ほどに伸び、完全に槍となった星天の彗星の石突を胸に突き刺す。
「くっ……」
理論や原理は分からないが、これによって星……ドラゴンスケールクリスタライトに貯められた莫大なエネルギーを俺の身体に流し込むことが出来る。
このエネルギーを俺は虚構エネルギーと呼んでいる。なぜ虚構と呼んでいるかは長くなるのでカットするが……一言で言えば、何かに付加する事で効果を発揮する。
この虚構エネルギーだが、人工的に生み出せるらしいが人類は扱うことが出来ない。簡単に言えば付加する力なのに付加できないのだ。扱える存在は真龍か、それに起因する存在のみと言うわけだ。
真龍の力を使うので寿命を削っているような物だが……まぁ、タバコ吸うような物で、五分だけ自殺するような……そんな感じ。
使用感?電気ヒーターのヒーター部分になった気分。体中が異常を示して発熱し、それなのにまるで全能感を感じる。しかし、代償としてなのか、まるで内側から肉体が作り変えられているように感じる。
グラナークを再び持ち直し、再び高温の炎を翼の付け根に放射し焼きつける。更に先ほどグラナークによって炭化している背の部位へ槍となった星天の彗星を深々と突き刺す。
再びスカーディレの甲高い咆哮が響き渡るが、今回は支えが十分あるので耐えられる。
星天の彗星を突き刺している事で継続してしてダメージを与えているお陰か、星が灯っていく。
炎の翼も、雷撃の付与も残り時間はわずか……全力で行く!
星天の彗星を両手で持ち、渾身の力を籠めて槍を押し込む。スラスターを全開にし銀煌の緋炎の効果をフルに使い、更に押し込む。仮想の力がそれらすべてに付加され、全ての出力が上昇する。肉体にかかる負荷も凄まじいが、それを無視して突き進む。
「はぁあああああ!!!」
そして……純白の鱗と甲殻によって守られた堅牢なスカーディレの巨体を貫き、向こう側が見える程の風穴を開けた。
炎の翼と腕に纏われた雷は消えた、たが……星は全て灯り、今一度剣となす時が来た。
一足先に地上へ降り立ち、いまだ空に居るスカーディレを見やる。
先ほどのダメージは流石に堪えた様で、ゆっくりと落下していくスカーディレの予想落下地点へ飛び出し、古の風がその歩みを助ける。
落下するスカーディレの真下で星天の彗星を両手で持ち、地に据える。腰を落として尻尾を地に這わせる。そして、目を閉じ脱力する。息を軽く吐き、集中する。
柄を押しこむ、引き延ばされていた槍が剣となり、それまで放出されていた炎と氷がひび割れと共に収められる。星天の彗星が完全に剣となった次の瞬間、高速で振りぬかれスカーディレの背を打ち据えた。
この身に添加した力とは反対の完全なる暴力的なエネルギーの放出。それが直撃したスカーディレの背を吹き飛ばし、そのまま僅かに残っていたドームの壁を破壊して止まった。
「ふぅ……」
ア□ンダイト方式か……使いにくい方できたな。
その場に座り込み、プラーナすら暫く使えない程の全身全霊……全身に倦怠感はあるが、すぐさま次の手を打つ。
ポーチからすぐにハンターショットを取り出し、いまだ動けずにいるスカーディレへと錬金弾を放つ。
スカーディレの首元に着弾した錬金弾は超高熱を発生させ、20mは離れていると言うのにここまで熱気を感じさせる。
溶鱗弾……纏氷弾と同じく錬金弾で少ない切り札の1つ。チャンスと見て、発射したわけだが……効果はこの通り超高熱によって融解させる弾だ。
「いかに真龍とは言え、流石にこれで死んだでしょう」
雷撃を始めとした連続攻撃に、大穴を開けられ、超高威力の爆撃受けた上で超高熱に晒されたのだ。
「グラウマグナクなら2回は死んでっ」
世界が止まった。
比喩ではない。目の前の……スカーディレの周囲の空間だけが止まって見える。
熱も、音も、光すら……何もかもが止まっている。
そして……その範囲は広がっていく。
絶対に……絶対にあそこへ入ってはいけない。
逃げないと……すぐに逃げないと死んじゃう……どうしよう……どうやって?
プラーナ……使えない。大乱風の足環……まだ時間がかかる。銀煌の緋妖精……同じくまだ。スラスター……ガス欠。白蓮……妾の背後、遠い。虚構エネルギー……付加する物がない。
何も……無い?
ある……1つだけ。
”シア……お願いだから……二度とその力を使わないで。私が、必ず何とかするから”
「ごめんなさい、セリア」
この世界に魔法は無い。
錬金術は魔法のような力だけど、物を変えるだけだ。属性の力も……私たちが自在に操れるわけじゃない。
モンスターたちも、前世の地球と比べたら超常的な力を持っているけど。この星においては説明のつく力だ。真龍を除いて……。
自分で封印してきた力を行使する。
幼い頃から練習のために小規模には使ってきたけど……今回のような事は、2度目かな。
自分の周囲を未来へ送る。あの停止の力が消えた未来へ。
真龍は……それぞれ何かを司るとされている。確か、スカーディレは停止を司っているのではないかと考察されていたっけ。
妾の場合は未来……と言うよりは時間に関係した力を発現できる。コスパは最悪だけどね。
「なんとか……うまくいったかしら?」
周囲は凍てついている。さっきまでの超高熱が嘘のようだ。
スカーディレはぱっと見ボロボロだが、何でもないかのようにこちらを見据えている。
「はぁ……あの子に今度会った時泣かれるかも」
いや、あの子に会いさえしなければバレることは無い……大丈夫だろう。
たとえ、その翼を捥がれようとも、胴体に風穴が開こうとも、その白き龍は気高さを欠片も失うことは無い。
そして、真龍はどれだけの負傷を負ったとしても、力が失われることは無い。何故なら真龍とは……生物を模したこの星触覚だとされるから。
空に……いや、地に影が落ちた。此処は標高約6000mの山頂だ。これより上にあるのは宇宙くらいの物で、空から降ってくるのは隕石くらいの物だろう。
空を見上げ、何があるのか確認した俺の表情は固まっていた事だろう。
「この山を更地にするつもりなの!?」
巨大な……それはもう巨大な凍星がそこにあった。ざっとの目算だが、直径が50mはあるだろうか。
ここまで来て死ぬつもりはない。星天の彗星を杖代わりに立ち上がり、息を整える。
両腕に付けている腕輪を付け替え、即座に効果を発揮する。噴雷の円環と同じように、両腕を重ねて腕輪ぶつけ合う事をトリガーとした効果の発動。
噴火のエネルギーを内包し、そのエネルギーで身体能力を高めるが、肉体への負荷が強いという物。更にもう一度、両腕を重ねて腕輪ぶつけ合う。
「効果時間は2分……それが終われば妾は一歩も動けなくなる」
短期決戦……残りの力を振り絞り、全身全霊の一撃で山頂から文字通り突き落として倒す。
たとえ真龍でも翼を捥がれては空は飛べないだろう……運動エネルギーによって倒し切る。
それに、このまま山頂で戦っていれば巨大な氷塊に潰されて死ぬ。
スカーディレは先ほどと同じ場所、つまりこのドームの端に居る。動けないのか動かないのかは分からないが突き落とすには好都合だ。
殆ど心中のような状況だと言うのに、凍星では慢心もしないのか、大量の氷弾や氷の槍の他当たった物を瞬間凍結させる冷気凝縮ブレスが雨あられと飛んでくる。
「雷よろしくね」
『分かっている』
飛んでくる攻撃を弾き、躱し、防ぐ。たったそれだけの事でもかなりの疲労で億劫だ。
それでも……一度始めた戦いだ。最後までやり遂げて見せる。
古の風が両足を加速させ、スラスターが体を押し出す。
「あなたも、なんだかんだ言って限界が近いのでしょう?」
いくら真龍とはいえ、限界が近いはずだ。戦い自体は数分だが積み重なったダメージはそれなりの物で、短期決戦を好む妾が文字通り死力を尽くしているのだ。
「決着を付けましょう!」
スカーディレの身体が白蓮の高電圧によって内側から焼かれてもなお、妾へと放たれる攻撃は一切衰えず苛烈を極める。
まるでマシンガンかの如き氷の刃の高速連射、小さな一軒家ほどある氷塊、大量の氷槍の雨……その全てを防ぎ、躱し、受け流して前へ進む。
たった数十mの距離が途方もない距離のように感じる。それでも白蓮の援護を受け、攻撃のいくらかを逸らしてもらい突き進む。
スカーディレまで目と鼻の先、ほんの5m程の所でスカーディレの周囲を白い霧が立ち込める。空気が一瞬で凍り付き、パチパチと言う音が聞こえる。
先ほどの周囲の光や運動エネルギーすら全て停止させる技程では無いが、近づくとまずい物だ。
だが、ここで引くわけにもいかない。
持っていたグラナークをオーバーロードさせ、その出力を引き上げる。本日二度目のオーバーロードだが、これが終わればもう戦う必要も無い。ゆっくり直せるはず。
その炎の刃を10m程に引き延ばし、スカーディレと共に一気に薙ぎ払う。急激な温度変化が巻き起こり、爆発すら起きるがこれで少なくとも近寄ることはできるだろう。
爆発を防具の防御力で耐え、耐えきれない分は歯を食いしばって耐える。
グラナークを捨て星天の彗星を両手で持つ。
あらん限りの力を振り絞り、一気に飛びだす。何時ものキレと比べればお粗末な物だが、正真正銘全身全霊を込めたその一撃は白き龍を貫くには十分だった。
ドームの縁から勢いよく妾とスカーディレは空へと飛び出した。スカーディレの巨体すら動かして見せた自分の力に驚きながら落下していくのを体感する。
「妾の……私の勝ちよ……スカーディレ」
スカーディレと共に自由落下していく……そこまでが妾の記憶だった。
名称:噴炎の円環
ランク:Ⅱ
装備部位:手首
内包スキル
星血:【特殊状態:炉心】状態となる
【特殊状態:炉心】:効果時間2分:再使用10分:身体能力が向上するが効果時間が終了するとスタミナをかなり消耗する。
星血決壊:炉心状態で再度星血を使用する:【特殊状態:炉心決壊】状態となる
【特殊状態:炉心決壊】:効果時間2分:再使用30分:身体能力が大幅に向上するが効果時間が終了するとスタミナを猛烈に消耗する。再使用には向かない。
大地の産声、拍動するそれは恵と共に現れた。その息吹をその身に宿す
スカーディレ/氷天龍
種別:真龍種
サイズ:超大型(50m級)
使用属性:氷・虚構
モーション
槍氷雨:大量の氷の槍を降らせる攻撃
凍結霧:周囲に凍結させる霧を撒く
氷塊弾:直径50㎝ほどの氷塊を飛ばす
氷刃弾:1m程の氷の刃を飛ばす
氷刃連弾:氷刃弾を最大10秒間連続で飛ばし続ける
龍氷刃連弾:5m程の氷の刃を飛ばす
アイスブレス:当たった物を凍結させる氷属性のブレス
大氷塊弾:直径2m程の氷塊を飛ばす
龍氷塊弾:直径5m程の氷塊を飛ばす
超大氷塊:直径50m程の氷塊を飛ばす
エントロピー0:周囲の光や運動エネルギーすら全て停止させる必殺技
作中で登場する個体は老いた老練個体
攻撃範囲等が上がっているがエネルギー制御が出来ていないのでずっと最大出力




