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黒鱗の狩人~龍人少女の狩猟日記~  作者: アルニクツエル
凍てつく北風の元へ

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36話:私/俺の意思

 戻ってきてから幾つか用事を済ませたり、調査員のロサリアとも話をしたりして、それなりに良い時間になったから装備も脱がずベッドで横になる。するとすぐに眠りについてしまった。身体は相応に疲労していたらしい。


 自然と目が覚めた。習慣で勝手に目が覚めたのだろう。

 洞窟の中なので時間間隔は分かりづらいが、時計を見ると今は早朝のようだ。だが、起き上がったりはせずだらだらとしていた。


 額に手を当て、ずっと考えている。

 村のみんなの意思は変わらないだろう。仮に必死に説得しても変えられない覚悟があった。ダム建設に反対する地域住民みたいな感じか。

 実際にはダムじゃなくて寒波で、説得できる人員も居ないんだがな。


 村のみんなの考え、スカーディレの力、ハンターとしての俺の力……このまま去るべきなのか。

 思考が纏まらない、空腹感もあるが食事をする気分でもない。昨日の事も帰って来てからの事を断片的にしか覚えていない。


 ベッドでただ無為に過ごしているとノックが鳴った。誰かが来たようなので体を起こし、玄関に声を掛ける。


「誰かしら?」


「俺だよおひいさま」


 ノックの正体はおやっさんだった。

 玄関を開けると作業服という訳でもなく、普段着のおやっさんが立っていた。


「寝てたか?悪い事をしたな」


「良いのよ、起きてたから。折角なら上がっていかない?お茶くらい出すから」


「助かる」


 おやっさんを家に案内し、椅子やテーブルがある訳では無いので適当にクッションに案内する。

 作り置きのお茶を自分とおやっさんの分出しておやっさんの対面に座る。


「どうしたの?別れのあいさつにでも来た?」


「いやぁ、そう言う訳じゃないさ」


「でしょうね」


「あの真龍なんて言ったか」


「スカーディレ?」


「そうそう、そいつ。おひいさまでも勝てないのかい?」


「……ずっと頭の中で戦い方を組み立ててるけど。無理ね……多分新しいハンター用アクセサリーを使ってトントン(相討ち)ってところかしら」


「……そうかい」


「それの確認に来たの?」


「いやぁ、違うわい。それに……おひいさまは迷ってるみたいだったからな」


 迷ってる……確かにそうだ。

 かなり無理をすれば勝てるかもしれないという誘惑がある。


「あら、おやっさんがお悩み相談?」


「おらぁ、仕事柄おひいさまとはかかわりが深いからな。エリカちゃんも弟子らしいからかかわりは深いだろうが、あの子はまだ幼いからこう言う悩み相談には向かんだろう」


「ふふっ、エリカちゃんが大人の悩み相談を受けている様子は面白いけどね」


「微笑ましいな」


「……実はね、ロサリアって言う調査員が昨日この家にやってきてね。この村から撤退するよう正式に通達されたわ」


「破ればクビってか」


「えぇ、そう。通達を破るという事はかなり罪深いのよ。これで勝手にスカーディレに挑んでもただの密猟者になるってわけね。いや、ただの自殺志願者かしら」


 正式な通達を破れば重い罰則となる。規律はハンターを縛るためでもあり、守るためでもある。俺の様なルーキーは特にだ。

 強力なモンスターが現れた際に勝手に実力の判断も出来ないルーキーが挑んで死なないように制限がかかっている。今回の通達もそれと同じで、俺にはハンターとして挑む権利がない。


「おらぁ、頭よかねぇからよ。難しい事は言えねぇが。おひい様がやりたいようにやれば良い。出て行こうとも、狩猟しようとも、止めはせんよ。でもな、これは村のみんなの総意だと思っていいが、出て行くって言うなら餞別くらいするし、戦うって言うなら協力くらいするさ」


「…………ありがとう」


「良いって事よ。結局悩み相談らしいことはできなかったがな」


「確かにそうね。でも……決めたわ」


「そうか、何か手伝う事はあるか?そのために来たんだ」


「ううん。いらないわ」


「何か必要なら言ってくれ。俺じゃなくても村のみんながおひいさまの味方だ」


「えぇ、そもそも。私はそのおひいさまなんだからね」


 おやっさんと話して悩みは吹っ切れた。と言うか、当たって砕ける事にした。

 リスクが高い?そんなのいつもの事だ。いくら考えた所でやってみなきゃわからない。


 首からかかっているハンターの証である金属タグを引き千切り、おやっさんに投げ渡す。


「やるのか?」


「やるわ」


「こいつは預かっておこう。受け取りに来い」


「あら、その頃にはハンターじゃないと思うけど?」


「おひいさまはハンターの信条を守っただけだ。誰が何と言おうとハンターだ……そうだろう!」


 おやっさんが大声を上げると、私の家の周囲から一斉に「そうだ!」と言う声がかかる。


「みんな聞いてたの?」


「あぁ……装備を運ぶのくらい手伝ってやるさ、行ってこい」


「行ってきます」


 玄関を出て村のみんなの間を進む。


「いってらっしゃい、アルテイシアさん」


「村を頼みます……ハンター殿」


「師匠!まだいっぱい錬金術の事教えてくださいね!」


 セシリア、村長、エリカちゃん……。


「また、うちの雑貨屋に来てください」


「農場が復活したら畑増やしてやるよ!」


「たまにはうちの食堂に来てよ!」


 雑貨屋のエリサさん、農区のロコルさん、食堂の店主のマハマさん……様々な人に声を掛けられ村を進む。


「貴女は大馬鹿者です」


「ロサリア調査員……」


「貴女はハンターの信条を守った。貴女が実力不足なら首に輪をかけて連れ帰っていましたが、挑むに足る力を持っていることは認めましょう」


一、環境と状況に惑わされず、ハンターは自身の考えを持て。


二、強大な脅威を前にしても、ギルドのハンターは常に団結せよ。


三、逆境にあろうと、最後まで抗い続けろ。


四、自然と人の営みを守り、調和させよ。


五、大地に暗雲がかかったのなら、皆で光明を灯そう。


————「この大地が、いつまでも豊かでありますように」


「しばしの間、私は目をつぶります。貴女は今ハンターでは無く、一個人として討つと良い」


「感謝します」


「では、良き狩猟を」

幾つか用事(戦闘準備)

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