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黒鱗の狩人~龍人少女の狩猟日記~  作者: アルニクツエル
凍てつく北風の元へ

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29話:黒曜を砕き、紅蓮を晒せ3

 フォルマグラ火山は立体的で広大な土地だ。大まかに上中下に分かれているが階層だけでも10近く、1つ1つの階層が小さな町がすっぽり入る程広大だ。それ故にセーフハウスが多数存在する。

 複数のハンターが常駐するギルドや採掘に来た一般人の為、セーフハウスも様々な物が備蓄されている。


「錬金台に簡易の鍛冶道具一式さらに小型の炉まであるとは……素晴らしい設備ね」


 ここは中層エリア3にあるセーフハウス。一時的退却後地図を確認してここにやってきたのだ。

 チェルム村の周囲に自作したセーフハウスとは雲泥の差だ。素人が作ったにしては良い出来栄えだと自負していたが……此処と比べれば子供の積み木に等しいな。


 十全な備蓄素材、修繕設備、休息用のベッドや料理用の炊事場が揃っている。恐らくだが専門の業者か何かが作ったのだろう。


「さて、まずは整備ね」


 装備の修繕を最優先に、次に消費した消耗品の補充だ。時間も惜しいのでなるべく手早く済ませよう。


 防具はさほどダメージを受けていないので問題なし。武器は未天の埋星(ケレベスタ)を優先して修復する。


 回転砥石を回し、水を少量ずつ垂らして研いでいく。残念ながら完全修復させるまで丁寧にやっていたらクエストが終わってしまうので砥ぎだけだ。

 回転砥石と手で砥ぐのは雲泥の差で素早く終わらせられる。本当は回転砥石では細かい調整などは難しいが俺には世界の小窓がある。それに回転砥石はよくおやっさんの所で使っていたので勝手も分かる。


「よし、こんなものかな」


 氷纏刃はセーフハウスに来るまでに確認したところ問題は無かった。恐らくだが、不溶氷に包まれていたおかげで熱の影響を受けなかったのだろう。それこそ溶岩の中に放り投げても短時間なら問題無いのではなかろうか。


 しかし、修復不可能な物もあった。フックショットに使用しているワイヤーだ。

 あまりの高温に晒され続けたせいかボロボロになっていた。先端部分は砥げば問題ないがワイヤーは俺の技術力では修復できない。

 錬金術では細かな物は変換や置換できない。錬金術も万能じゃないからな。発射機構等は生きているので飛び道具としては使えるけどね。


 白蓮にいつものようにジャーキーをやって、自分も齧る。折角食材や炊事場があるのでゆっくり食事をしたいが、そう言う訳にも行かない。


「さぁ、再戦よ白蓮!次からは雷属性を使って」


『光では無くて良いのか?』


「張り付く都合上雷は都合が悪かっただけ。感電したくなかったから」


 雷属性とは言うが厳密にはプラズマを司っていると言った方が分かりやすいか。プラズマには炎も含まれるが、火属性は温度関係だからな。


 さて、ハンターとしてグラウマグナクに対抗する策は無い。だが、手がないわけではない。


フックショット()を失った以上機動力で勝負はできないわ。なら……正面から迎え撃つ」


 シンプルにいこう。




 セーフハウスを出て、白蓮に掴まる。日に日に大きくなっていく白蓮はもはや俺を吊るしたまま移動する程度問題ない。

 前回と同じように火口の穴から下層へ降り、未だ戦闘の痕跡の残るマグマ間際のエリアに降り立つ。


「さて……ラウンド2ね」


 地面の振動を感じ、意識を切り替える。全身を氷が包んでいき、まるで氷の騎士鎧のように見える。

 背の未天の埋星(ケレベスタ)を尻尾で持ち、氷纏刃を繋げて氷のロングソードとする。


 明確にこちらに向かって近づいて来る振動。それが真下に来た瞬間2つの大剣を地面に突き刺す。

 俺が2つの大剣を突き刺すのとグラウマグナクが飛び出すのはほぼ同時だった。


 地中をまるで泳ぐかのように進んできたのか。中層で戦った際、火口へ飛び出すために肉体を超高熱にして石の壁を一瞬で融解し突き進んだのと同じか。


 ダメージは与えられたがこちらも空中に放り出された。近くに居るだけで高熱によってダメージを受けてしまう。

 高速で天上に進んでいくグラウマグナク。このまま天井に衝突して大ダメージを受けたくは無い。突き刺さった2つの大剣を振りぬき、グラウマグナクを蹴って着地する。


「切れたのは肉だけね……」


 やはり骨が固く、カウンターで叩き込んだ攻撃でも致命傷には遠く及ばないな。


「一撃で終わるとは欠片も思ってなかったけれど」


 岩の壁や天井を物ともせず縦横無尽に突き進んでいる。熟練のハンターでも手を焼くと聞くグラウマグナクの常套戦術。


 横の壁からの高速突進。それを飛び上がりつつ二本の大剣によるカウンターで弾き上げる。


「硬いわね……」


 巨体が高速移動する事によって生まれる運動エネルギー。

 重厚で巨大な体を空中に浮かせ、高速移動を生み出す推進力。カウンターで二本の大剣がぶつかっても碌に傷つかない超硬質な翼。


「左翼の根本にあれだけ叩き込んでもぴんぴんしてるとは驚きね」


 連撃を受けて切断とはいかなかったが、それなりのダメージのはずだ。それでもあの機動力を維持して攻撃してくる……。


 天井からの突進、右翼の一閃を二本の大剣を地に突き刺して逸らすように受け流す。先ほどの弾き上げるのと違って衝撃は地面に逃がせるのでまだましだ。


 受け流され、多少体を傾けながらもグラウマグナクは地面を高熱で溶かし、そのまま潜ってゆく。地面の一部が融解してマグマのようになっているのでそこから離れて剣を構え直す。


 対処をミスすれば致命的なダメージを受ける事になるだろう。集中力をかなり要する戦いだ。

 こちらの消耗はまだ大きくない。だが、このままこの攻防を続けるなら持久戦になる。

 カウンターでダメージを与えることはできるが、傷口を狙う事による堅牢な甲殻を無視してのダメージと比べれば雲泥の差だ。

 右翼に傷を作ろうにも、時間でも止めない限り同じ場所に攻撃を当てるなんて夢のまた夢。いくら何でもそれはできない。


 白蓮の攻撃手段はブレスをメインにしている。ブレスには少しの溜めが必要なので、この高速の戦いでは発射する頃にはまた地面に潜っているだろう。


 背後の壁からの突進。カーブを描くような軌道の旋回で右翼の一撃。これには態勢を低くしながらのコンパクトな振り上げで上に逸らす。


「ぴんぴんしてる……本当に?」


 おかしい。


 ここまでの攻撃は全て頭での突進か右翼の翼撃だ。頭の突進は噛みつきも狙っていたんだろう。最初しかしなかったのは恐らくカウンターを恐れての事だろう。


 だが右翼しか使わないのは?なぜ左翼を使わない?

 翼はカウンターで二本の大剣を叩きつけても、あまりダメージが通っていないと感じる程に硬い。正直一本なら弾かれていてるかもしれない。ブースターがついた大剣みたいなものだ。そんな翼なら武器に使うのは当然の流れで、実際今も翼の攻撃を受けている。


「もしかして、その左の翼って……攻撃に使えないんじゃないかしら?」


 飛行や地中を潜航するのには問題無くとも、攻撃に使用するにはそれなりの負荷がかかるのだろう。


「なら……反撃に移るとしましょう」


 さて、弱点は分かった。この攻防を維持しつつタイミングを見計らう。


 必要な物は右腕のハンターショットに装填している纏氷弾と攻撃の角度。

 纏氷弾は2発しか持って来ていない。そもそもこの錬金弾は数が少なく奥の手の類だ。1発は既に発射しており残りは1発しかない。もし外せばこちらの狙いもばれてしまうし、再度の発射も出来ない。


 そして角度。360度様々な方向から突進を受けているが下からの攻撃には纏氷弾を放っても意味がない。体の大半が地面に埋まっている状態で氷漬けにしても攻撃できる部位が無くなってしまう。理想はなるべく水平からの攻撃。


 問題はそれだけではない。周囲の地面が融解した穴によって足場が無くなってきている。このままでは足の踏み場が無くなり回避すら碌にできなくなる。


 出来る限り攻撃を弾きながら壁際に寄っていく。壁からの攻撃に対応できるギリギリまで近づき、壁からの攻撃を誘う。


「さぁ……来なさい」


 わざと壁に背を向けて両手で握る氷纏刃を地に刺す。そして目を閉じて剣に意識を集中する。剣を通じて振動を感じ、グラウマグナクの位置を探る。


 こちらの意図を感じ取ったのか、それとも違うのか。それは定かでは無いがグラウマグナクは俺の真後ろへと移動していく。


 これはある意味での真剣勝負だ。こちらが先に回避行動をとればそれに合わせられてしまう。こちらの回避が遅れれば直撃を受けてしまう。


 氷纏刃を握り直し、未天の埋星(ケレベスタ)を白蓮に投げる。そして氷の鎧を解き、ヘルムを投げ捨てる。この方法をするならなるべく身軽にしておきたい。


「さぁ、来なさい」


 その言葉を俺が呟いた瞬間地を揺らす振動が消える。刀身に反射し、グラウマグナクと目が合う。

 今までにない速度の突進に対して直感で飛び上がり、氷纏刃を足場に更に飛びあがる。そして右腕のハンターショットから纏氷弾を撃ちだす。


 氷纏刃は突進でなぎ倒され、ギリギリで跳躍した俺はその翼の一閃をスレスレで躱しきった。


 空中で態勢を立て直し、しっかりと着地する。すぐに状況確認のためグラウマグナクが進んでいった方向を見る。

 躱す際に発射された纏氷弾は見事に命中した様で、慣性によって進んだ先の壁にて首元から氷漬けとなっているのを発見できた。


「はぁ、上手くいったみたいね」


 倒れている氷纏刃を拾い、白蓮から未天の埋星(ケレベスタ)を受け取る。


 グラウマグナクが再び動き出す前に駆け寄り、背を駆け上がって一番深く傷ついた傷口から心臓のあるであろう場所へ向かって、2つの大剣を突き刺して息の根を止める。


「終わった……のよね?」


 動かないグラウマグナクの背に腰かけて一息つく。達成感と言い知れない疲労感が体に襲い掛かり、このまま疲労から来る睡魔に負けてしまいそうだ。


「さぁ、帰りましょう」


 グラウマグナクの死体の回収と解体などはギルドの方でやってくれるはずだ。

 刺さっている剣やヘルムを回収してから白蓮に掴まる。


「疲れたからこのまま上へ連れて行って頂戴な」


『我も疲労しているのだが』


「良いから行きなさい」


 その後も文句を言いながらも俺を連れて飛び上がり、そのまま出口へと帰った。

グラウマグナク/溶鱗竜

種別:地竜種

サイズ:大型

使用属性:火

モーション

火炎ブレス:口や噴出口から出す火炎放射

溶岩弾:人間一人を容易で殺せる大きさの溶岩を口や噴出口から出す。最大3発まで一度に吐き出せる

地中潜航:地面に潜り奇襲を仕掛けられる。火山洞窟内なら天井にも行ける

旋回溶陣:その場で回転し身についてる溶岩をあたりにまき散らす

旋回放陣:その場で回転しブレスを吐きながら溶岩をあたりにまき散らす

バーナーテール:尾の大型噴出口から炎を放出し周囲を焼き切る。

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