28話:黒曜を砕き、紅蓮を晒せ2
さて、思いついた策を実行するため一気に加速する。ブレスを撃った後の隙をついて一気に接近する。白蓮が援護するように収束された光のレーザーを放ち、着実にダメージを積み重ねていく。
天井にフックショットを放ち、振り子のように跳んでグラウマグナクの背に双剣状態の氷纏刃を全力で突き刺す。流石に効いたのか暴れるグラウマグナクに張り付き、フックショットと氷纏刃を繋げ固定する。尻尾の未天の埋星を白蓮に投げ、深く刺さった右側の氷纏刃を傷口を開くように渾身の力を籠める。両腕の貫通弾を0距離で連射し、ダメージをさらに与える。
傷口が広がるたび、洞窟に響き渡るほどの咆哮を上げ、体を震わせ振り落とそうとする。その度にしがみついて振り解きから耐える事になり、かなりスタミナを持って行かれるが確実にダメージを与えられ、グラウマグナクのスタミナを奪える。白蓮の攻撃は物理的な攻撃ではないので振り落される心配は無い。
しばししがみついてダメージを稼いでいると全身の噴出口から炎を吐き、エリアの中心にある火口へ向かって突き進み始めた。
「嘘でしょ!?」
無論入って来たときと同じように中心部は岩の壁になっている。壁になっていない場所もあるにはあるが今は思いっきり壁に向かって突き進んでいる。
全身に氷を纏い、右手の氷纏刃を散々広げた傷口に全力で突き刺す。その攻撃に全く怯むことは無く、スピードは加速していく。
双剣にしっかり掴まり、衝撃に備える。グラウマグナクの体表の温度が急速に上昇し、まるで溶鉱炉の前に居るかの様な高熱を感じる。火耐性の指輪と全身に氷を纏っているのにだ。岩の壁に衝突したものの衝撃が無く、岩の壁をまるでチーズでも溶かすかのように次々と突き進んでいく。張り付いている俺も強烈な熱でダメージを受けているが離れることが出来ない。
今離れたらこの溶けた岩の壁に足を取られて脱出できなくなる。そうなれば足を斬って脱出する事になるだろう。さらに言えばグラウマグナクが放っておく訳がない。
岩の壁を突き進むこと十秒程……火口のど真ん中に出た。
この隙にフックショットを氷纏刃から外し、刺さっていた双剣で傷口を一気に斬り広げるよう連続で斬りつける。
「白蓮!!」
穴を抜けて来た白蓮にフックショットを飛ばし、自由落下から解放され、空中に浮かぶ。
双剣の氷を解除して腰になおす。ポーチから中級の回復薬を取り出し、片手が塞がっているのでヘルムの下から口で加えて外してから飲んだ。
焼かれた体が癒えてゆき、火傷が無くなる。今後の事を考えスタミナ回復の錬金薬も同じようにして飲み、空になった瓶はマグマの湧き出る下へ捨てる。
「今の所順調……ね」
大したダメージを負わず、それなりに深いダメージをグラウマグナクへ与えることが出来た。
あの高熱化はマグマの鎧が実質無くなるので柔らかくなる。ただし下手に攻撃すればこちらにマグマが飛び散りそうだ。
「攻撃するなら溶岩の無い部位、または何らかの手段で固めた部位ね。理想はさっき傷つけた背中」
ただ、特に意味も無く溶けたマグマを纏っているだけとも考えずらい。飛ばしてくるぐらいは想定すべきか。
白蓮に下層の陸地部分に下ろしてもらい、周囲を見渡してグラウマグナクを探す。
そう時間をかけずグラウマグナクを発見することが出来た。なにせまるで水を得た魚のように溶岩の中を泳いでいるんだもの。
「……流石に溶岩の中に居座られると困るのだけど」
右腕のハンターショットに切り札を装填し、左腕には貫通弾を装填しておく。
溶岩から首を出したグラウマグナクがこちらに頭を向ける。ブレスを警戒してすぐに右へ走りだそうとした次の瞬間、グラウマグナクが口を開け今までとは違う炎のブレスがこちらに放たれた。
「っ!」
白蓮が氷のブレスで相殺してくれている隙に、瞬時に全身を氷で覆い大剣状態の氷纏刃と未天の埋星を地面に突き刺し盾とする。
氷のブレスの相殺が無くなり、大地を溶かし割る灼熱のブレスが二重の大剣によって遮断される。ただの高温では溶解しない程高熱に高い耐性を持つ不溶氷の刀身がゆっくりだが溶解し、未天の埋星が高熱に晒される。
「もたない!」
このままでは氷纏刃と未天の埋星が高熱で使用不可能になると判断し、上に左のフックショットを放ち上へ退避する。
「本当は隙を見て急所に撃ちたかったけど」
天井に張り付き、右腕のハンターショットを慎重に構え照準を定める。冷静に、即座に、的確に頭部を狙って切り札となる改造弾を発射する。
発射音でこちらに気づかれたがもう遅い。特殊弾が着弾し、ブレスを発射したままの状態でグラウマグナクが硬直する。周囲のマグマが急速に冷え固まり、狭い範囲だが着弾した頭部を中心に不溶氷が発生し、グラウマグナクが固まっていた。
纏氷弾……効果は見ての通りだ。着弾した地点を中心に不溶氷を発生させ、気温を急速に低下させる。材料がモンスター素材と言うのもあって残り9発しかない貴重な錬金弾だ。
フックショットを解除し、着地する。ハンターたるもの数十mの自由落下程度問題なく着地できる。
パっと見で未天の埋星は使用できないと判断し、氷纏刃を取り双剣状態に再展開する。刃を研ぎ合い切れ味に特化させる。
「見られてるのよ……いいとこ見せなきゃね」
マグマが冷え固まっている隙に一気に接近する。太古の風がさらなる加速を産み、一瞬のうちに身動きを取らないグラウマグナクに接近した。
そのままの勢いで跳躍し背中へ乗る。背中を駆け、2つの氷の刃が幾度も煌めき、グラウマグナクの背をその身の赤とは違う赤で染め上げる。白蓮も背中に降り立ち、ゼロ距離で氷属性のブレスを放ちさらなる凍結を与えている。
最後に左の翼の根本へ跳躍し、最速の双刃が堅牢な翼に振りぬく。耐久性を犠牲にした切れ味は儚く。翼を切り裂いたところで砕けた。だが、十全にその切れ味は発揮されたようで、堅牢な翼と言えど浅くは無い傷となっている。
「ここまでね、離脱しましょう」
『了解した』
作ったチャンスも時間切れだ。周囲の熱気も戻りつつある。フックショットで退避し、白蓮と共に未天の埋星の刺さっている場所まで戻る。
グラウマグナクは頭部を覆っていた氷を砕き、溶かし、周囲に高熱をまき散らし始めた。まるで先ほどまで力をセーブしていたかのように全身から炎が噴出している。
誰が見ても興奮状態だ。明確な殺意でこちらをにらみつけ、咆哮を上げる。火山全体が震える程巨大な咆哮に俺は耳を塞ぎ耐える。
何時でも高速移動できるはずだが、こちらに向かってにじり寄りながら全身の管から高熱の炎を放出している。
一言で言えば、怒髪天と言うわけだ。
「さーて……どうしようかしら」
とはいえ、やることは決まってる。
ポーチから丸い花火の玉のような物を3つ取り出し、導火線に火は付けず適当に投げる。火を付けなくてもこの灼熱の地なら地面に転がすだけで火がつく。
投げた玉に火が付き、爆発でも起きたかのように周囲に煙をまき散らす。この周囲の空間の視界が全く無くなり、グラウマグナクを視認できなくなる。グラウマグナクから見ても俺を認識できないだろう。
「一時撤退よ。煙玉の効果があるうちにね」
『上に逃げるでよいか?』
「それしかないでしょ!」
白蓮に掴まり素早く移動する。一時撤退し、状況を立て直して仕切り直す。
興奮状態だから逃げるというのもあるがな。
纏氷弾は着弾地点の半径5mに氷を発生させる弾。
副次的な効果として気温が低下する。
ゲーム的に言えば割合ダメージ+拘束




