19話:氷武者が夢の跡1
出来る限りの準備はした。冷気を防ぐ指輪、鎧に塗ると氷属性耐性を一時的に上昇させる錬金薬、体温を上げる錬金薬、鎧に入れる燃石等々……やれることは尽くしたつもりだ。
無論これらの防寒具は八重や白蓮にも装備している。八重は戦闘に参加しないが近くまで近づくために冷気対策をしておくに越したことは無いだろう。
「さて、行くとしましょうか」
朝食を済ませ、お弁当も用意した。準備を尽くし、体調も万全、意志もある。後はやるだけだ。
白蓮を連れて八重の所へと行き、事前に準備していた荷物を荷車へ載せる。
「二人共、今日もよろしくね」
「クックルゥ!」
『無論だ』
八重と白蓮にジャーキーを食わせてやり、その間に荷車と八重を繋げる。
俺が乗り込んだのを確認した八重が、何も言わずとも進んでいく。
日を追うごとに気温が下がっていく。氷属性耐性の指輪の効果のお陰でさほど寒さは感じないが、早朝という事もあって冷え込みはかなりの物だ。
「氷属性耐性の指輪はそうある訳でもないのよね」
エルーフェンレッドベリルはあまり量が無い。無論指輪を数個作る程度の数はあるが村の全員に渡せるほどの数は無い。無論氷属性耐性の指輪を作るための素材はエルーフェンレッドベリル以外でも作れる。氷属性か火属性のモンスター素材を使用すれば製作する事は可能だろう。
だからと言って無条件に渡せるわけではない。アクセサリー達の価値を知った者達が善良であるとは限らない訳だしな。
思考に耽っている間に村を出て森の中に入っていた。
森の生態系は既に壊滅に近づきつつある。生き物は殆ど見られず、一部の冷気に耐性のあるモンスター等のみが見られる。
「これは仮免没収かな……」
首からかかっている識別タグを取り出し、眺めていると愚痴をこぼしてしまった。
任されていた区画の生態系を壊滅状態にしてしまったのだ。クビで済めばいい方だろう。
「はぁ……クビになったらどうしよ。実家からの追手もすぐ来るだろうし」
本当に憂鬱だ。実家にはハンターとして世界を回ったら帰るつもりなのでそっとしておいてほしい……。まぁ、無理だろうけど。
まぁ、こんな大惨事になっておいて立派なハンターかと言われたら全然だろうけど。
「それでも……それでもこの原因は排除する」
原因は恐らくだが分かっている。だが今は目の前の脅威の排除からだ。センヒョウコウが村や周辺地帯を襲えば大型モンスター並みの被害となる。
センヒョウコウは中型モンスターだが、その戦闘能力は並みの大型モンスターに匹敵するだろう。
大樹のセーフハウスで少し休憩を挟む。装備や携行品の最終確認を済ませ、体温上昇の錬金薬を飲む。
セーフハウス内の竈で火を起こして部屋を暖めておく。八重にはセーフハウスで待機してもらう為だからだ。
「じゃあ、八重は上で待っていてね。留守番よろしく」
「クッククルゥ!」
「駄目よ、私は貴方に傷ついて欲しくない」
「クルゥ……」
『我は良いのか?』
「貴方は信頼してる」
『そうか』
「八重……貴方は冷気に弱いでしょう?無理してほしくないの」
「クルゥ……」
「大丈夫よ、心配しないで。白蓮もいるんだから」
「クルルゥ……」
その後も嫌がる八重を何とか置いて、天空のセーフハウスから飛び降りる。
胸の前で腕を重ね銀煌の緋妖精に内包された火の力を行使する。銀煌の緋炎を起動し、背に焼けるような熱を感じるようになる。すぐに落下が止まったのを見るに、実際に背は燃えているのだろう。だが、さほど熱くは無い。身が焼かれるという事は無いようだ。
ゆっくり上空を移動し、目標であるセンヒョウコウを探す。
「見つけた……」
捜索する事数十秒、発見することが出来た。
予想よりも進んでいる。5日と言う見積もりは甘かったか……だが、ここで倒せば問題ない。
一気に落下速度を生かして加速し、大乱風の足環の内包する太古の風が両足に発生し体を一気に加速させる。
未天の埋星を尻尾で持ち、両手で新たにプラウレドンの素材で作られた双剣黒鱗刃を両手で構える。こちらに気づいていないセンヒョウコウへ高速で突っ込む。
まるで隕石の様な落下攻撃は見事センヒョウコウへ命中し、決して浅くないダメージを与えた。
無論こちらも無傷とはいかなかったが……。
全身がむち打ち症を受けたように痛む。プラーナを全力で使用してもあの高度から加速した攻撃は反動が大きかったか。
「……まぁ、思ったよりはダメージは無いわね」
すぐに下級回復薬を飲み干し、ハンターの驚異的な自己治癒能力が直ぐに下級回復薬によって加速され、肉体のダメージを回復していく。
ある程度回復したところで三本の剣を構え直す。こちらをにらみつけるセンヒョウコウと対峙する。
いつものように、これが自然の調律者としての正当な物だと誰かへ言い聞かせるために口上を述べる。
「この先に存在する村及び、周辺地帯の保護の為センヒョウコウの討伐を行います」
さて、頑張るとしますか。
名称:黒鱗刃
分類:片手剣
ランク:Ⅱ
物理攻撃力:90
属性攻撃力:0
装備スキル:俊鋭刃:切れ味と扱いやすさに特化している。
十分な耐久性を持った上で軽く、とにかく扱いやすさが特徴。
黒い鱗が刀身に融合しており空気抵抗を軽減する。黒い翼の様な半月状の双剣。
ゲーム的に言えば会心率+10%+装甲突破15%




