17話:報告と冷気対策
調査に向かった翌朝、俺は報告の為集会場へと来ていた。
村長が待っており、いつも通り会議室で報告会をする事となった。
今回は村長と俺の二人だけだ。この冷気災害対策でセシリアは村のあちこちに行っているのだ。
「結論から言うと、天氷山にはたどり着けなかったわ」
「……そうですか」
「龍脈の確認もしたけど問題は無かった。恐らくモンスターによる災害と見るべきね」
村長が調査結果を聞き思案顔になる。だが報告はまだある続けさせてもらおう。
「天氷山及び周辺地域は異常な吹き降ろしが発生しており、その風はかなり冷たいわ。気温は寒冷地の真冬並みだったし、麓周辺に生息していたモンスターや動物の殆どがもっと寒冷地に居るはずの種ばかりだった。特に標高の高い山に生息する種が多かった印象ね」
「そうですか、村への影響などありますかな?」
「その件で1つ。センヒョウコウがこちらに向かってやってきているわ。周囲に冷気や不溶氷を撒きながらね」
「一大事ですな……」
「このままいくと、今の冷気災害がセンヒョウコウによって加速すると思う。村への到着は……このままのペースで5日ってとこね」
つまりそれまでに準備を整えて討伐しなければならない。さもなければ異様に溶けない氷で一部とはいえ森が浸食される事となる。
「一先ず冷気災害については置いておきましょう。まずは目の前の脅威についてですな、センヒョウコウの討伐を依頼したい」
「拝命しましよう」
「準備にどれくらいかかりますか?」
「センヒョウコウの冷気対策もですが、体を温める燃石を採掘しに行かなければならないので、討伐に行けるのは最低でも明後日でしょう」
「了解しました、後ほどセシリアから正式に依頼書を出させていただきましょう」
「分かりました」
さて、冷気対策におやっさんの所に行くとするか。
「無理じゃな」
「えぇ……」
「燃石で体を温めると言うのは元々鎧についとる機能だがな、例えば火の武器を作ったとして松明代わりにしかならん」
まぁ、分かる。だがそれでは駄目だろうな。そもそも火属性のモンスターを狩猟していないから選択肢にも上がらんが。
「お主の方こそ何か作れたりせんのか?」
「錬金薬はもう大量に作ってあるけど、あの冷気の中で戦うのはきついわね」
「そうでは無くてじゃな、宝石細工できるんじゃろ?」
「あぁ……」
装身具か……。成程、確かに変質性結晶体を指輪や首飾りにすればスキルを内包した物になるかもしれない。
「いや、作ろう!で作れないわ」
「馬鹿かおぬしは。最初からロングソード作ろうとするな。ナイフや小刀から作るもんよ」
「そうじゃなくて、技術的に可能なのかって事」
「錬金術とかで何とかならんのか?」
「そんな便利な物でもないんだけど……分かったわ。とりあえずやってみる」
「おう、良い物があったら売ってくれ」
「あればね」
「あと、燃石は多めにできるだけとっておけ。今後もこのまま冷えるなら必要になるはずだ」
「そうね……分かったわ。じゃあ帰って試作品を作るから」
「おう、また来い」
という事で家に帰る。ついでに体を温める生薬を雑貨屋で買っておこう、生姜や唐辛子だな。
畑の方にも作るようお願いしておこう。これからも気温が下がるなら多めに作っておいて損は無い。
買い物を手早く済ませ家に帰った俺は、すぐに二階の作業部屋に入り宝石を並べる。
エルーフェンレッドベリル
レア度:Ⅲ
分類:宝石
内部に太古の火の力を内包し、常に揺らめく輝きを放つ宝石。
適切なカッティングを行う事で何倍にもその輝きを増す。
火属性で相殺とするならこれだろうな。幸い一粒一粒が大きいし、数もあるから幾つか試作品にしても良いだろう。失敗した時用に火傷の治療薬は準備しておくか。
「よし……やりましょう」
宝石の加工は慣れている。ただ、今回は内部に爆弾が入っているから慎重に行かなければならない。
ヘルムを脱ぎ、木槌やヤスリと言った道具を準備する。
一先ず作るのは指輪にしよう。リングは銀でエルーフェンレッドベリルの小さい物を付けてみよう。
軽くデザインスケッチを描き、それに使えそうな物を選んでいく。小粒のエルーフェンレッドベリルを1つ取り出し、クランプで固定しておく。
ヤスリで削り、エメラルドカットに削る。仕上げ等は本当はディスクグラインダーとかが欲しいが、プラーナで脳筋に行う。適時世界の小窓を活用して調整を行う。銀のリングは面倒になったので錬金術でリング状にしてから削って調整する。
「本職の錬金術師が見たら憤死しそうね」
調整したシルバーリングにエルーフェンレッドベリルを嵌めて完成だ。
エルーフェンレッドベリルの嵌め込まれたシルバーリング
ランク:Ⅰ
装備部位:指
内包スキル:無し
文字通りエルーフェンレッドベリルの嵌め込まれたシルバーリング
効果も特になくただ暗闇でも赤く輝く指輪
「そう簡単にはいかないか……」
そりゃそうだわな。だが、この程度でへこたれはしない。
それから俺はいくつもの失敗作を作り出した。芸術性を意識した物、竜人族の文様を刻んだもの、カットを変えた物等々だ。全てただの懐中電灯代わりにしかならんが。
「何かが足りないのか?」
モンスター素材の武具を作るのもそう特別な事はしていない。それはプラウレドンシリーズの製作を手伝った際に確認している。もしかしたら見えないところでやってるかもしれないがな。
「仕方ない……」
今回はズルをさせてもらおう。彫金師の腕だけで作りたかったがもう日が暮れ始めている。
一階に降りて錬金台をセットして新しいクリスタルの板に紋様を刻み込んで嵌める。
ここまでやったんだこの程度のズルは許されるだろう。そもそも芸術品を作る技術で特殊な力を持たせられるか?って言う問題もある。
紋様に血を垂らし、失敗作のリングを1つ真ん中に乗せ起動する。
一瞬粘土が踏みつぶれた様になった後すぐに元の形に巻き戻った。変化が完了したのだろう。
「頼むから成功しててよね」
名称:氷属性耐性の指輪
ランク:Ⅰ
装備部位:指
内包スキル
氷属性耐性:装備者の氷属性に対する耐性を向上させる。更に、冷気によって受ける影響を軽減する
■■■■たる|■■■■■■■・■■■■・■■■■■■《アルテイシア》が世界で初めて作り出した特別な力の宿る指輪。
装着者に停滞を拒む力を与える。
「良かっ……本名を乗せないでよね」
一先ず出来たという事はこの方法で今後作ればいいか。自分用はこれで良し、後で八重の分で大きな物を作っておこう。
丸一日掛かったとはいえ出来たのなら、もっと直接的に戦闘に役立つ物を作ってみたいな。
「せっかく面白くなったんだし、もうちょっと頑張るとしましょう」
さぁて、フェステル翠玉柱塊で作ってみようかな。
ランク
装備などの基準になっている物
素材となったアイテムのレア度の半分がランクとなる。
鉱石系なら素材の入手難易度の低さから0.75倍
アルテイシアの本名
アルテイシアと言うのは本人が本名から縮めて付けた名前。
もし気軽に本名を名乗ったら実家にドナドナされる




