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黒鱗の狩人~龍人少女の狩猟日記~  作者: アルニクツエル
凍てつく北風の元へ

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15話:解体と調査依頼

 村に帰った俺は村のみんなからの視線を集める事となった。向かっている視線はプラウレドンへの物が大半だが俺への視線も多い。

 中型以上のモンスターを間近で見る事など殆ど無いので無理もない。そんなモンスターを倒した俺への視線も、うぬぼれでなければ尊敬のまなざしがあるように思う。


 人を何とかかき分けて自宅にたどり着いた俺は、庭にプラウレドンを下ろす。八重に繋がっている荷車を外しておく。庭で日向ぼっこを始めた八重を横目に作業を始める。


 鱗や爪をはがして種類ごとに分別する。皮を剥ぎ、頭部を切り落とす。その他にも使えそうな部位を探すのだ。

 まずは鱗を剥す事からだな。袋を用意し、剥した鱗を入れていく。


 黙々と作業をしているといつの間にか手伝ってくれる者が居た。


「あら……いつの間に?」


「ついさっきだ」


 居たのはおやっさんだった。 鱗を剥いて袋の中に入れてくれており、正直俺より手際が良かった。


「どうしてこっちに?」


「なに、どうせこいつの素材で武具をこしらえるんだろう?」


「えぇ、そのつもりです。防具を作って貰おうかと」


「だろうな、そいつぁ貸出品だから下手に強化も出来ん」


「えぇ、ほんとに」


「そんでせっかくなら素材の品定めついでに手伝ってやろうかと思ってな」


 村の鍛冶屋として忙しいのに来てくれたのか。追い返すのも悪い、ここは厚意に甘えよう。


「……恩に着ます」


「良いって事よ。素材の扱いが悪いかとも心配だったしな」


「……悪いですか?」


「いや、上出来だな。戦いで素材が傷つくのは仕方ないが、その後の処理でダメにする駆け出しを腐るほど見て来た」


 もし欲しい素材があってそれが手に入るかどうかは戦闘で変わることがある。鱗を一切傷つけるなとか無理な話だからな。


「長期保存用の保存液も良いもの使ってるみたいだしな」


「自家製よ」


「おう、売ってくれ」


「仕事が増えてく……」


「金が入っていいじゃねぇか」


 俺は実は金があまりない。多少の余裕はあるがクエストの報酬で支払われる報酬金額が半分ほどだからだ。

 これは俺が今だ仮免ハンターと言うのが大きい。信用度の問題で支払われる報酬が少ないのだ。


「今弟子とっているので、その子にレシピを教えておきます」


「あぁ、雑貨屋の子か」


「えぇ、そうです」


「素材をここまで丁寧に扱っているのは日頃生物を解体してたやつだろう。”あっち”じゃ贅沢してたんじゃないのか?」


「……錬金術の師匠が素材は自分で取れるようになれと言って森で狩りをさせるような人だったのよ」


 こうして実家から家出してハンターを目指したのも、この技術を生かせると思ったからだしな。


「なるほどなぁ。解体もその時にって事か」


「えぇ、お陰で大分逞しく(たくましく)なったわ」


「元気なのは良い事だ」


 プラウレドンの解体が終わり取り巻きのプラウレの解体を始める。

 やる事は一緒だ。鱗を取って、皮を剥ぎ、爪を剥ぐ。


「今のうちに聞いておこう。防具に何を求める」


「……機動性・可動域の阻害を無くす方向で」


「あい分かった。まぁこいつ(プラウレドン)の素材なら自然とそうなるか」


「プラウレドンと私の戦闘スタイルは近いわ。機動力と重い一撃」


 モンスター素材の力を引き出し、それを身に纏う。ハンターの鎧は防具としてよりもパワーアップアイテムとしての側面が大きい。

 一般人は装備スキルどころかスキルと言う単語すら知らないが、俺には世界の小窓があるからな。装備についているスキルや性能を把握できると言うのは大きな利点となる。


「防具に尻尾は使わんのか?」


「えぇ、あの子に使いたいのよ」


 そう言って壁に立てかけている未天の埋星(ケレベスタ)を指す。未天の埋星(ケレベスタ)が進化に戦った素材を要求すると言うなら、プラウレドンの素材なら尻尾を使いたい。


「尾は確かに武器に使うのが一番だからな」


「じゃ、そういう事で」


「素材はこっちで預かるでいいんだな?」


「えぇ、防具一式の作成をお願いするわ」


「双剣は良いのか?」


「多分素材が足りないと思うから」


「いや、変わり種は無理だが、ギリギリ作れると思うぞ」


 変わり種と言うのは別に求めていないが……作れるというなら任せよう。


「じゃあ双剣もお願い」


「あいよ。じゃあそのスティルトソード寄こしな」


「んん?」


「そいつを素材にする事で強力な装備になる」


「なるほど……分かったわ」


 獲物(武器)が無くなるのは痛いが、しばらくは予定が入って無いし大丈夫だろう。



 予定は無い、そのはずだった。

 プラウレドンの討伐から数日後。俺はまた村の集会場に呼び出されていた。

 理由は明確だ。気温がずっと低下し続けている。北部にある天氷山から吹き降ろす風は肌を肌を裂くように冷たい。このままでは農作物や生態系にも影響があるだろう。


 集会場の会議場にはいつも通りセシリアが待っており、他には村長がテーブルに着いていた。


「お待ちしておりました。どうぞ座ってください」


「大まかな要件は分かっているつもりよ」


「はい……この異常気象の原因の調査をお願いしたいと思っています」


「その前に一人の竜人族として言っておくわね。ただの気象変化じゃないわ」


「そう……ですか」


 竜人族は共感能力を持つ。それを用いて天気予報士をやっている者も居る程度には正確だ。精度や感度は個人差があるが、少なくとも俺は高い方とは言っておく。

 結論から言えば気象的にはおかしな所は何もない。太陽が隠れている訳でもないし、日光はいつも通りだ。まるで真冬に大型の台風が来ているような気分だな。


「我々はこの気温低下を何か原因があるものとしています。龍脈の異常やモンスター等ですな」


 村長の言う通り龍脈やモンスターならありえなくは無い。


「妥当ね。でも……」


「竜人族の錬金術師であられる貴女が居る限り、龍脈の異常などすぐにお気づきになられるでしょう」


 気づけなきゃ錬金術師引退してるわ。


「つまりモンスターが原因と言うわけね」


「そうです。仮に龍脈の異常だとしても貴女ならお気づきになられるかと」


「依頼内容は北部の森林地帯と天氷山の調査です。緊急依頼とはしませんが早急な遂行をお願い致します」


「拝命したわ。明日にでも調査に向かわせてもらうわね」


 さて、そうと決まれば装備と冷気対策ね。早速準備しましょう。

龍脈が狂うとその周辺地域のエネルギーバランスが狂うので気温が上昇したり、湿度が上がったりと言う変化がある。

竜人族の共感はそれを察知出来るので天気予報士扱いされる。

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