14話:ホップ!ステップ!スラッシュ!下
戦場が森へと移行してかれこれ一時間が経過した。
プラウレドンはかなりの数のプラウレを引き連れておりそれらから引きはがす必要もあり森の中で戦う事にしたのだ。
木々の間を縫うように戦い、木を盾にしてハンターショットの散弾で牽制する。プラウレドンの一番の武器である尻尾の薙ぎ払いは木を切り倒す。だが、木が目隠しになるのでしゃがみやジャンプで躱しやすい。
白蓮に取り巻きのプラウレの処理を任せ、俺はプラウレドンとの戦闘に集中する。
アンカーで大樹の枝に移動し、木の上から飛び降り、思い切り力を溜めた未天の埋星を空から頭部に叩き込む。
何度もダメージを受けた頭部は蓄積したダメージが目に見える形となって現れた。棘の様な硬質なトサカが砕け、よろめいた。目に見える傷が残り、疲労が見える。
未天の埋星の追撃を撃ち込み畳みかける。だが……。
「ちょ!」
振った未天の埋星が横跳びで躱された。そのままジグザグのサイドステップでこちらに急接近し、その勢いのままの尻尾の一閃が俺に直撃した。
未天の埋星の防御が間に合わず、吹き飛ばされる。
「ケホッ、ゲホッ……白蓮」
取り巻きを牽制していた白蓮を呼び戻し、時間を稼いでもらう。氷のブレスや突風がプラウレドンに襲い掛かり白蓮へと意識が移った。
ポーチから中級回復薬を取り出し、一気に飲み干す。回復薬・治療薬と呼ばれる薬は瞬時に治ることは無い。ゆっくり治る為即時の戦線復帰はできない。
ハンターショットに貫通弾を装填し、牽制しつつ傷の回復を待つ。ついでに簡易のシャープナーで剣を研ぐ。
白蓮は普通の飛竜ではない、”全て”の属性を操る飛龍だ。空気を操り高速で飛び、熱量をコントロールしてブレスとして放つ。
戦闘訓練もしっかりこの1ヶ月こなしている。純粋な攻撃力なら大型の飛竜に匹敵するだろう。時間稼ぎくらいわけないはずだ。
十分休めた、戦線に復帰しよう。
「もう十分よ、取り巻きお願い」
『了解した』
未天の埋星を構え、右の貫通弾を連続で打ち込み意識をこちらに向ける。
撥ねるように移動し、高い機動力を持つプラウレドンの突進を躱しつつ、貫通弾と散弾を撃ち込む。
沈み込むように深く踏み込み、未天の埋星と両手のスティルトソードとドラウドラショートソードをサソリのように構え、一気に加速しプラウレドンを通り抜ける。通り抜けざまに3本の剣で切りつけ、直ぐに切り返してもう一度すり抜けざまに斬りつける。
この高速移動による戦闘方法は本来スピード特化のハンターが行う方法だ。俺の様な大剣を使う者がやる戦闘法じゃない、何故ならスタミナが直ぐに無くなるからだ。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
三度も繰り返すとスタミナが尽き、肩で息をすることとなった。ポーチから疲労回復を助ける錬金薬を取り出し、手早く飲み干す。口の中に人工甘味料の様な味が広がる。体から疲労感が急速に抜けて行き、次第に息が整ってゆく。
プラウレドンもダメージが響いてるのか、幸いこちらに飛び掛かる様子は無い。互いにスタミナを回復させ、俺は武器を、プラウレドンは特徴的な尾を構える。
堰を切ったように互いに距離を縮め、互いに互いの武器をぶつけ合う。跳ねるように素早く移動するプラウレドンはこちらの貫通弾を易々と躱し俺に一瞬で近づく。
俺に近づいて来る勢いを利用し、サマーソルトキックのように宙返りに跳び、その尻尾を俺に叩きつけてくる。行動をある程度読んでいたので未天の埋星で弾きかえす。
「今!」
弾き返した隙に白蓮の氷属性ブレスがプラウレドンの後ろから放たれ、着地したプラウレドンはブレスによってバランスを崩し、倒れ込んだ。
すぐさま追撃の為、左腕のハンターショットからアンカーをプラウレドンに撃ち込み。巻き取りの力も合わさった高速移動でスティルトソードと未天の埋星をずっと攻撃し続けていた頭に叩き込んだ。
攻撃がかなり効いたようで大きな呻き声を上げる。すぐに起き上がり、こちらを向くその体はもはや立っているのもやっとなほどフラフラだ。されどその眼にはしっかりとした意思が宿っており、こちらを見据えている。
「……最後ね」
両手の剣を地面に刺し、尻尾の未天の埋星を両手に持ち替える。
最上段に構え、しっかり腰を下ろす。こちらの意図を理解したのかは分からないがプラウレドンも背を低くしこちらを真っ直ぐ見据える。まるで剣の達人の立ち合いの如く真剣勝負の雰囲気が立ち込める。白蓮は取り巻きを全て処理したのかこちらの様子を見ている。
先に仕掛けたのはプラウレドンだった。跳ねるようなサイドステップでジグザグとした移動で間合いを詰める。勢いを乗せ体を回転させた尾の薙ぎ払いだ。
一歩後ろに躱せば俺の勝ちだ、だがそれは何か違う。心意気を買いたいのだ。両手で握る未天の埋星を薙ぎ払いに合わせ全力で振り下ろす。
互いの必殺がぶつかり合う。火花が辺りに飛び散り未天の埋星が一瞬押し返されそうになるのを両足と尻尾で踏ん張り、大地を割る勢いで振りぬく。
プラウレドンの尾が切り飛ばされ、俺のヘルムを吹き飛ばす。振り下ろされた未天の埋星はプラウレドンの命を絶ち切っていた。
血に濡れて赤く染まった髪が風に揺れ、俺の深い吐息が溶けていく。
「狩猟終了ね」
未天の埋星を杖代わりにして疲労を回復させる。
初めて中型モンスターを討伐した。これは脱未熟者と言って良い成果で、これからは堂々とハンターと名乗れる技量を持ったと言える。
まぁ、資格的にはまだ仮免許みたいなものだが。
「八重を呼んできて」
『了解した』
ジャーキーを渡したら喜んで呼びに行った。元気な物だな……。
待つ間に疲労回復の薬を追加で飲み、ジャーキーを齧る。流石に小腹も空いたしな。
しばらくすれば台車を引いた八重がやって来たので八重にもジャーキーを食わせてやり、荷台にプラウレドンを乗せる。
家に帰ったら解体して有効活用させてもらうとしよう。肉などは森に帰すが鱗や爪等は有難く頂き、装備に使わせてもらう。
取り巻きの良質な個体と、斬り飛ばした尾や砕けたトサカ等も回収し、村への帰路に就く。
プラウレウドン/蛇尾竜
種別:地竜種
サイズ:中型
使用属性:無し
素早い軽快なステップと蛇腹剣のように伸びる尻尾が特徴の全高3m全長5m程のモンスター
黒っぽい鱗と棘の様なとさかの頭部
モーション
ステップスラッシュ:サイドステップで近寄りながら尻尾の一撃を放つ
サマーソルト
タックル
頭突き




