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黒鱗の狩人~龍人少女の狩猟日記~  作者: アルニクツエル
凍てつく北風の元へ

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12/41

12話:異変の始まり

 村を出て体感時間2時間が経過した。実際の時間は分からないがそれなりの時間が経過した。

 日が出て間もない早朝に出発し、商人たちと軽い雑談をしながら進んでいるのでさほど退屈はしていない。

 出発の際の顔合わせ等も良好に済ませられたのが幸いしたのか話も良く振ってくれるのが救いだ。


 雑談が切り上がったところで水を飲み、ジャーキーを取り出して齧りつく。最近作った物で燻製の匂いがまだ強く残っており周囲にその匂いが漂う。

 八重と白蓮にもジャーキーをやると相変わらず喜んで食べる。


「さて、そろそろかしらね」


 前回商隊が襲われた地点に近づいてきた。ジャーキーを一気に食べ、水で流し込む。

 ハンターショットと双剣を確認し、周囲に意識を配る。


「来た」


 八重を走らせ一気に加速する。隊列の右側を高速で進み、商人たちの驚く顔と声が聞こえる。

 風を切り、一瞬で先頭にたどり着くのと小型の地竜種プラウレが5匹道を塞ぐのは同時だった。


 双剣を抜刀し八重から飛び降り、そのままの勢いのまま瞬時に5匹のうちの1匹に双剣で切り裂く。


「治安及び、人命保護の為。ハンターズギルドからの緊急依頼によりプラウレの討伐を行うわ」


 宣誓を素早く終わらせ武器を構え直す。

 左腕のハンターショットを発射し散弾がプラウレたちに満遍なくダメージを与える。

 最初の攻撃である程度意識はこちらに向いていたが、これで完全に向いた。街道から外れ森の方へ誘導しながら右腕のハンターショットで貫通弾を最初に双剣で切りつけたプラウレに撃つ。


 肉食モンスターは見た目が草食モンスターより小さくともタフな事が殆どだ。なぜならたくさんの生物を食らってそれを糧にしているから。

 大量の餌を食らえばそれだけ強靭となり、簡単には倒せなくなる。捕食者故に鋭い牙と爪はかなりの脅威だ。


 貫通弾が命中し、そのままもう一体のプラウレにもあたった。二体目は貫通しなかったが十分なダメージになったはずだ。

 流石にこれだけのダメージには耐えられなかったのか初撃の双剣を受けたプラウレは貫通弾によって倒れた。

 

「まずは1体」


 同族が殺されたことに怒ったのか俺の方に一気に近づいて来る。

 好都合だ、このまま街道から離れて平原で戦う事にする。


 小型肉食地竜種プラウレ……硬質なとさかのあるトカゲの様な小型竜種。尻尾が鋭利な鞭となっているのが特徴的。

 5匹前後の群れで行動し、草食モンスター等を狩って住処に持ち帰ると言った生態をしている。


 飛び掛りをステップで躱しつつ、右手のスティルトソードでカウンター気味に振り抜く。

 切れ味に特化したスティルトソードは容易にプラウレの鱗を切り裂き、また1匹亡骸となった。


 商隊が予定通りこちらを無視して街道を進んでいく。俺がプラウレ達を相手している隙に速度を上げて振り切る……予定通りだ。


 商隊に意識が向かないように左腕の散弾を再度発射する。流石に分散してるのもあって碌なダメージにならないがこちらに意識は向かせられた。

 ハンターショットに装填できる弾数は5発。予備弾薬はあるが戦闘中両手に武器を持っている状態では装填はできない。


 肺の空気を一度吐き、大きく吸い込む。短く吐き一気に加速する。集中が再度高まり、空気が重く感じる。

 プラウレとの距離が瞬時に無くなり、そのままの勢いで首を飛ばす。


「白蓮!!」


 俺に飛び掛かってくる個体を炎のブレスが焼き払う。最後の一体に貫通弾を2発撃ち込むと辺りには静寂が残った。


「戦闘終了ね」


 安堵の入った深い息を吐き、剣の血を払う。剣を腰に戻し、ハンターショットの弾倉を交換する。


 プラウレの死体を八重が引いていた台車に積み込んでいく。

 ハンターとしての特権として肉以外の鱗や皮と言った素材は手に入る。プラウレの素材はさほど価値の高い素材では無いが、無駄にはしたくない。


「八重はここで荷台と一緒に留守番ね、白蓮はここで八重の護衛をお願い」


『承知した』


クックー(わかったー)


 生息地域から大きく外れたこのエリアにプラウレは来た。来た方向は右側つまり北部だったがこのような事はそうない。

 無論モンスターに襲われるといった事案はあり得る。縄張り争い等で生息分布が変わる事はある。だが、この地域ではそれは無い。プラウレが頂点捕食者であり、飛竜種でもやってこない限りありえない。そして飛竜種がやってきたら少なくとも気づく。



 北部森林地帯……そこは肉食の地竜種プラウレの縄張りと言って過言ではない。プラウレの頭としてプラウレドンと言う個体がおり、群れ全体を統率している。

 森に少し踏み込んだだけでも変化は見て取れた。普段はある程度深部に踏み込まなければ見かけなかったプラウレ達がそこら中で見られ、それ以外のブールファン等のモンスターは一切見えない。


 つい先日の巡回まではこのような事は無かった。つまりつい最近何かしらの原因が発生して現在の状態になっているとみるべきだ。

 このままプラウレがのさばっている状態はまずい。もしプラウレの大群が村を襲えば大変なことになるだろう。


「深部の調査が必要かも」


 原因を調べるためには奥に行くしかない。

 幸い白蓮や八重が居なくともフックショットでターザンのように高速移動ができる。奥へ進むのは容易いはずだ。


 炸薬によってアンカーが射出され、背の高い樹木の上部に突き刺さる。すぐに巻き取られ、体が一気に空中に飛び出す。もう一方のハンターショットからもアンカーを射出し、さっきまで使っていたアンカーを外し、巻き取られたアンカーが再度射出できる状態になる。振り子のように木々の間を進んでいき、一瞬で広大な北部を突き進む。


 暫く木々の間を進んでいくと興味深い物を発見する。明確にこの辺りには生息しないはずのモンスターを発見したのだ。

 寒冷地帯に生息する小型モンスター等が中間地帯に多数見られる。1匹や2匹であれば北部の山脈から降りて来たはぐれだと流せる。だが……。


「多すぎるわね……」


 目視できる範囲でも数十匹はいる。無論全て同じ種と言う訳では無く複数種が見られる。

 木の上で周囲の確認しつつポーチから温度計を取り出し気温を確認する。


「……気温が低い」


 この周辺地域の気温は温暖で安定しており、20度前後と言ったところだ。だが温度計は14度を指している。体を動かして体が火照っているせいで気づくのが遅れた。

 周囲のモンスターの分布を記録しておく。これが一時的な気温低下なら問題ない。精々小型モンスターの分布はすぐに戻るのでその調整を行うだけだ。


「もし違うなら……そんなわけ無いか」


 一先ず原因は判明した。目下の問題はプラウレの村への襲撃対策だな。


「プラウレドンの討伐……か」


 プラウレの統率者であるプラウレドンの討伐が必要だ。プラウレが散り散りになれば仮に村に来る個体が居たとしても極一部となる。

 捕獲はできない。捕獲して落ち着いたら離すというのは、この気温低下が落ち着くまで村で保護できる前提の話だ。そんな余裕はない。プラウレドンは毎年女王蜂のように生まれるので絶滅は気にしなくても良いだろう。


「大剣が今日には完成するはず。受け取ったら討伐に向かおう」



 緊急依頼を終えた俺は村に帰ってセシリアへの報告を済ませた後、鍛冶屋に来ていた。

 勿論装備を受け取る為だ。ちなみにプラウレの剥ぎ取りなどは済ませているのでその素材も一緒だ。


「……確認しな」


 工房に入った俺へヴォルフのおやっさんはそう言って、布にくるまっている物体を指した。

 見たら分かる程に疲労困憊となっており、根性で起きている状態だ。


 布を剥ぎ取ると身長ほどの大きさの黒い大剣が姿を現した。

 素材として提供した鉱石達がまるで星のように輝く夜空の様な美しい刀身。刃はグラデーションでまるでオーロラのようだ。


名称:未天の埋星(ケレベスタ)

分類:大剣

ランク:Ⅱ

装備スキル:希望の星


「会心の出来だ……文句は言わせん」


 正直言葉が出なかった。もはやこれは芸術品とも言える美しい剣だ。

 機能美と芸術的な美が同居した剣。


「ランクⅡ……?」


 素材に使用された鉱石を考えればてっきりランクⅢになるかと思っていた。


「そいつは卵だ……そいつでお主がどんな強大なモンスターを狩るのか。そいつを使って倒した素材で強化してやる事でこいつはまだ見ぬ星となるのさ」


 卵……卵ねぇ。新しく分岐した進化ツリーの一番下と言う事か。素材の量が足りなかったか……失敗にはならなかったが十分強化にはなった。


「使わせてもらいます」


 代金とは別に疲労を回復させる薬を置いておこう。オ□ナミンみたいな物だが気休めにはなる。


「庭を使え、問題ないとは思うが変なところがあれば直してやる」


「じゃあ遠慮なく」


 おやっさんはいくらか回復した様で、立ち上がって案内してくれる。

 家の中を真っ直ぐ奥を進み、庭に出る。試作品らしき剣や大斧が端に転がっており、以前から試し切りに使っているのか木人等がある。


「散らかっててすまんな」


「気になりませんよ」


 まずは両手で持ち、教本通りとも言える縦の振り下ろし、横の薙ぎ払い、斜めの切り上げ……一通りの動きを行う。

 元々が扱いやすさを重視した大剣だった事もあり扱いやすい。ゲーム的に言えばクリティカルが出しやすいと言ったところか。


「では……」


 未天の埋星(ケレベスタ)を尻尾に持ち替え、腰の2つの剣を引き抜く。

 大剣と双剣による三刀流が俺の戦闘法だ。双剣を盾代わりにし、大剣の薙ぎ払いで攻めると言うのが俺のスタイル。


 大剣を横凪に構え一気に加速し木人を横薙ぎに切り払う。俺の尻尾は両手で持つ場合のおおよそ75%相当の筋力となる。一概に筋力だけでは比較できないがな。

 尻尾の利点は鞭のようにしなる事と、関節が多い事によるコントロールの精度。さらに言えば両手が開くと言うのもあるだろう。


 大剣を片手剣のような攻撃速度で振るい、木人を細切れにする。


「良い武器ね」


「あたりまえだろ」


 これで準備は整った。弾薬はまだ残っているし、薬は殆ど使ってない。明日にでも挑む事にしよう。

 ハンターになる為の教練で闘技場にて何種類かは戦ったが実戦は初めて……。


「いや、違うか」


「ん?どうした」


「あぁ、ううん。何でもないわ。とにかく、今日はもう帰るわね」


「あぁ、また来い」

名称:未天の埋星ケレベスタ

分類:大剣

ランク:Ⅱ

物理攻撃力:180

属性攻撃力:0

装備スキル

希望の星:的確な攻撃クリティカルを行った際に与えるダメージが向上する

黒い夜空に星が散らばったような刀身にオーロラのような刃、オーロラの夜空に星々が散ったような大剣。

強きを砕け

頂きを目指せ

我を振るえ

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