11話:錬金術の真髄
腕にほどよい疲労感を味わいつつ錬金術部屋の椅子に腰かける。
今日中にある程度良い所までは片が付いた。このペースなら明日には大剣の進化は終わるだろう。
「さてと……狩猟銃の改造弾を作らないと」
鍛冶屋に持って行かず、取っておいた錬金術で精錬したゼステライト鉱石やハーティライト鉱石のインゴットを取り出す。
錬金術部屋の奥には意図的に広い空間があり、隅には腰ほどの高さの文様の刻まれた石柱のような物がある。それを持ち上げ、広い空間の中心に置く。
これから行うのは一人前の錬金術師が行う真の錬金術。
ガラスをダイヤモンドに、鉄を金に、2つの物体を1つに。古の竜人族を起源とする技術であり、龍脈と呼ばれる地を流れるエネルギー流路を利用する万能変換技術。
刻まれている紋様は意味を持ち、プログラム言語のごとく切り替える事で多種多様な変化をもたらす。言語の意味を知っているのは極一部の竜人族のみだが、知らずとも方向性を整える事で計り知れない恩恵を得られる。
この錬金台は他とは違う。一般的な物がオート・半オートだとしたらこれは完全手動だ。一番上の本来刻まれている場所に文字等は無く空白となっている。
専用に作ったクリスタルの板に紋様を刻みこんでいく。実家を出たとはいえ、これでも竜人族だからちゃんと分かる。
刻まれた水晶の板を錬金台にセットしてその上にインゴットを並べていく。ナイフで指を軽く傷つけ血を一滴たらしてから錬金台側面のスイッチを入れる。龍脈のエネルギーが作用し、インゴットが液状化していき特定の形状へ変化する。
出来上がった物は一見すると円錐状の金属だ。だがこれを知識ある者が見れば一瞬でどういった物か理解するだろう。
”弾丸”この場合対モンスターの物だ。今回作成した物は貫通力に特化した改造弾で割とポピュラーな改造弾だ。
同じ要領で違う水晶の板を錬金台にセットし、その上に黒鉄鉱石のインゴットを複数本並べてスイッチを入れる。出来上がったのは小さなまきびしの様な形状の物が山のような数出来上がっていた。
これは対モンスター用に俺が改良した散弾だ。小型モンスターを想定しているがある程度大型モンスターにも通用する用に改良されているのだ。
「地球なら間違いなく条約違反の代物ね」
少なくともこんなものを体内に撃ち込まれたくはない。仮に撃ち込まれれば回復しても体内に残っていれば体を動かす度に激痛が走ることになる。下手に麻痺が残るより厄介だろう。
出来た弾丸は火薬の入った薬莢に詰め、マガジンに入れていく。属性狩猟銃なら火薬も不要になったりするが、ハンターショットはそう言った物じゃないので火薬の力を頼らせてもらう。
一通り弾薬の準備が終わったら次は治療薬の準備に移る。事前に作ってあるクリスタルの板に切り替え、その上に錬金術用の鍋を乗せる。鍋に血を数滴たらし、純水と銀、高純度の塩の塊を入れる。
「確かエリカちゃんが作ってくれた薬がいくつかあったはず」
多めに作られているハンター用治療薬の中級の物を瓶ごと鍋の中に大量に入れる。
中級より上の薬は基本的に錬金術を用いた錬金薬しかない。レシピは秘匿されており、材料や製法が製作者によって異なるため効果もある程度変わる。無論俺が知るレシピは複数あるが今回は簡単に済ませることにする。
ナイフで指では無く手首を斬りつけ血を垂らす。鱗が一部剥げて鍋の中に血と一緒に落ちていく。エリカちゃんが作ったほぼ失敗作の下級治療薬を飲み干し傷を癒す。
クリスタル板に触媒として血を垂らしていたのとは違う。素材として血液を垂らしたのだ。理由は2つ、1つは自分の血を使う事で自分に適した治療薬となる。もう1つは……これは良いか。
錬金台を起動すると、鍋の中身がまるで意識を持ったように混ざり合い、変化していく。
変化が終わると空のガラス容器と、濃い緑色の液体が入ったガラス容器が十数本鍋の中に入っていた。
中身を取り出して世界の小窓で確認を行う。上手くできてるとは思うが一応だ。
名称:中級回復薬
レア度:Ⅲ
分類:薬品・消耗品・錬金薬
内容物:薬草や鉱物
中級に分類される回復薬、ある程度ゆっくりとだが治る。
制作者の血が材料になっており、制作者本人が使用するとより効果を発揮する。
中級なのでゆっくりとだが腕の欠損程度なら回復しきるだろう。
「これでひとまずは良しとしようか」
中級としては十分な性能だ。治癒性能としては一般人が使用しても十分高い回復能力があり、深い傷を負ったとしても綺麗に回復できる。ハンターが使用すれば重症と言える傷でも殆ど完治できる。
上位の回復薬ともなればその効果と価値は計り知れない。まぁ、市販にはハンター向け商品は売れないが。
「さて、今日はもう遅いし寝よう」
回復薬
服用者の最大HP依存のリジェネと言えば分かりやすいだろう。
中位から上位がハンターのよく使うランク。
最上位はあるが使う段階だと手遅れの可能性が高い。
中級以上の回復薬の素材や加工方法等は秘匿される事が多く、そもそもレシピ人それぞれ違う。
アルテイシアも今回作ったレシピ以外の方法は持つが、自分しか使わないので今回の方法を使った。




