10話:宝石と進化
夜も更けた頃、俺は仕事部屋に居た。バックパックの荷物を確認するためだ。
薬草と言った、なるべく早く処理した方が良い物は既に処理済みでここにはない。
つまりここにあるのは鉱石類だ。
色とりどりの宝石や、硬質な金属鉱石がずらりと作業台に並んでおり、特に目を引くのはかなり巨大な大型の宝石柱だ。
水晶とも違うように見える。あれだけピッケルで叩いても傷1つ着かず、ピッケルの方が壊れる程だ。
抱える程大きく、これ程巨大な物は前世と今回の人生を合わせても見たことがない。精々が博物館に展示されている物だろうか。
「仮に貴石ならこれだけで城が建つかも」
こう言う希少そうなのは後に取っておこう。好物は後に取っておくタイプだからね。
さて、じゃあ金属鉱石からにしようかな。
名称:ゼステライト鉱石
レア度:Ⅲ
分類:鉱石
名称:エンティフレイン鉱石
レア度:Ⅳ
分類:鉱石
名称:龍脈銀
レア度:Ⅳ
分類:鉱石・錬金素材
上から、10㎏、5㎏、2㎏が大雑把な入手量である。
アイテムテキストを見た感じ、ゼステライト鉱石はいうなれば硬いけど脆い鉱石だな。刃物の刃に使われるんじゃないか?鋼とステンレスの割り込み包丁って知らない?あれよあれ。
エンティフレイン鉱石はなんかすごい……。”融解させたこの金属はあらゆる物質と結合し性質を融合できる”らしい。これ単品で使うより合金版カンフル剤みたいな感じなのか?
精錬前だから実際の量はもっと少ないだろうけど……それでも、ゼステライト鉱石とエンティフレイン鉱石がこれだけあればいろいろ作れるでしょ。
龍脈銀は錬金術師としてはあればあるだけ嬉しい。
基本的に錬金術の錬金台と言う特殊作業で使う錬金液の材料は銀と塩を使う。無論良い物を使う事でより良い効果を得られる。配分なども重要だが……。
それでなくとも装飾品作成などで龍脈銀はあってうれしい物だ。
「さて、次は宝石関係ね」
宝石関係が一番量的にも種類的にも多い。様々な輝きを放つ宝石の源石が無数にあるのだ。
これでも前世ではハンドメイドの彫金師だったのだよ!まぁ……大学で人の別れさせ屋してた時にブランド品って嘘ついて渡してたんだけど。
やめよっかこの話!
名称:ピュールクリスタル
レア度:Ⅳ
分類:宝石
名称:エルーフェンレッドベリル
レア度:Ⅲ
分類:宝石
名称:フェステル翠玉
レア度:Ⅲ
分類:宝石
名称:フェステル翠玉柱塊
レア度:Ⅳ
分類:宝石
名称:ゴドルディ金硬結晶
レア度:Ⅳ
分類:鉱石・宝石
でかいのを除いたものがこれらとなる。
ゴドルディ金硬結晶を除いたこの4種の宝石は変質性結晶体と呼ばれる物だ。この変質性結晶体と言うのは内部に様々な物を内包した結晶体を指す。
この結晶体たちは通常の宝石とは違う、と言うか全くの別物だ。内包した物に呼応して変質し、その力を輝きとして暗闇の中でも光を放つのだ。
内包している物は太古の火や深海の激流等があり、そう言った物が何も内包されいない物がピュールクリスタルとなる。
ピュールクリスタルは世間的にはただの水晶と思われている。ぱっと見そうだし無理もないが、このピュールクリスタルはかなり使い勝手がいい。
錬金術を用いてピュールクリスタルを意図的に変質させる事で任意の効果を付与できるのだ。
ちなみにただのエメラルド等もあったがそちらは今回除外して脇に寄せている。
ゴドルディ金硬結晶は初めて見たが金色の結晶体でとても軽い。
使い道としてはどうやらコーティング剤に使えるらしい。宝石としても黄金色に輝いて美しいが、かなり硬度が高そうなので加工は難しそうだ。
「さて……最後ね」
存在感を放つ白い結晶体。
世界の小窓でもどれ程の情報が出るのか……。
名称:ドラグニカ金剛大宝柱塊
レア度:Ⅶ
分類:鉱石・宝石
龍脈と呼ばれる特殊な場所かつ、真龍が付近に存在したことのある場所で、鉱石が豊富に採掘できる場所と言う秘境でしか入手することが出来ないダイヤモンドに似た性質を持つ鉱石。
入手されたとしても精々が指先大で、それでも小さな城が……
見なかった事にした。
いや……うん。きっといつか使うよ。
とりあえず封印しておこう……。
さて、もう夜も遅い。早く寝て明日はおやっさんの所に行って武器の強化をしてもらおう。
翌日予定通りに俺は鍛冶屋に来ていた。
勿論鉱石を一通りもってきている。
中に入るとヴォルフのおやっさんはいつものように作業しており、こちらに気づいてはいるが手を止める気は無い様で槌を振るうのをやめない。
待っている間に近くの作業台に鉱石を並べていく。
もはや勝手知ったる作業場だ。多少好きにしても何か言われることは無い。
丁度並べ終わったころ槌を振る音が止み、高熱の金属が水で冷やされ気泡の湧く音が聞こえる。
「おはようさん。また鉱石を持って来たのか?」
「えぇ、良いものが手に入ったから」
「みたいだな……」
一通りの区切りをつけ、作業台の鉱石を一瞥しながらおやっさんはそう言った。そして俺が持って来た鉱石達を1つ1つ手に取って、無言でじっくりっと確認する。
「最高だな」
「それは良かった」
「それで、こいつを使ってどうしてほしいんだ?また武器を作るのか?」
「いいえ、これの強化と……できれば進化を」
そう言って俺は背中に背負っていた大剣を渡す。
名称:グロースブレード+5
分類:大剣
ランク:Ⅱ
物理攻撃力:120+10
属性攻撃力:0
装備スキル:技量向上+2:通常の大剣より軽いのもあり扱いやすい。持ち手に滑り止めの細工がされており使用者の思い通り扱える。
強化割り振り:攻撃力+2/技量+2/耐久+1
殴蜊蛄の鋏と高純度の金属鉱石を使用して扱いやすさを重視して作られた大剣。
依頼者の使用目的を考慮して持ち手は長めにしてある。
赤黒いその刀身は見た目ほどの重さは無く、その一撃は岩をも切り裂く。
これは殴蜊蛄の鋏・ハーティライト鉱石・オーアイーターの牙を素材にした大剣で、尻尾で扱う事を前提にしたものだ。
今のメイン火力と言っても過言ではない武器である。
「強化は兎も角として……進化か」
「いけそう?」
「うーむ……やってやれんことは無いな」
鉱石や素材に使ったモンスターの素材またはそれに近い素材を使用する事で強化が出来る。
強化できる内容は攻撃力・技量・耐久・属性だ。強化の方向性は素材によって変わってくる。例えば攻撃力や切れ味を高めるなら推奨される素材は爪や牙となる。無論良い事ばかりでは無く、攻撃力ばかり上げると耐久力が下がったり、効果上昇率に限界があったりする。
なのである程度強化したらより良い素材を用い、新たな武器として新生させる。
それが進化だ。
進化させると完全に別物となり、強化値も0となる。
進化の仕方次第では形がまるで違うものになったり、武器種が変わる事すらある。
「ではあずかろう。しばらくかかるがどうする?」
「せっかくだし、見させてもらおうかしら。いい?」
「構わんぜ。適当にそこら辺の椅子を使ってくれ」
「それとピッケルぶっ壊してきちゃった♪新しいの作って」
「ぶっ飛ばすぞ」
すごい形相で睨まれた……仕方ないじゃん?決して壊れない破壊不可能オブジェクト殴ってたようなもんよ?
多少文句を言いながらも大型の炉に火を入れ、大金槌を担ぐ。大剣が入るだけのスペースだけが開けた状態で炉は明らかに温度が上がっていく。
炉を眺める事数分。丁度いい温度になったのかグロースブレードを炉の中に入れて行く。
大剣全体が炉の中に入り、加熱が開始され始めた。外から炉へ送り込まれる空気量が増して炉の中が激しく燃え上がる。
炉で熱する事幾ばくか、全体が過熱されたことで赤熱化し、おやっさんはグローブを付け直す。
「おい、どうせならちょっと手伝え」
「……分かったわ」
昨日も使った耐熱ポーションを一気に飲み干し、近くにあった耐熱グローブをはめる。
こういった手伝わされる事は割とある。とは言え今回の様な俺の依頼品だけだが、手伝ったら割り引いてくれたりするのでwin-winだ。
それに純粋に勉強になる。世界の小窓で見られる情報はレシピなども分かるが、直に体験する事で詳細な情報となる。元々前世でフリマ販売する彫金師だったが、この世界で腕の良い職人の技術を見る事は自分の技術の上昇につながる。
大きなやっとこを渡されすぐに意図を理解する。引っ張り出せと言いたいんだろう。
炉の中で煌々と輝く大剣を引っ張り出し、大型の金床に置く。
「ほらっ」
「ちょっと!」
大槌を投げ渡すなよ……。
「ハハッ、すまんすまん。じゃあ叩いてみろ」
「……分かったわ」
世界の小窓を活用し、叩くべき場所を見極めて大槌を振り下ろす。
振り落とす度に輝く火花が瞬き、周囲や鎧にぶつかる。それは美しく、生命の誕生のようだった。
俺が作業を始め、その様子をしばし眺めてからおやっさんは同じように大槌を振り始めた。
「でも、良いの?」
「何が、じゃい」
「今まで、鍛造、なんて、させなかった、じゃない?」
目前の作業から目は離さず、大槌を振り下ろしながらおやっさんに質問する。
今までは精々が鍛造の際にやっとこで掴むなどの補佐はあった。逆に言えばその程度の補佐だった、今回のように直接それも相槌を打たせるなんて事は無かった。
「ただの、気紛れ、じゃい」
「あら、そう?」
「そう、じゃい」
そんなわけないじゃん!
「やはり、筋が良いな」
「あり、がと!」
「じゃあ、このまま頼むぞ。俺は鉱石の精錬をしてくる」
「え、ちょっと!?」
「大剣を進化となれば一人じゃかなり億劫じゃい。作業は2~3日ほど掛かるな、今日だけでも手伝え」
2~3日か……じゃあ明日のクエストには持っていけないな。手伝うのも勉強になるが明日の用意もあるし……。
「夕食前には帰るわよ……」
「あぁ、それでいい」
さて、と……頑張りますかね。
鉱石系を全部ここに書くと超長いので書きません。
強化について
武器や防具は素材の性質に似た素材や近しい素材を使う事で攻撃力や耐久力等を強化することが出来る。ただし強化素材は装備に使用した素材の平均レアリティ以上でなければならない
強化は段階があり、最大10段階となる。
なお、銃や弓と言った武器種は強化する場合錬金術師か製作者の協力が必要
強化と進化では大分違う。強化はシステムのVerアップデート進化はパーツ交換。
進化
その武器を一定段階まで強化した上でレアリティや格の高い素材を使用し、高い技術力を持つ鍛冶師が鍛える事で進化させることが出来る。
進化した装備はランクが上がり、形状が変わる事もある。
進化の場合一から作るより安価かつ少ない素材で大幅なパワーアップが見込める。
さらに今までの使用感に近いという利点がある。装備スキル等もそのまま使えることが多い。
ただし装備スキルはそのモンスター素材での一式装備程の出力ではなく、基礎防御力も及ばない。
なお、■■の素材の武具は特定条件以外進化できない。




