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8 美桜

「……衣装代に回せるのはこれぐらいかな」


 部室の中には俺と園田美桜の二人きり。少し緊張しながら、俺はタブレットを見せて説明していく。


「もうちょっと何とかならんの?」


「うーん、難しいかも」


「そっかあ、まあ、それぐらいでもなんとかはできるけどね。ウチの手にかかれば」


 美桜さんが言う。


「……衣装は全部美桜さんが作ってるの?」


「そうなんよ。基本はウチ1人でやってるかな。親も手伝ってはくれるけど。あとは葵と椿が少し手伝ってくれるぐらいで。あとのメンバーは役にたたんから衣装作りには呼んでないんよ」


「そうなんだ」


 まあ、スミレは小さい頃から細かい作業は苦手だからな。料理も簡単なものしか出来ないはずだし。委員長はなんかお嬢様っぽいし、きっと裁縫なんてしないのだろう。


「今度からはマネ君も手伝ってくれるかな?」


「……俺が役に立つとは思えないけど」


「雑用係でもいいんよ。お菓子とか飲み物とか買ってきてくれたら」


「それならまあ……」


「楽しみにしてるね」


 そう言って笑顔で俺を見てくる。こいつ、ほんと小悪魔だな。俺がスミレのことを好きじゃなかったら一瞬で美桜さんを好きになってるだろうな。


「じゃあ、仕事の話はこれぐらいにしよっか。ここからは雑談タイム!」


 美桜さんが言い出す。


「いや雑談って……帰らなくていいの?」


「いいのいいの。今日はちょっとマネ君と話したくて、こういう場をセッティングしたんだから」


「そ、そうなんだ……」


 なんかまずそうな雰囲気だ。


「マネ君はスミレのことが好きなん?」


 首をかしげて聞いてくる。


「ああ、そうだよ。好きだ」


「でも、実らなかったんでしょ?」


「そうだけど、まだチャンスあるって思ってるから」


「そうかなあ。ウチら、昨日そういう話もしたわけ。そこで聞いた感じだとぶっちゃけ無いと思うんよ」


「う……」


 そう言えば、昨日偶然会った椿さんもそういうこと言ってたか。スミレは裏で俺のことをどう言ってるんだか……


「だからさあ……私にしとかない?」


「はあ?」


 驚いて美桜さんを見る。いや、これは勘違いだよな。


「それってどういう意味?」


「だからあ……私と付き合ってって言ってるの」


「いや……冗談でしょ」


「冗談じゃ無いんだけどなあ。椿も言ってたでしょ。私、地味な男子が好きなんだよねえ。マネ君、すっごくタイプかも」


 そう言って俺の隣に座る。そして、腕を触ってきた。


「ダ、ダメだって……」


「ダメなの?」


「いや……俺はスミレ一筋だし」


「でも、望み無いでしょ?」


「そうだけど……」


「だったら、私でいいじゃん。私のこと、嫌い?」


「いや……嫌いじゃ無いけど……」


「じゃあ、付き合おうよ」


「う……」


 学年二大美女の一人である美桜さん。スミレのことが無かったら、喜んで付き合っていただろう。


 だけど、どう考えてもおかしい。美桜さんは俺と昨日出会ったばかり。それでいきなり付き合おうと言ってくるだろうか。モテモテで男子を選び放題の美桜さんがそんなことをするとは思えない。よっぽど魅力的な男子ならともかく、この俺だ。そんな勘違いはさすがにしなかった。


「……いや、美桜さん。絶対、俺のこと好きじゃ無いよね」


「なんで? マネ君のこと、好きかもしれんよ?」


「かも、とかばっかりではっきり好きとは言ってないでしょ」


「……そうやけど」


「俺はスミレのことが好きだ。美桜さんは俺のこと好きなの?」


「好きかも」


「かもじゃ無くて言える?」


「それは……」


 小悪魔の美桜さんだけど、根は正直者らしい。


「美桜さん、こんなことする理由はなに? 何かあった?」


「うぅ……ダメかぁ……」


 急に美桜さんは机にのぺっと身を投げ出した。


「……美桜さん?」


「マネ君のこと、スミレから奪ってやろうって思ったのになあ」


「スミレから? でも、スミレは俺のことなんとも思ってないよ」


「そうやけど……でも、マネ君はスミレのこと好きって公言してるでしょ。それなのに私と付き合ったら、スミレから私が奪ったって事になるじゃん」


 なるんだろうか。


「いや、なんでそんなことする必要が……」


「だって……スミレに何やっても勝てないんやもん!」


 美桜さんが言った。


「はあ?」


「スミレはベアキャットのセンターで人気も視線も独り占めやし。いつもいいところ持っていくから。一度は私もスミレに勝ちたいの!」


「はあ……」


 どうやら、美桜さんはスミレにコンプレックスがあったらしい。だからスミレ一筋の俺を自分のものにしてしまおうと思ったのか。


「ウチ、やっぱりスミレに負けちゃうのか。マネ君争奪戦でも負けちゃった……」


「いや、別に俺なんて欲しくないでしょ」


「そうやけど! スミレに負けるのが嫌なの!」


 やっぱり俺のことはどうでもいいらしい。まあ、それはそうか。


「でも、美桜さん、スミレに負けてる? 俺から見たらいろいろ勝ってるように見えるけど」


「どこがよ!」


「可愛くてスタイルもいいし、学年2大美女なのはスミレじゃ無くて美桜さんだし。普通に人気も美桜さんがあると思うけど」


「……でも、マネ君はスミレを選ぶんでしょ?」


「それは、まあ……」


「やっぱり負けてるやん! 悔しい……うぅ……」


 美桜さんの目には涙があった。どうやら本気で悔しいようだ。




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