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もし幼馴染に振られた俺が美少女ダンスグループのマネージャーになったら  作者: uruu


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73 帰還

 朝。俺は包丁の音で目を覚ました。おじさんが朝食を作っているようだ。


「おはようございます」


「おはよう、坊主。よく眠れたか?」


「はい、おかげさまで」


「そうか。朝飯、食べるよな?」


「はい、ありがとうございます」


「よし、テレビでも見ながら少し待ってろ」


 俺は寝ぼけた頭でテレビをぼーっと眺めた。その画面には時間が出ている。8時半か。結構よく寝たな。おかげで何か吹っ切れた感じがする。逃げてる場合じゃ無いな。俺は帰ることにした。


 だが、もう学校に遅刻は確実だ。なにしろここからは二時間ほどかかるし、もう学校は休むことにしよう。今日は金曜だから来週からちゃんと学校に行けばいいだろう。


 朝食を食べているとおじさんが言った。


「このあと、俺は仕事に行くが、お前はどうする?」


「家に帰ります」


「そうか。元気は出たか?」


「はい。何も聞かずにいてくれてありがとうございました」


 俺は頭を下げた。


「いいってことよ。俺はあのばあちゃんから受けた恩をお前に返したまでだ。お前も将来誰かにその恩を返してくれればそれでいい」


「……はい。わかりました」


 朝食を食べ終わり、おじさんの準備が済んで二人で家を出た。


「駅まで車で送っていこうか?」


「いえ、大丈夫です。歩いて行けます。スマホもありますし」


「そうか。便利な時代になったな。俺なんて家出したときには公衆電話で家に電話したぞ」


「そうなんですね」


「ああ。今から帰るって言ったらとにかく怒られたな。ハハ……じゃあ、頑張れよ」


「はい、本当にありがとうございました」


「おう、じゃあな」


 おじさんは車に乗って仕事に出かけた。さて、俺も帰るか。


 歩いて日奈久温泉駅に行き、そこから昨日とは逆方向の電車を乗り継いで熊本駅に行く。


 そして路面電車に乗って家に帰ってきた。もうお昼になっている。俺はカップ麺を食べて、それから今日学校であっている授業の分の勉強を始めた。


◇◇◇


 夕方になると「ただいま」の声が響く。妹の瑠璃が帰ってきた。


「おかえり」


「あれ? お兄ちゃん、早かったね」


「うん。まあな」


 学校を休んだことは妹には内緒だ。


「お兄ちゃん、スミレさんに連絡した?」


「え? 何もしてないぞ」


「なんでよ。昨日、家にスミレさんが来て、大変だったんだから」


「何が?」


「お兄ちゃんが友達の家に泊まりに行ってるって言ったら泣き出しちゃって」


「は?」


「すぐ帰っちゃったからよく分からないけど、スミレさんにちゃんと連絡しておいた方がいいよ」


「そうだな……」


 スミレにも心配掛けたかも知れない。俺はそう思い、久しぶりにスマホのメッセージアプリを立ち上げた。すると、そこにはベアキャットのメンバーからたくさんのメッセージが来ていた。


美桜『マネ君、辞めたらあかんよ』

友梨香『マスター、辞めないでください』

葵『ボクはもうマネージャーはやりたくないからね』


 そしてスミレからも。


スミレ『大樹、話がある。会いたい』

スミレ『どこにいるの? 連絡して』


 これはまずいな。だが、それよりも椿からの連絡が俺は気になった。


椿『問題は片付いたわ。マネージャーを辞める必要はなくなったから戻ってきなさい』


 マネージャーを辞める必要がなくなった?

 どういうことだろう。俺は気になって椿に返信した。


大樹『どういうことだ?』


 だが、返信は無かった。そうか、今はベアキャットの練習時間だ。しかし、どういうことだろうな、これは。


 練習が終わるぐらいの時間になって、ようやく椿から返信が来た。


椿『今どこにいるの?』


大樹『家だ』


椿『じゃあ、バスセンターのスタバまで来なさい』


 今からかよ。正直面倒だが行くしか無いか。


大樹『わかった』


 俺は急いで家を出た。


◇◇◇


 スタバに着くと、そこには椿と美桜がいた。


「マネ君、こっちだよ!」


 美桜の声に導かれて俺は2人のそばに座った。


「マネ君、昨日はどこ行ってたん?」


「昨日は……ちょっとな」


「友達の家に泊まったって聞いたけど、誰なん? まさか女?」


「違うよ。ちょっと遠くに行ってただけだ」


「遠く?」


「それはいいから。椿、マネージャーを辞める必要が無くなったってどういう意味なんだ?」


「そのままの意味よ。バカマネ、なんでマネージャー辞めたの?」


「それは……」


「まあ知ってるけどね。スミレの親衛隊でしょ」


「う……」


 椿はなぜか知っているようだ。


「まったく……噂を流すのを辞めてもらう程度でマネージャーを辞める必要なんてないでしょ」


「いや、逆だよ。俺がマネージャーを辞める程度で噂を流すのを止めてくれるんならそっちの方がいいと思ったんだ」


「はあ?」


 美桜がそう言って俺をにらみつけた。


「な、なんだよ」


「マネ君がマネージャーやってもらわないとダメだよ! マネ君がいないとウチら……」


「そんなことないだろ。俺は何の役にも立ってないし」


「立ってるよ! マネ君は自己評価低いねえ。誰かさんとそっくりだ」


 ……スミレか。


「俺はちゃんと自分を評価してるつもりだけどな」


「言い争いは後にして」


 椿が言う。


「とにかく、スミレの親衛隊長は噂を流すのをやめたし、バカマネがマネージャーを続けてもいいと言ってるんだから、それでいいでしょ?」


「……どういうことだ? あの親衛隊長がそれで納得するとは思えないけど」


「そこはウチの隊長君がいろいろやってくれたからねえ」


 美桜が言う。


「隊長君?」


「うん。ウチの親衛隊の隊長君に言ったんよ。スミレの親衛隊がいろいろ言ったせいでマネ君が辞めたって。それでメンバーみんな怒ってるって」


「なるほど……」


「それでウチの隊長君が他の親衛隊の隊長集めてね、会議したらしいの。みんなスミレの親衛隊長に怒って、平謝りになったらしいんよ。マネ君に動画来てない?」


「動画?」


 スマホを確認すると確かに親衛隊長からメッセージが来ていた。そこには隊長が土下座をする動作があった。


『坂崎大樹君、すまなかった。この通りだ。ベアキャットのマネージャーとして帰ってきてくれ。噂を流すのももう辞めるから』


 あの親衛隊長がこんなに情けない姿をさらすとは……


「……そういうことだから、明日からはちゃんと来なさいよ」


「わかった……美桜、椿、ありがとうな」


「マネ君、今の話からはウチが頑張ったって話しかしてないのに、なんで椿にもお礼言ったん?」


「だって、椿だろ。そういう風に美桜に言わせたのは」


「むぅ……さすがマネ君、お見通しか」


「まあな。だから、椿、ありがとうな」


「別に……私はバカマネが馬鹿なことしかたらその尻ぬぐいをしたまでよ」


「ほんと、バカだったよ」


「マネ君、マネージャー辞めたこと少しは後悔した?」


「ああ。俺には他に何も無いって気がついたよ」


「うんうん、後悔したならいいよ。なんとも思ってなかったら悲しくて悲しくて美桜、泣いちゃうから……」


 そう言いながら、美桜は涙目になっていた。


「美桜……」


「はいはい、美桜の嘘泣きに騙されないの」


「嘘泣きちゃう!」


「ごめんな、美桜。ただ、マネージャーに戻るかは少し保留させてもらえないか」


「はあ?」


 美桜が言う。椿も顔をしかめたが、すぐに言った。


「他にも何かあるの?」


「ああ……スミレのことだ」


「どうかしたの?」


「このままスミレと上手くいかないなら俺がマネージャーを続ける意味あるのかなって……」


「マネ君……」


 美桜は心配そうに俺を見た。だが、椿は言う。


「バカマネ」


「なんだよ」


「あんたホントバカね」


「はあ?」


「まずはスミレに会いなさい。会って話し合いなさい」


「そ、そうだな」


 確かに。まずは、スミレに会わなくては……


 そのとき、瑠璃からメッセージが届いた。


瑠璃『スミレさん、家に来てるよ』


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