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もし幼馴染に振られた俺が美少女ダンスグループのマネージャーになったら  作者: uruu


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62 釣り合う

 月曜日の朝。ミーアキャットの三人が心配で俺は朝練の時間に部室に行く。着替えの時間を避けて少し遅めに行ったのだが、そこにはミーアの三人とコーチの椿以外にスミレも来ていた。


「はい、ワン、ツー、スリー、フォー、ワン、ツー……」


 椿の声が響く中、スミレは立ったまま腕を組んでじっと練習を眺めている。俺はその横に立った。


「スミレも来てたのか」


「大樹も来たのね」


「うん、ちょっと気になったね」


 そのとき、椿が俺に気がついた。


「……バカマネも来たみたいね。じゃあ、一回通しでやろうか」


「「「はい!」」」


 曲が流れ出す。「START DASH」だ。だが、金曜日に踊ったものとは全く印象が違っていた。メンバーそれぞれが自分の良さを引き出している。宮川紅葉は激しさと同時に綺麗さ。沢村蘭は可愛さのアピール、西崎撫子は繊細なダンス。ただ踊っているだけだった先週と違い、自分なりの工夫が感じられた。


「はい、オッケー」


 曲が終わると椿が言った。


「バカマネ、どうだった?」


「うん、すごくよくなってるよ!」


「「「ありがとうございます!」」」


「スミレは?」


「まだまだね。指の先まで気を配ること」


「「「はい!」」」


 スミレの要求はまだ高いようだ。さすが、ベアキャットのセンターだ。


 それからも練習は続いた。途中でスミレが俺に小さい声で言ってきた。


「今日の放課後も大樹がミーアたちを見てくれる?」


 放課後はデビューまでの期間限定で俺がミーアたちの空き教室に行っていた。だが、今日も行けとスミレは言う。


「あ、テスト勉強するならいいんだけど」


「大丈夫。勉強は帰ってからするよ」


「そう。でも、とりあえず今日だけでいいから」


「わかった」


 今日だけか。何かスミレには意図がありそうだな。俺はそう感じながらもどういう意図かは分からなかった。


◇◇◇


 放課後、スミレの指示通り、俺は部室の隣の空き教室に向かった。


「「「よろしくお願いします!」」」


 ミーアキャットのメンバーが先週と同じように俺に頭を下げた。


「はい、よろしくね。じゃあ、始めようか」


「「「はい!」」」


 三人はまた曲を流し、先週と同じように踊った。確かにいろいろとよくなってるな。俺はそう思いながらダンスを見る。そして、曲が終わったときだった。


「蘭、またサビ前のところ、少し狭くなってたよ」


 宮川紅葉が言った。


「ごめん。紅葉はサビのところ、もっと大きくていいと思う」


「そうね。わかった。撫子は腰の動きかな。もっと……」


 俺は目を丸くしながら三人の会話を聞いていた。先週まではお互いの悪い点を言うことができなかったミーアキャット。やっぱり遠慮があったんだろう。でも、デビューライブの反応を見て、三人の意識は変わった。一言で言えば危機感だろうな。このままじゃいけない、そう思った三人はお互いに遠慮を捨てて指摘し合うようになったんだ。


 そしてスミレの意図も分かった。俺にこれを確認させたかったんだな。さすがはスミレだ。こうなることが予想できていたのだろう。


◇◇◇


 ミーアキャットの練習が終わり、俺はベアキャットの部室に戻る。予想通り、スミレと葵さんが残っていた。


「大樹、どうだった?」


 スミレが俺に聞く。


「三人でお互いに指摘し合えるようになってたよ」


「そっか……よかった」


「スミレ、こうなることを予想してたのか?」


「うん。私たちがそうだったからね」


 そう言って葵さんと顔を見合わせる。


「なるほどなあ。さすがだよ、スミレは」


「そんなことないよ。今の状況に導いたのは大樹だもん」


「俺が?」


「そうだよ。だって、大樹がミーアをデビューさせたからこうなったんだから」


「そうだけど……今思えば危ない橋を渡ったよ。誹謗中傷であの三人が辞めてしまう可能性だってあったわけだし。だから、スミレの意見が正しかったよ」


「そうかな」


「そうだよ。やっぱりスミレはすごいよ。俺は釣り合わない、その通りだな」


 俺はそう言ってスミレを見た。といっても笑顔でだ。別にスミレの発言を責めているわけでは無い。


「釣り合わない? どういうことだい? 大樹君」


 事情を知らない葵さんが聞いてきた。


「俺が振られた言葉だよ。言っただろ? 告白したときこっぴどく振られたって」


「そう言ってたね」


「そのときにスミレに言われたんだよ。俺はスミレには釣り合ってないって――」


「そんなことない!」


 スミレが急に言った。


「え? でも確かにスミレはそう言ったよな。『釣り合わないから付き合えない』って」


「言ったけど、そういう意味じゃないの」


「じゃあ、どういう意味だよ」


 あのとき確かにスミレはそう言った。だったらそれがほかにどういう解釈のしようがあるんだ。


「釣り合わないのは私」


「え?」


「大樹はいつもすごいもん。なんでもできるし優しいし。でも私には何も無かった。だから言ったの。私は大樹に釣り合わないって」


「はあ? そういう意味だったのかよ……」


 ずっと俺がスミレに釣り合わないと思っていた。それは俺からしたら当然だ。スミレはモデルのような体型で手も足も長くクラスの人気者。女子の中心的存在だ。


「どう考えても釣り合わないのは俺だっただろ。俺は何の特徴も無い男子だぞ」


「私の方がそうだよ。何の特徴も無いし。でも、大樹は勉強も出来たしスポーツも出来たでしょ」


「出来たって……中の上ぐらいだぞ」


「そうだけど、私は全然だったから。それに大樹は困っている人がいればすぐに助けるし、優しいし、気が利くし、マメだもん。私は不器用で家事もたいして出来ないし、がさつだし……どう考えても大樹には釣り合ってない」


「そんなこと思ってたのかよ……」


 俺にとってはどこまでもまぶしい幼馴染みだったのに、そんなに自分を卑下しているとは思わなかった。


「うん。だから始めたんだよ。ベアキャットを。大樹に釣り合う女子になるために」



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