61 勉強会
翌日の土曜。今日は学校は休みだが、ベアキャットのみんなと会うことになっている。なぜなら期末テストが近いからだ。ということは勉強会をしなければならない。俺は前回と同じくスミレと一緒に再び友梨香さんの家に向かった。
「失礼します」
お手伝いさんの案内で前回来た会議室に向かう。部屋に入るとそこには美桜と友梨香さん、そして友梨香さんのお母さんが居た。
「あら、大樹君。ずいぶんとご無沙汰じゃない。どうして来てくれないの?」
顔を見るなり友梨香さんのお母さんが俺に言う。
「すみません……いろいろと忙しくて……」
「忙しくても友梨香のことをよろしくお願いしますよ。友梨香はあなたのことをいつも話してくれるのだから」
「お、お母様!」
友梨香さんはお母さんの口をふさごうとする。
「ちょっと、友梨香。何するの――」
「もう! いいから出て行ってください!」
友梨香さんはお母さんを外に追い出した。
「はぁ……」
「友梨香、いつもマネ君のことお母さんに話してるんや」
美桜がニヤニヤしながら友梨香に言った。
「ち、違います!」
「なにが違うのかなあ?」
「……ベアキャットの話をしてるだけですから! ほんとですからね、スミレ。信じてください……」
「う、うん。別に大樹の話をしててもいいけど……」
「そ、そうですか……」
友梨香さんは落ち着いたようだ。しかし、あの様子だと本当に俺のことを話しているようだな。変な話をされていないならいいけど。
「あの……大樹マネ、ここに座りませんか?」
友梨香さんは自分の隣の席を指さす。
「え?」
「ち、違います! 別に深い意味はないんです。ただ、大樹マネには私がじっくり教えた方がいいかなと思いまして……」
「なるほど」
確かに俺は成績が悪いし、前回の勉強会でも最初は意味が分からず友梨香さんを困らせてしまった。今日は隣に座る方がいいだろう。俺は素直に友梨香さんの隣に座った。俺の隣にはスミレが座った。
しばらくすると、葵さんも到着した。だが、椿はなかなか来ない。
「椿、どうしたんやろね」
美桜が言う。
「そうですね。確かに遅いですけど……あ、椿からです!」
友梨香さんがスマホを手に取った。通話のようだ。
「椿、何かありましたか? ……はい……はい……大丈夫ですよ。じゃあ、待ってます」
「椿、なんやったん?」
「ミーアの三人もつれてきていいかって」
「ミーアも? あの三人も成績悪いんかな」
しかし、俺たちは全員二年生だが、一年生の試験対策もするとなると友梨香さんの負担が大きいような気もする。
「一年の時の試験問題を持ってきますね」
友梨香さんは慌てて部屋を出て行った。
◇◇◇
友梨香さんが一年生の試験対策を準備し終えて部屋に戻ってきた直後に、椿とミーアの三人がやってきた。
「椿、遅かったね……って、どうしたの!?」
全員が立ち上がった。椿の後ろにいたミーアキャットの三人が暗い表情で、しかも目が腫れていて泣いていたたように見えたからだ。
「スミレ先輩……うゎーん!」
宮川紅葉が泣きながらスミレに抱きつく。沢村蘭が美桜に、西崎撫子が友梨香さんに抱きついた。
「椿、ミーアの三人に一体なにがあったんだ?」
俺は椿に聞いた。
「……この子たち、エゴサしちゃったのよ」
「エゴサか……」
エゴサーチ。つまり、「ミーアキャット」で検索したのか。でも……
「昨日の時点ではそんなに悪い評判は無かったと思うけど」
「ライブの直後はね。でも、今は動画が上がってるから。見てみなさい」
椿の言葉に俺は慌てて動画サイトを検索する。動画のコメントには「可愛い!」とか「良かった」とかの感想が多い。だが、少し見ていくと「ベアキャットと比べると全然だよね」「ちょっと期待はずれ」とか「へただね」「完全に素人」など辛辣な言葉が次々と目に飛び込んできた。
「ひどいな……」
「……仕方ないです。私たちが下手だったんで……」
宮川紅葉が言う。
「そうです。バカでした。ちゃんとできると思い込んでました」
沢村蘭が言う。
「でも実際、ライブの動画見たら……思ったように踊れてなくて……」
西崎撫子が言った。
「……自分なりに納得できる出来だったなら何言われても我慢できると思うんですでも、私たち、本当にへたくそだったんで反論できません……」
宮川紅葉が泣き顔で言った。
「だったら、どうしたらいいと思う?」
スミレが聞く。
「……練習、ですよね」
「そうよ。それしかないでしょ」
「はい! 私たち、練習してきます!」
「うん、頑張って」
「「「はい!」」」
ミーアキャットは来たばかりなのにすぐ帰っていった。
「……スミレ、ごめん!」
ミーアの三人がいなくなると、俺はスミレに頭を下げた。
「大樹、どうしたの?」
「ミーアキャットをデビューさせたのはスミレの言うとおりまだ時期尚早だった。俺が判断を誤ったばかりにあの子たちを傷つけることになってしまった。俺はマネージャー失格だ。クビにしてくれ!」
俺は床に膝を突きながら言った。
「マネ君……」
「大樹マネ……」
美桜と友梨香さんがあっけにとられている。でも、椿は違った。
「まったく、バカマネは本当にバカね。ほら、立ちなさい」
椿はあきれながらも俺の腕をつかんで強引に立たせてくれた。
「ほら、スミレの言うことを聞いて」
「う、うん」
「大樹、そんなことないから。大樹の判断が間違ってたかどうかはまだ結論が出てないよ」
「……え?」
「確かにミーアの三人は試練を味わった。でも、それは私たちだって同じだったのよ。その後、私たちはへこたれてだめになったかしら?」
「い、いや……」
「そうでしょ。だから、あの三人も試練を乗り越えていけるなら、やっぱりこの時期のデビューで良かったのよ。私は大樹がデビューを提案してくれて良かったって今でも思ってるよ」
「スミレ……」
「大丈夫。あの三人ならきっと乗り越えられるから。さあ、友梨香、勉強会、始めようか」
「そうですね。私たちは期末試験を乗り越えなければなりませんから。ビシバシ行きます。覚悟してくださいね、大樹マネ」
「う、うん」
そこからはいつものように友梨香さんが期末試験の対策を指南してくれた。前回と違って基礎が身についてきていた俺は試験対策の内容が頭に入ってきた。これならなんとか試験を乗り越えられそうだ。
しかし、ミーアの三人は心配だな……




