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もし幼馴染に振られた俺が美少女ダンスグループのマネージャーになったら  作者: uruu


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60 初ライブ

 うちの学校の中庭にはステージみたいな場所があり、それを半円形の長いベンチが囲んでいる。昼休みにはこのベンチでお昼を食べる生徒が多い。


 ステージ裏には校舎に繋がる通路があり、普段は施錠されているが、今日は特別に俺が鍵を預かっていた。鍵を開け、まずミーアの三人を通路から外へ出すと、観客席からはその姿が丸見えだったため、すぐに歓声が上がった。ミーアがステージに近づいたのを見計らって、俺も通路から出てステージ裏へ向かう。そこには小さな建物があり、ここから音楽を流せるようになっていた


「それじゃあ、始めようか」


 俺は緊張した表情のミーアキャットの三人に言った。


「「「はい!」」」


 気合いは入っているようだ。ミーアキャットの三人がステージに駆け上がり、観客席は歓声で溢れた。


「はじめまして、私たち、ミーアキャットです! 『START:DASH!!』踊ります!」


 宮川紅葉が大きな声で挨拶する。俺は音楽を流し始めた。


 そして、ミーアキャットが踊り始めた。俺は舞台袖から観客の様子をうかがう。みんな盛り上がっているようだ。スマホを掲げて撮影をしている観客も多い。笑顔であふれている。うん、大丈夫だ。


 ……


「ありがとうございました!」


 ミーアキャットの初ライブはあっという間に終わった。観客からは拍手が送られ、メンバーは手を振りながらステージ裏の通路を通り、校舎へと消えていった。観客も満足した様子で帰り始める中、俺は一人残り、後片付けを済ませてからゆっくりと部室へと戻った。


◇◇◇


「よかったよ! 本当によかったねえ!」


 美桜は涙を浮かべながら、ミーアキャットの三人の頭を優しく撫でていた。


「ありがとうございます、美桜先輩!」


 部室ではベアキャットのメンバーがミーアキャットのみんなをねぎらっていた。


「さて、ボクが撮った映像を見るかい?」


 今日は葵さんが撮影係をしてくれていた。


「見ます!」


 ミーアキャットの三人が、目を輝かせながら答える。


「じゃあ、流すよ」


 タブレットに映像が流れ出した。


『はじめまして、私たち、ミーアキャットです! 『START:DASH!!』踊ります!』


 タブレットから宮川さんの声が響く。

 ベアキャットの五人とミーアキャットの三人は何も言わずに映像を見守った。


 映像が終わるとスミレが言った。


「どうだった?」


「うーん……自分の中では全力を出し切ったつもりだったんですけど、映像を見ると何か物足りません……」


 宮川紅葉が言う。


「確かにそうかも。なんか先輩達と違うよね」


 沢村蘭も言った。


「はい、これで大丈夫でしょうか……」


 西崎撫子が言う。


「ネットの反応はいいみたいだよ。『可愛い!』とか『フレッシュ!』って書かれてた」


 美桜が三人に言う。三人はホッとした表情になった。


「じゃあ、初ライブは大成功だね!」


 スミレが三人に言う。


「「「ありがとうございます!」」」


「今日は帰ってゆっくり休んで」


「はい! このあとは三人で打ち上げします!」


「いいねえ。ベアキャットはこの後も練習があるから、一緒には行けないけど楽しんでね」


「「「ありがとうございました!」」」


 ミーアキャットの三人は部室を出て行き、残ったベアキャットのメンバーは自然と練習の準備を始めた。スミレが手を叩き、気合いを入れる。


「よし、それじゃあ私たちも始めようか!」


 そこからはいつものようにベアキャットの練習が始まった。俺は久しぶりにベアキャットの部室でマネージャーになった。



◇◇◇



 練習が終わり、着替えも終わって椿と友梨香さん、美桜はすぐに帰っていった。部室に残っているのはスミレと葵さんだけだ。スミレが俺に言ってきた。


「大樹、ごめんね」


「何が?」


 いきなりの言葉に俺は何のことか分からなかった。


「ミーアキャットのデビューに反対したこと。今日の成功を見ると、私が少し考えすぎてたのかなって」


「別にいいよ。スミレが後輩を大事に思う気持ちも分かるし」


「……私、ミーアキャットの三人には傷ついてもらいたくなくて。私たちは始めた頃にさんざん叩かれたんだ。『へたくそ』とか『つまらない』とか」


「それはひどいな」


「うん。だから葵と友梨香とすごく凹んだんだよ」


「そうだったね」


 葵さんも言う。


「でも、実力が付いてくるとそういう声はどんどん少数派になっていく。今でもそういう心ない声は無くなったわけじゃないけど数が少ないからほとんど気にしてないし」


「今でもあるのか?」


「あるよ。でも、それ以上に褒めてもらうことが多いから。そういう声に埋もれてもう目立たなくなったんだ。だけど、始めたばかりの頃はどうしてもそういう声が目立つから」


「……よくそこでやめようとしなかったな」


「何度も思ったよ。『もうやめようか』って。でも、私にはどうしても続けたい理由もあったし、だから負けないと思って……」


「続けたい理由?」


「うん……」


 そう言ってスミレは俺を見つめた。だが、それ以上の説明はしてくれなかった。


「だから、ミーアの三人がそういう声を浴びたらどうしようって思っちゃって。なので、絶対的な実力が付くまではデビューさせたくなかったの」


「そうだったのか……」


「うん。誹謗中傷を跳ね返すだけの実力があれば、何を書かれてもただの嫉みにしかならないでしょ。でも、実力が無ければ、『へたくそ』と書かれても事実だし……」


「そうだけど、それでも誹謗中傷なんてしちゃいけない」


「もちろん、それは大前提ね。でも、何かを公開する以上、そういう人が出てくるのは避けられない。ミーアの三人は本当に純粋にダンスを愛して頑張っている。だからそういう目には遭わせたくなかったの」


「確かにな」


 あの三人は純粋にダンスに取り組んでいる。あの三人に誹謗中傷が寄せられるなんて、俺も考えたくなかった。


「でも、あの子たちは私が考える以上に観客の心をつかんだみたいね。だから私の心配は無用だった。やっぱり、大樹は流石だよ」


「そんなことないだろ」


「あるよ、いつも大樹は私よりもすごいもん」


「はあ? 誰が見ても今のスミレは俺よりすごいと思うけど」


「そんなことないよ。あの頃から変わってない」


「あの頃?」


「うん、告白された頃から……」


 まさか、あのときかよ。


「どう考えてもあの頃から変わっただろ。今やスミレは全校的な人気者だし」


「そんなことないよ」


 やけに今日は謙遜するな。


「まあいいや。とにかくスミレの判断はミーアキャットの三人を思ってのことだから気にするな。俺も気にしていないし、ミーアの三人はそもそもスミレがデビューに反対していたことも知らないから」


「うん、そうだね。気にしないことにする。じゃあね」


「おう、また明日な」


 スミレは帰っていった。俺は鍵を締め、職員室に向かう。その途中で思い出していた。


 俺がスミレに告白したのは一年生の七月だった。ということはもうあれから一年が経とうとしているのか。それから、スミレはとんでもない人気者になった。今や学校のアイドルとも言っていい立場だ。


「まあ、確かに俺じゃ釣り合わないよな……」



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