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もし幼馴染に振られた俺が美少女ダンスグループのマネージャーになったら  作者: uruu


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59 デビュー

 俺は朝練を途中で抜け出し、職員室に行って中庭の利用許可を取り付けた。金曜日の放課後、ミーアキャットのデビューライブに使うためだ。


 昼休み、SNSでミーアキャットのデビューライブの告知をすると、予想以上の反響があった。ベアキャットの人気があるから、その妹分であるミーアキャットへの期待も高まっているのだろう。それに応えてミーアキャットも完成度を上げていく必要がある。


 しかし、ミーアキャットの放課後の練習は、ほとんど自主練に近い状態だ。椿がきちんと指導できるのは、朝練と昼休みのわずかな時間に限られていた。


「バカマネ、放課後はここはいいからミーアを見てやって」


 この日の放課後、椿にそう言われた。確かに誰かが見ておいた方がいいだろう。


「わかったよ。俺は素人だけど気がついたところは言うから」


 そういうことで俺は部室の隣にある空き教室へと向かった。


「「「よろしくお願いします!」」」


 ミーアの三人が深々と頭を下げる。


「こちらこそよろしく。じゃあ、始めようか」


「はい!」


 音楽が流れ出し、三人が踊り出す。うん、だいぶ良くなっている気がする。だが、ベアキャットと比べるとどこか物足りない。それがどこなのか、俺にはうまく言語化できなかった。


「とりあえずもうちょっと笑顔で踊ろうか」


 俺に言えるのはこれぐらいだ。


「「「はい!」」」


 そんな頼りないアドバイスにもかかわらず三人は懸命に踊り続けた。疲れが見えはじめた三人に俺は声を掛けた。


「よし、そろそろ休憩にしようか」


「「「はい!」」」


 三人はようやく休憩を取った。かなり疲れていたようだ。今日は張り切っていたのだろうか。


「今まではどのぐらいのタイミングで休憩を取ってたの?」


「……特に決めていません。疲れたら適当に休んでました」


 かなり適当にやっていたようだ。


「うーん、でも、もうちょっとメリハリを付けた方がいいかもな」


「そうですね、わかりました」


 俺は「2回曲を踊ったら5分休憩する」ように提案した。休憩で三人は水を飲んだ後、それぞれがスマホを見始めた。会話は無い。俺はそれを見て言った。


「……えーと、休憩だけどさ。ほかのメンバーにアドバイスとか、そういうのは無いかな?」


「私は別に無いです」

「私も」

「……私も無いですね」


 ベアキャットは休憩時でもお互いにコミュニケーションを欠かさない。ダンスが上手くいってないところがあればすぐに指摘し合う。だが、1年生のミーアキャットはそういうコミュニケーションは少ないようだ。


 確かにまだグループを組んで三ヶ月だけど、大丈夫だろうか。俺は初めてデビューライブが不安になった。


 といってもこの三人は仲が悪いわけでは無い。練習が終わると「今日どこか行く?」「そうね、マック!」「いいですね」と三人で楽しそうに出かけていく。ただ、お互いのダンスについて、踏み込んだ意見を言い合わないだけなのだ。


 俺は不安になりながらも練習が終わって3人が帰った後にベアキャットの部室に戻った。すると、そこにはスミレと葵さんがまだ残っていた。


「大樹、ミーアはどうだった?」


「うーん……」


「あれ? 何か問題でもあった?」


「問題というわけじゃないんだけど、スミレの言うことが正しかったのかもしれないと言う気がしてきた」


「え? それって大丈夫なの? もうライブ告知しちゃったよ?」


 確かにそうだ。すでに中庭は押さえている。SNSでも告知してすごい反響ももらっている。今さら俺の個人的な不安だけで中止にするわけにはいかないだろう。


「大丈夫だよ、なんとかする」


「大樹、無理しないでね」


「わかってる」


「机は片付けておいたから」


「ありがとう。俺は鍵を返してくるからスミレたちは先に帰っててくれ」


「うん……」


 スミレたちを先に帰し、どうすればいいのか、俺は一人考え込んだ。


◇◇◇


 翌日の放課後。俺はまたミーアキャットの練習場所に向かう。2曲終わって最初の休憩になったとき、俺は3人に提案した。


「このあとは一人ずつ踊ろうか」


「「「え!?」」」


 三人が不安そうな顔をした。


「踊っている人以外は、そのダンスを見て、良かった点と悪かった点を指摘する。いいかな?」


「「「はい……」」」


 元気のない返事が返ってきた。だが、これが俺の考えた作戦だ。とにかく、お互いに意見を言い合う習慣を身につけさせる。ベアキャットでは、椿が遠慮なくメンバーに指摘する。その影響もあって、細かい点までメンバー同士で話し合っていた。


 それに対し、ミーアキャットは先輩の椿がコーチとして指導していたからか、メンバー同士で言い合う習慣が無い。ただ椿に指摘された点を修正するだけだった。もっとメンバー同士で言い合わないと、自主練の効果は期待できない。


 そう考えての一人ずつのダンスだった。まず、宮川紅葉が踊り終えたので、残りの二人に感想を求めた。


「良かった点はダンスが大きかったことかな。悪かった点は無いよ」


 ツインテールの沢村蘭が答える。そして、もう一人の西崎撫子は――


「良かったのは、笑顔が素敵だったことです。悪かった点はありません」


 うーん、まだ三人の間に、遠慮があるのだろうか。相手の良くない点を指摘することを避けているように感じられた。


 メンバーを変えて試してみても、結果は同じだった。


◇◇◇


 結局、大きな改善は見られないまま、デビューライブ当日を迎えてしまった。

 放課後の中庭には、すでに多くの人が集まっている。

 

「うわあ、ウチらのライブよりギャラリー多いんやない?」


 美桜が驚いた声を上げる。確かに三学期に中庭でやったときより多いかもしれない。あれからベアキャットの人気もさらに上がり、その妹分の初めてのライブという珍しさも手伝って、観客が増えていた。


「とりあえず、準備はできたわね」


 スミレが、衣装を着たミーアキャットの三人に声をかける。


「「「はい!」」」


「よし、行ってらっしゃい!」


「行ってきます!」


「バカマネ、後は頼んだわよ」


「わかった」


 俺はミーアキャットの三人を先導し、中庭へと向かう。今日はベアキャットのメンバーは、撮影以外は手伝わないことになっている。彼女たちが前に出ると、どうしても注目がそちらに集まってしまうからだ。今日の主役は、あくまでミーアキャット。MCから何からすべて、自分たちでやり遂げなければならない。


 だが、俺が裏方として動くぶんには、注目されることはないだろう。俺自身も、少し緊張していた。


 そして、俺たちはステージへと向かった。


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