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もし幼馴染に振られた俺が美少女ダンスグループのマネージャーになったら  作者: uruu


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56 ライブ

「いよいよですね」


 宮川紅葉が俺に言った。


「ああ」


 いったんステージが暗くなり、機材の片付けが終わると、ステージの後ろから声が聞こえた。


「we are……」

「「「「ベアキャット!」」」」


 スミレに合わせてメンバーが叫ぶ。その後にはホールからも拍手が湧いた。メンバーが一人ずつステージに登場して立ち位置に立った。


 そして、「君のままで」のイントロが始まる。


「ベアキャットです! よろしくお願いします!」


 スミレが叫ぶ。そして、葵さんが歌い始めた。観客の歓声が響いた。ミーアたちも声援を上げている。結菜さんは祈るように手を握っていた。


 今日のベアキャットはみんなのダンスも気合いが入っている。


 だが、誰よりも葵さんが圧巻のステージを見せた。もちろん、スミレも椿も美桜も友梨香さんもすばらしいダンスに歌だ。だが、葵さんのパフォーマンスが他を圧倒する輝きを放つ。その歌声はもちろんだが、そこに込められた熱い想い。それが俺たちに響くのだ。


「ロックだねえ」


 横の機材がある場所にいるレイさんがつぶやく。そうか、こういうのがロックって言うんだな。


 横に居るミーアキャットの3人もステージに夢中になって手を振り上げている。結菜さんは目に涙をためていた。


 パフォーマンスが終わると、会場はすごい歓声に包まれた。


「ありがとうございました! ベアキャットでした!」


 スミレが叫んで、ステージ裏にメンバーがはけていく。俺とミーアキャットの3人もすぐに楽屋に向かわなくてはならない。


「結菜ちゃんも来る?」


「はい!」


 俺とミーアと結菜ちゃんは楽屋に向かった。


◇◇◇


「はぁー! 楽しかった!」


 楽屋に入るとスミレが言った。


「ホントやねえ、ライブハウスってなんかすごいね。いつもより観客の熱が伝わってきたわ」


 美桜が言う。


「はい。私もいつもよりはしゃいでいたかもしれません」


 友梨香さんが言う。確かにいつもよりもさらに激しかったな。


「でも、うまく行って良かったわ。特に、誰かさんは昨日までやばかったからねえ」


 椿が言った。


「ボクかい? 確かに迷惑掛けたね」


「いいわよ。本番が上手くいけばいいんだから。今日はその分最高だったわよ、葵」


「ありがとう、椿」


「はい! 葵先輩、最高でした!」


 宮川さんが葵さんに言う。


「ありがとう、紅葉君」


「うん、確かに今日の葵はすごかった。これなら歌有りのパフォーマンスもたまにはいいかな、って思ったよ」


 スミレが言う。


「ありがとう、スミレ。でも、これは一曲だけだから行けたんであって、何曲もは無理かな。ほんと、たまにでいいよ」


 葵さんが言った。


「そうね。やっぱり私たちはダンスグループだし。基本は踊ってみるだけよ」


 椿も言った。

 確かにそうだな。ときどきは歌もいいが、ベアキャットはダンスを魅せるグループだ。


「お姉ちゃん……」


 結菜ちゃんが葵さんのところに来た。


「結菜、どうだった?」


「……すごく震えたよ」


「そうか」


「お姉ちゃん、ごめんなさい。お姉ちゃんは今のままでいいと思う。だから……」


「うん、ありがとう」


 そう言って葵さんは結菜ちゃんを抱きしめた。そして、俺を見た。


「で、大樹君。今日のボクはどうだったかな?」


「うん。最高に良かったよ。最高にロックだった」


「ロック?」


「うん。そうレイさんが言ってた」


「レイさんか。言いそうだね」


「バカマネ、ロックとか意味分からず言ってるんでしょ」


「そうだけど……今回の葵さんはなんかロックだったよ」


「どういう意味よ」


「うーん……よくわかんないけど」


「やっぱり、わかってないじゃない」


 椿がそう言って、みんなが笑った。


「でも、ボクは大樹君のほうがロックだと思うな」


「え? いや、昨日の俺の歌はひどかったろ」


 レイさんにも言われたけど、俺の歌はロックなんかじゃない。葵さんの歌とは比べものにならなかった。


「確かに歌はひどかったけどね」


「やっぱり」


「そうじゃなくて行動がロックなんだよ」


 葵さんが言った。


「あー、確かに。わかります」


 友梨香さんも言った。


「確かに私を助けてもらったときの大樹マネはほんとにロックでした」


「いや、あれは……いろいろ成り行きで……」


「じゃあ、私もバカマネって呼ぶのは辞めて、ロックマネって呼ぼうかしら」


 椿も言う。


「や、やめてくれよ。俺はロックじゃないよ。みんなのほうがよっぽどロックだよ」


「みんなって?」


「ベアキャットのみんなだよ。部活でも無く、みんなでこういうグループを始めて、ここまで人気になったんだから」


「確かにそれはそうね」


 椿が言った。


「うん。うちのメンバーはみんなロックだ。でも、それを言うならベアキャットを始めたスミレが一番ロックってことになるかな」


 葵さんが言う。


「私?」


「そうだよ。スミレはたった1人で踊り始めて、そして仲間を集め、ここまで来たんだ。最高にロックだな」


「確かにそうやね」

「はい、スミレはロックです」

「そう言われればそうね」


 みんなも同意した。うん、それはそうだな。スミレがなぜベアキャットを始めたかは分からないけど、1人でこの活動を初めて、ここまで仲間を集めて、今では後輩もいる。こんなこと、なかなかできることじゃない。やっぱり、スミレはすごいよ。


「あの……ちょっといいですか?」


 宮川紅葉が手を上げた。


「なにかな?」


 スミレが言う。


「……結局、ロックって何なんでしょう」


 一年生の素朴な質問にみんなが顔を見合わせた。それに葵さんが答えた。


「そうだな……最高にバカで、最高にまっすぐで、最高にかっこいいことじゃないかな」


「なるほど……」


「ちょっと! なんで私が最高にバカなのよ」


 スミレが言う。


「いや、そういう意味じゃなくて……」


 葵さんが珍しく慌てている。仕方ない、俺が口を出すか。


「いいじゃないか、バカで。俺なんてバカマネって呼ばれてるんだぞ」


「呼んでるの、椿だけでしょ」


「そうだけど、俺は自分でバカだって言ったからな。自分でもバカなことをやっているっていつも思うし、椿にもバカだってよく言われる。だけど、それは嫌いじゃない。やりたくてやってるバカだからな」


「大樹……」


「だから、スミレも俺と一緒にバカをやっていこうぜ」


 決まったな。俺はそう思い、うるんだ瞳のスミレを見る。


「ごめんなさい」


「は?」


「一緒にバカをやるのはちょっと……」


「いや、今のは一緒に頑張ってベアキャットを盛り上げようって言う流れだったじゃん!」


「ベアキャットは盛り上げるけど、バカなことは私やらないから」


「いや、そういう意味じゃなくて……」


「あーあ、やっぱりバカマネは振られたか」

「大樹マネ、ドンマイです」

「マネ君も頑張ってるんだけどなあ」


 3人が何か言った後に葵さんがぽつんと言った。


「やっぱり、大樹君は僕と似てるね。最高にバカでロックだよ」


「え?」


「なんでもない。さあ、撤収しようか」


「そうやね」

「わかりました」

「ミーアも手伝って」

「「「はーい!」」」


「ちょ、ちょっと!」


 結局、俺はまたスミレに振られたのだった。


――――

※次回、いよいよスミレ編がスタートです(ミーアもあるよ)


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